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2008年04月10日
「人体の不思議展」No.2 『佐々木 泉県議の申し入れ』
心配していたように、先日愛媛新聞の「門」欄に、この展示を見た人の「不快だった」との意見がのっておりました。『人の命・遺体などに対する尊厳が失われるのは恐ろしい』と思います。
次は、3月28日に、佐々木 泉県議が、愛媛県知事および教育委員会に「後援に関する申し入れ」を行ったものです。
「人体の不思議展」後援に関する申し入れ
愛媛県知事 加戸守行殿
愛媛県教育委員会御中
2008年3月24日
日本共産党県議会議員 佐々木泉
愛媛県と愛媛県教育委員会は、4月5日から愛媛県美術館で開催予定の「人体の不思議展」を後援していますが、同展についてはこれまでも各地で問題視する声が起こっており、マスコミ等によっても取り上げられています。したがって、後援にあたっては当然慎重に検討されたことと存じますが、以下のような点について疑問がぬぐえません。そこで、これらの疑問についてお答えいただき、問題のある場合は後援取り消しを行なうこと、仮に後援を続ける場合も、児童生徒などが入場観覧する際の配慮や展示内容の改善を求めるよう要請いたします。
1、実物人体標本の展示内容に問題はないか。
同展のチラシによると「ホンモノの人体標本」「全身解剖標本16体」「これまで医学、特に解剖学の場でしか見ることのできなかった約150点を間近にみることができる」「実際に手で触れることのできる標本もあります」などの内容となっています。
しかし、すでに開催した県での展示では、全身を輪切りにスライスしたもの、顔面を含む頭部を縦にスライスしたもの、骨格標本で部分的に筋肉と表皮を残したものなど、「医学解剖でも見ることのできない」人体への特殊な加工が施されており、また、「弓を引く人」「跳躍する人」という題名で弓をつがえたり、のけぞったりする格好の標本、体腔からこぼれ出る自らの内臓を両手で抱えたり、「手を触れるな」と注意書きのある頭蓋骨の展示を全身骨格標本が頬づえを突きながらなぜたりなど、不自然なポーズをとらされ、とても真面目な展示とは思われないものが散見されます。
地域によって展示内容が異なるため、本県で公開されない標本もあるかもしれませんが、「ホンモノ」をキャッチフレーズにした展示品製作の姿勢がこのようなものであることは、展示目的が純粋に医学啓蒙的なものかどうかを疑わせます。
インターネット上には、この展示をめぐって、多くの意見が交わされています。そのなかには、次のような指摘がありました。
「子どもたちに必要なのは、カラダがどうなっているかを教えるために実物を見せることではなく、人のカラダをそんなふうに扱ってはいけないと教えることだと思う」。
2、献体者の遺体提供に問題はないか。
同展のチラシによると、「人体標本はすべて生前からの意志に基づく献体によって提供されたものです」とのことです。しかし、一般的にいって、献体は医学生の実習のために遺体を提供することであって、同展のように特殊な加工をされ、ポーズをとらされて、衆人環視にさらされ、しかも、料金を取って商業的に公開されるようなことは予定していないはずです。もし、そのような特殊な献体であることを前提として「生前からの意志に基づいて提供」されているというなら、その証拠となる同意書などによって、特殊な献体としての提供であるむねの証明がなされなければなりません。
また、「生前からの意志」を示せない3、4、5、6、7、8、10ヶ月の胎児標本が含まれており、どのような手続きを経て提供されたか、明らかにされる必要があります。
国内での実物人体標本の展示は1995年から始まり、展示物の提供は「日本アナトミー研究所」が行なっているとのことですが、国際的には、ドイツの解剖学者ギュンター・フォン・ハーゲン博士がプラスチネーションという遺体処理技術を開発し、ベルリンで「人体の世界展」を開催したが、これが「猟奇的で堕落したもの」と批判されていると英国BBC放送が2001年に報じたとのことです。同博士の工房が中国大連市にあり、「献体」はすべて中国人であるとの情報もあります。そして、その中国では、03年に日本の東京で開かれた「人体の不思議展」に対して、「死者は医療の発展のために献体したのに、商業目的に使われた。日本人の視線を浴び、侮辱された」などの批判が起こったと報道されています。(朝日新聞03年10月4日)
同記事には、「開催の協力をしたとされる南京大学宣伝処は『大学にも多数の批判が寄せられている。大学側は、日本での展示には関与していない。勝手に名前を使われた』と述べた」とあり、この点でも、不可解な事態となっています。
毎日新聞05年6月1日付には、「展示された人体の色味に、本物らしい生々しさはない。だが、誰のモノかは明らかでないが、それは人の死体であり、だからこそ興味を引く。大挙して眺められ、なで回される遺体が、自分の身内だったらと思うとぞっとする」と京都造形芸大の田川とも子さんが書いています。
3、主催者、後援者の配慮に問題はないか。
本県では2001年7月14日から8月13日に県総合科学博物館で企画展「人
体」を開催し、これは「地方の博物館単独の企画で実物人体標本を中心に構成された初めての展示となった」(同企画展の「開催報告」より)とのことです。そして、この準備には3年をかけて周到な配慮がなされています。
「開催報告」によると、「1996年に全国を巡回した『人体の不思議』展では、大きな反響を呼ぶも厳しい批判の対象ともなった。実物人体標本を展示し、広く公開することについて、十分吟味する必要を再認識することとなった。不必要に過度な演出と広報は、展示の意味を感じにくい見せ物的な意味合いを帯び、『献体の精神』を踏みにじる結果を招くのである」と分析し、そうならないよう、多面的な検討を行なって開催にこぎつけたことが詳しく述べられています。
このなかには、主催者である博物館職員自身が「献体の精神を正しく理解し、」「見学する人に対して最大限その精神を伝える努力をする必要がある」ことや、「どのような場面でも誠実に説明できる体制をとらねばならない」ことを確認するなどの努力がありました。
その結果、たとえば、ポスター・チラシには標本の写真は大きく使わず、人体を想像させるイラストを据えました。今回のチラシが、表も裏も人体標本で成り立っているのとは著しく対照的です。
また、入口には「実物人体標本が展示されているグラフィックパネル」を掲げ、そのパネルを見て入場を拒否する人がいた場合は入場料を返金する準備もしています。
展示内容についても、「標本の印象の強さが見学者に大きな影響を与える懸念がある」との医学関係者のアドバイスを受け、胚子の実物標本ではっきりとヒトとしての外観を感じられる展示を外したとのことです。
さらに、展示監視員に看護士、看護学校生徒などを採用し、見学者との一言で真価を発揮し、体の不調を訴えた見学者への処置にも役割を果たしました。
今回主催者側にこのような配慮がなされているか、また、愛媛県、愛媛県教育委員会が後援を行なうにあたって、7年前に県総合博物館が取り組んだ教訓を生かしたかが、強く問われているのではないでしょうか。
なお、当時行なわれたアンケートでは、99%が全身標本を観覧したものの、全身標本の展示については、「全員に見せるべき」「できれば全員に見せるべき」の合計17%にたいし、「希望者のみにすべき」「できれば希望者のみにすべき」の合計は66%でした。新学期とゴールデンウイークをはさむ開催時期であることを考えると、児童生徒の観覧については、特別の工夫配慮が求められると考えます。
4、全国で問題になってきた諸点についての検討はなされたか
愛媛県と県教育委員会が後援するにあたっては、これまで全国で問題になってきた
諸点について、主催者まかせでなく、自主的に調査検討することが当然求められます。
参考として、別添の資料をごらんいただき、これらの指摘について検討していれば、その内容をお示しください。まだであれば後援取り消しに間に合うよう3月いっぱいまでにご検討ください。
以 上
投稿者 遠藤もと子 : 2008年04月10日 22:23
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