「中国と戦争になったら、核による報復を行うことを期待している」。佐藤栄作元総理が在任中、アメリカに対し、こう述べていたことが明らかになりました。背景には冷戦当時の激しい核開発競争がありましたが、ノーベル平和賞受賞者の発言に戸惑いの声も聞かれます。
「(核を)持たない、持ち込まない、製造しない」(1968年 国会)
非核3原則などへの評価で、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作元総理大臣。しかし、外務省が22日に公開した10万ページ以上に及ぶ過去の外交文書で、核をめぐる在任当時のあらたな発言が明らかになりました。
「戦争になれば話は別で、アメリカが直ちに核による報復を行うことを期待している」
発言は、1965年1月13日、アメリカでマクナマラ国防長官と会談した際の記録に残っていました。背景には、3か月前に中国が初めての核実験を行ったことがあり、「中国と戦争になったら」と仮定しての発言でした。
「日本は核兵器の所有、あるいは使用についてはあくまで反対である」
会談で日本の基本的立場も強調した佐藤総理ですが、日本への核持ち込みを黙認するとも受け取れるような、次のような発言もあったということです。
「陸上に核兵器用施設を作ることは簡単ではないかもしれないが、洋上のものならば、ただちに発動できるのではないかと思う」
政府の見解は・・・
「戦時における米国による核抑止力。これの提供に対する期待を一般的に表明したもの」(中曽根弘文外相)
一方、被爆地の広島と長崎の関係者は、戸惑いを隠せません。
「ノーベル賞はいったいなんだったのか。ノーベル賞に大きな汚点を記したというような気さえする」(長崎原爆被災協・山田拓民事務局長)
「政府が(核使用を)許すこと自体が矛盾しておるし、基本的に誤っている」(広島県原爆被害者団体協議会・金子一士理事長)
また、ジョンソン大統領に対し、佐藤総理がいわゆる「核の傘」の確約を迫り、大統領が「保証する」と応じていたことも明らかになっています。(22日17:28)