ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

介護報酬改正を考える(2)ー居宅介護支援事業について

2008年12月25日 | ケアや介護
 居宅介護支援事業については、11月14日に「日本介護支援専門員協会」が給付費分科会に提出した『平成21年4月介護報酬改正にあたっての提言』を少しは取り入れた形で、12月12日の審議報告になっている。私が気になる点を指摘しておきたい。

 審議報告から、居宅介護支援事業者については、40件以上の場合に、全てのケースに適用される逓減制を、超過部分にのみ適応するとしている。現状では、介護支援専門員は平均25ケース程度に留まっている現状からすれば、担当ケース数を増やすことになる意味では朗報である。ただし、逓減の幅が少なければ、介護保険制度が始まった時期のように、100ケース担当といった状態がでてくることを危惧する。これについては、逓減の幅の議論だけでなく、経営者やケアマネジャーの自主性も重要である。

 特定事業者加算については、サービスの質を評価するものなら、重度者比率ではなく、ケアマネジャーの専門性を評価の基準にするべきである。さらに言えば、主任介護支援専門員をキャリアパスの一部として位置づけ、管理者部分での主任介護支援専門員配置に対しても評価する時代を迎えてほしいものである。そうすれば、介護支援専門員のキャリアパスが作られ、仕事に対する意欲が高まっていくことになろう。但し、そのためには、主任介護支援専門員研修の中身や方法についても再検討が必要である。現状では、地域包括支援センターの主任介護支援専門員向けの側面が強いといえる。

 入院および退院・退所時での情報共有に対して評価をするとしているが、これは現実に、介護支援専門員が相当労力を使う部分であり、妥当であると思える。但し、介護保険施設入所についても情報共有が必要であるが、これについては記載がないことが気になるところである。

 一人暮らし高齢者や認知症高齢者に対しては労力を要することから評価することになっている。これ自体は問題ではないが、現在の要介護1から3までが1000単位、要介護4と5が1300単位それ自体が、労力を要しながら、その見返り分の報酬になっていないことが問題と言える。その意味では、基本となる単位数のアップについて記載されていないことが気になる。同時に、日本介護支援専門員協会が提案した「要介護1〜5を基本単位として「一本化」し、さらに基本単位を上げて頂きたい」ということに対しての返答にはなっていない。基本的な介護報酬を変えずに、加算で済ますことになれば、介護支援専門員の落胆は大きく、同時に、この程度の加算では赤字は解消しないといえる。今後も、他のサービス部分におんぶに抱っこで、生きていかなければならないことになる。ひいては、独立型のケアマネジャーも無理であり、同時に法人の中での居宅介護支援事業の自立も不可能であろう。

 今回の居宅会議支援事業の介護報酬改正をみていると、生活保護費を算定する際に、以前活用していたマーケット・バスケット方式を想起してしまう。ありとあらゆる必要な加算をバスケットに詰め込んでいき、一定の介護報酬を確保し、事業者についての経営の安定を図り、ひいては介護支援専門員に専門職としての一定の報酬が出せることを意図している。こうした対応では、いずれ介護報酬議論に限界が来るのではないかと考える。なぜなら、詰め込む品物についての考えにすれ違いがうまれ、そこから葛藤が生じてくると考えるからである。さらに、事業者は、利用者と向き合うよりも、加算に向き合った仕事にならないか心配である。

 将来的に、居宅介護支援事業の介護報酬については、抜本的な改革が求められる。具体的には、その職場に介護支援専門員が存在し、個々人だけでなく、地域での活動等の多様な業務に従事しているということで、常勤ケアマネジャーを基礎にした基本給プラス1ケース当たりの介護報酬の議論が必要な思いをしている。
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コメント

Unknown (KY)
2008-12-22 11:03:14
>40件以上の場合に、全てのケースに適用される逓減制を、超過部分にのみ適応するとしている。現状では、介護支援専門員は平均25ケース程度に留まっている現状からすれば、担当ケース数を増やすことになる意味では朗報である。

減算にならないように新規を断ってるようなケアマネ、事業者にとっては朗報ですが、
利用者数÷ケアマネ数=平均担当数
という式に上限が40件だという変数はありませんので、利用者が増えるかケアマネが減るかしないと平均は25件のままではないでしょうか?
100件担当などという過度な集中が起こるかはわかりませんが、今よりは出来る人と出来ない人の間で担当件数の差が開くのは間違いないので、大規模なケアマネの淘汰が起こると予想しています。

>その職場に介護支援専門員が存在し、個々人だけでなく、地域での活動等の多様な業務に従事しているということで、常勤ケアマネジャーを基礎にした基本給プラス1ケース当たりの介護報酬の議論が必要な思いをしている。

その場合は地域でのケアマネ数の定員のようなものも必要になるかと思いますが、その点についてはどうお考えですか?

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