JR東海は帰省客などの荷物が大型化する年末年始に向け、後ろ手に引く車輪付き「キャリーバッグ」に絡むトラブルを未然に防ごうと、エスカレーターの速度を落としたり、ポスターを掲示して注意を促すなど対策に乗り出した。「混雑時には周りを気遣い、譲り合いの気持ちでお願いしたい」と呼びかけている。
同社は、他の鉄道事業者の駅でエスカレーターから旅行用大型スーツケースが滑り落ちる事例があったことをきっかけに、約3年前からバッグの取り扱いに注意を促すポスターの掲示を始めた。特にこの1年、キャリーバッグを引く乗客が多くなった。
キャリーバッグを巡っては、気づかないうちに他人の足を踏みつけたり、ぶつけたりするケースが増えているが「個人間のトラブルで終わることが多いため実数はつかめない」(長西宣英・新幹線鉄道事業本部営業課担当課長)という。当事者が直接、警察に通報して処理する例もある。乗客からは「持ち手が必要以上に長いなど周りへの気遣いのない人がいる」との声が寄せられている。
このため、けがなどの事故を未然に防ごうと、同社は、下りエスカレーターの速度を低速に設定し、落下事故を起こさない工夫を始めた。
7月からは、キャリーバッグが他人の足にぶつかるトラブルをイラスト化した新たなポスターを作製して新幹線の駅などに張っている。
年末年始は、帰省客や旅行客ら長距離移動の乗客が増えるため、キャリーバッグの携行はますます増加すると見込まれる。東海道新幹線東京駅の小出龍三駅長は「構内には狭くて乗降客が交差する場所もある。年末年始は移動に不慣れな方の利用もある」と注意を呼びかけている。【窪田弘由記】
毎日新聞 2008年12月22日 東京夕刊