読みきり作品シンデレラシューズの全頁解説です。
恥ずかしいので、公開期間限定(次号のドラゴンエイジPure発売日まで)となります。
前エントリで触れたとおり本来不要なものなのですが、
この作品に関しては、漫画家がどういうことを考えながら描いているのかを
全部明らかにしたほうが誤解を受けにくいだろうと思うので、できるだけ正直に記していこうと思います。
何に影響を受けたかも洗いざらい書くと思うので
「なんだぁ パクリばっかじゃん!」とがっかりされること請け合いですが
まあ僕の作品はみんなそんなもんです。
また、内容的に不正確なもの記憶違いのものも多々でると思いますので、鵜呑みされぬようお願いします。
なにせ、民俗ネタの漫画で柳田”国”男とか平気で間違える人間の書くことですので。
「これはさすがにちょっと看過ならん」という点は御指摘くだされば幸いです。
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これ以上ないほどに、果てしなくネタばれなので
必ず本編を読んだあとで読みすすめてください。
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■p1(p147)
”一そろいの靴”を運命の恋人同士に見立てているわけですが、
最初のこのシーンで本作品のメインテーマが既に集約されていると言っていいと思います。
理想の恋人は実はもっとも近しい隣人だった、という恋愛ものの王道を地で行くシーンでもあり結構気に入っています。
■p2-3(p148-149)
アマリがガラスの靴について触れたタイミングで
どんと”TheCinderellaShoes"のロゴが入る展開。
わかり易いキャッチーな惹句として「シンデレラストーリー」と銘打たれていますが
この漫画、実際はシンデレラになれなかった(あるいはシンデレラになりたい)人々を描くお話です。
本編でも後段でてくるので後々書いていきます。
タイトルロゴのバックにあるのは靴べらで、
場面切り替えのシーンで使われる小道具になっています。
この作品で言う”硝子の靴”とは理想とか夢などといったものにも
置き換えることができるわけですが、
頻繁に靴べらを使っているのは、”硝子の靴”を履きたくとも履けない、
それでも希求してやまぬ人々の暗喩表現としたかったからです。
▼上段1コマ目
TDKとかSANYOの看板で有名なロンドンのピカデリーサーカスです。
ここで僕らの世界とは異なる19世紀が描かれています。
シンデレラシューズの世界では燃素とエーテルの発見によって様相が異なっています。
どちらも科学史で仮想概念として教科書に出てくる用語で、SFではおなじみの設定ですので詳しくは検索してみてください。
僕は知ったかで使ってるだけなので解説できません!
SF漫画のお約束として背景にお遊びを盛り込んでいるので順に取り上げます。
・左端、作者名にかぶっていますが、後で出てくるクロイドン宇宙港の巨大な灯台が見えてます。方角はまったくの適当。
・空には、燃素のマイナス質量特性を利用した硬式飛行船に似た宇宙船が飛んでいます。
・中央右の看板"OFF WORLD"は火星・金星入植キャンペーン。
ちゃんとした奴は後でも出てきますが、ここはあえてブレードランナーからまんまパクリました。好きな人はニヤリとしてください。
・看板二段目。ロータリータイプのスターリングエンジンの宣伝看板。
この世界では内燃機関ではなく、燃素を外部熱源としたスターリングエンジンが標準となっています。
typeVIIとありますが、無論マツダのロータリー車、RX-7からの連想。
・看板三段目。燃素バッテリの宣伝看板。
リアルではSANYOの位置にあるのでエネループの連想から。
この世界で取り扱われる燃素結晶は圧力を加えるだけで半永久的に熱を取り出すことができるという設定で、
人類は蒸気機関も石油による内燃機関も飛び越して究極のエネルギー機関を手に入れてしまっています。
・看板四段目。半分しか見えませんが、エーテルを使った通信機器の宣伝看板ということで。
調べてて初めて知ったんですがエーテルはイーサとも読み、LANのアレの語源でもあるそうです。
現代では手前に地下鉄の入り口があるのですが、19世紀末だしオミットしとこう、と安直に作画してたら、
実はこの頃既に地下鉄は開通していることが判明。
ただし、ピカデリーサーカス駅は20世紀になってからできたそうで
ほっとして作画を続けました。
この作品は大嘘大英帝国なので、そんな神経質になる必要はないわけですが
史実漫画は描いてはいけない物も調べなきゃいけないので、大変そうです。
お金と時間がないと絶対やりたくないジャンル。
▼下段はメインキャラの主従関係を説明する場面。
英国で連想するもののひとつに雨傘があるんですが、
アマリのゴシックな傘は日傘なのか雨傘なのかどっちにすべきか迷って中途半端なよくわからない代物になってしまいました。
ドレスやボンネット(ヘッドドレス)のデザインも適当でコマごとに変わってます。
きちんとした設定画を起こさないとこうなるわけです。…御免なさい。
ロレンゾのコートの重ねがこの場面だけ右前(男物)になっています。
描いてる間もどっちにしようか迷っていた名残です。
裏設定的には、靴・コート・ハンチング帽は男の子として育てられたロレンゾに
父親から与えられた物なので右前なのですが、
この作品単位で考えると左前とすべきでした。
(注意深い人は本編を読んでて勘づいたと思いますが、ロレンゾは女の子です)
見開き最後のコマのロレンゾの台詞、おとぎ話云々は
ラストの台詞と同じものを持ってきて構成をまとめる役割になっています。
同じ台詞を別の場面で異なる感情で読ませるというのは
ストーリー構成の常套手段ですが、便利すぎて安易に使いがちなので
もっと新しい手法を考えないと。。。
あと、僕の漫画では良くあることですが、
ページを規定内に収めるためシェイプアップを重ねるうち、
削るところがなくなってしまい、結果、この漫画も扉絵のない作品になっています。
僕が単に扉絵が嫌い、というのもありますけど、あんまり親切な作りではないですね…。
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キャラ関連についてはまた追々触れることとして
今回はひとまずここまでということで。
こういう調子でだらだらやっていきますので、お暇な人は宜しくお付き合いください。
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このような設定は大好きです!
(スターリングエンジンは作ったことがあったり)
これを見てもう一度本編を見直してみます。
う〜ん、何気なくみていたシーンも、違う視点でみると更に楽しくなりますね。
二人を探す場面で。なぜにここで金星?と思って。(MARSの方が火星だと思ったので)
言葉の意味を調べて ”へぇ〜、なるほど”と感じました。