◎「妊娠110番」増加 悩む女性への支援充実が課題
石川県が二〇〇五年六月から開設している「妊娠110番(076―238―8827
)」の相談件数が年を追うごとに増え、今年度上半期(四月―九月)は百六十件に達した。増加で推移すれば、〇八年度はこれまで最も多かった〇七年度の百九十件を大きく上回りそうだ。
相談の増加は、妊娠110番の存在が広く知られるようになったのと、メールでも受け
付けるなど機能を強化したことの結果と考えられるが、性交渉の若年化により「望まない妊娠」の増加が背景にあるとみられる。
出産か中絶かの板挟みになる、いわゆる妊娠葛藤(かっとう)の相談が全体の七割を占
め、県外からの相談もあるそうだ。家族も妊娠に気づかないケースもあり、悩む女性への支援の充実が課題になってきた。家族が知らないまま赤ちゃんを産み、死なせるという事件は全国的に相次いでおり、県内でも今年十月に起きた。
相談が増えた理由がどうであるにせよ、思い余ってすがってくる女性が置かれている現
実をしっかり受け止めてやり、適切な相談で悩みを克服する力になることが求められてきたのである。
さらに相談の結果に考察を加え、社会に役立てる仕組みをつくることも必要になってき
た。
妊娠110番は、熊本市の慈恵病院に「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポストで知ら
れる)」を設置した人たちと志を同じくする「ワン&オンリー石川いのちの会」の働き掛けで開設されたものである。中絶や望まない妊娠をなくそうというのが目的である。
隔週で開いていた土曜日も今年四月から毎週に改め、火曜日だけは午後六時から九時ま
でとし、月曜日から土曜日までは毎週午前九時半から午後零時半まで相談を行い、助産師が交代で対応している。必要な場合は面接もしている。
ただ、行政がこうした相談窓口を開設しているところはまだ極めて少ないのが現状だ。
多分、深刻で厄介な問題は避けるとの考え方が強いためだろう。どこもかしこも難しい問題には消極的だという社会は望ましいと言えない。
◎安保理が海賊退治決議 参加へ法整備を急ぎたい
アフリカ東部のソマリア周辺海域での海賊行為が目に余ることから、国連安全保障理事
会は同国の領土・領空に入って海賊を制圧することを各国に認める決議案を全会一致で採択した。安保理はすでに領海への進入を認める決議をしており、今回の決議で各国は陸海空から部隊を展開できることになった。
問題は日本の参加だ。昨年、国際社会への貢献を積極的に果たすことをうたった海洋基
本法を制定したが、海賊制圧への参加となると、新たな立法が必要だ。与野党が歩み寄って法整備を急いでもらいたい。
政府は十一月に「海賊行為防止活動特別措置法案(仮称)」の素案をまとめ、来年の通
常国会での法案提出を目指している。
それには自衛官の正当防衛に加え、海賊が武力で抵抗した場合の武器使用の容認を打ち
出している。いずれも必要なのだが、集団的自衛権の行使や海外での武力行使を禁じた憲法九条との整合性をめぐって議論となるのが必至で、成立が見通せない現状だ。
海上自衛隊がインド洋での給油活動を継続するための改正新テロ対策特別措置法が野党
の反対で参院で否決され、衆院で再可決されたが、あのようなことの二の舞いはもうやめてもらいたい。
ソマリアは隣国エチオピアとの領土争いの武力衝突の後、内戦が起き、暫定政権はある
が、「無政府状態」といわれ、有効な海賊対策を取れないでいる。それが海賊の横行を招き、海賊の街ができ、繁栄しているそうだ。
安保理に提出されたソマリア情勢に関する報告書よると、今年に入ってから同国沖で六
十五隻の商船が海賊に乗っ取られ、推定で総額二千五百万―三千万ドル(約二十四億―二十九億円)の身代金が支払われたといわれる。
ようやく安保理決議となり、暫定政府の許可があれば同国へ陸上部隊の送り込みも可能
だが、一九九〇年代に国連平和維持活動(PKO)が失敗しているため、当分は海上での制圧にとどまるだろう。日本は国際社会への貢献を行動で示さなければならない。