最近の衣料品にはファッション性を重視した特殊な素材や加工を施したデリケートな衣類が多くなり、通常の使用やクリーニング等取扱いが難しいものが多くなっています。
 衣類を購入する時は、色やデザイン、サイズ、価格に注目するばかりでなく、衣類についている品質表示や取扱い絵表示を確認して商品を選択しましょう。





衣類は着れば必ず汚れるので、購入するときは「洗う」ことまで考えて選びましょう。

「水洗い可」の表示例
 
液温40℃を限度とし、洗濯機による洗濯に耐える。洗剤の種類は問わない。   液温30℃を標準とし、弱い手洗いにする(洗濯機は使用しない)。洗剤は中性洗剤を使用する。

 水はたいていの汚れを溶かします。しかし、水は浸透力がありすぎるため、染料まで落としたり、衣類を収縮させてしまうこともあります。ドライクリーニングは水を使わずに溶剤を使って汚れを落とす方法です。型くずれや風合の変化、色落ちなどがおこりにくく、油溶性の汚れは落としますが、水溶性の汚れ(汗やタンパク質汚れなど)は十分には落としません。




401 402 403

 401ドライクリーニングが出来る。溶剤はパークロルエチレン又は石油系が使用出来る
 402ドライクリーニングが出来る。溶剤は石油系のものを使用する
 403ドライクリーニング出来ない

 衣料品の繊維の組成や洗い方などの取扱い方法は「家庭用品品質表示法」に基づき、定められた記号で各製品ごとに表示されています。
 ドライクリーニングは、水洗いできないデリケートな製品、つまり水洗いすると色落ち、収縮や型くずれ、風合いの変化が起こり、仕上げで元の状態になりにくいものが対象となります。水の代わりに油性の揮発性有機溶剤(石油系溶剤やパークロルエチレン)を用いて汚れを除去する方法です。
 衣類をクリーニングに出すときれいなビニール袋に包まれて戻ってくるので新品同様になると誤解しがちですが、汚れが落ちるだけです。また多少縮む、毛が抜ける、色が薄くなるということも起こりがちです。




 パークロルエチレンは不燃性で溶解力が大きいので汚れが落ちやすいですが、絹和服をはじめデリケートな高級衣料には向きません。毒性が強いので密閉形の全自動の機械(ホットマシン)で処理され、タンブラーで乾燥(熱風を吹き付ける)させます。タンブラーで収縮するものは石油系の溶剤を用い自然乾燥させます。
 石油系溶剤は毒性も低く安価ですが、洗浄力が劣ります。デリケートな衣類向けに多く用いられています。引火性があるので取り扱いや、洗浄液の清浄化に配慮が必要です。
 ドライ溶剤のうち石油系溶剤は衣料品に残留すると皮膚障害が発生します(後述「トラブル事例」参照)。




 汚れを落とすのは繊維と汚れに適した方法でなければならず、また収縮や色や風合いの変化、型くずれなどのトラブルが起こらないかを判断して、その衣料品が水洗いが適しているかドライクリーニングが適しているかを決めます。
 衣料メーカーはトラブルが起きるのをおそれ、トラブルになりにくい取扱い表示にしたと見られるものも多くあります。電気洗濯機で洗濯できる衣料品に縫製などの欠点をカバーするために「手洗い」表示をしたり、消費者がどんな扱いをするかわからないので「ドライ」表示にするようなことです。


 このような「水洗い出来ない。ドライクリーニングが出来る。」の表示があるものでも、実際は手洗いや弱水流による洗濯機洗いが可能なものが多いようです。
 取扱い表示は洗濯の仕方などの情報を伝えるために用いられるものです。メーカーは取扱い絵表示の図柄を選定するときに、事実に基づいた表示にし、消費者に衣料品の正しい取扱い方法を伝えてほしいものです。
 普通は綿や綿とポリエステルの混紡、ポリエステルやアクリルの普段着などは水洗いでき、毛や絹、レーヨン、ポリエステルのおしゃれ着などはクリーニングへ出します。ただ、毛や絹も普段着なら手洗い可能(中性洗剤使用)で、綿でもYシャツなどきれいに仕上げたい場合はクリーニングに出します。ドライ表示のものを水洗いする場合は、普段着や何度も着たものをまず注意して洗ってみましょう。




 ドライクリーニングは油溶性の汚れは落としますが水溶性の汚れはほとんど落としません。夏用衣料で水洗い禁止のものは、汗が付いてもドライクリーニングでは取れないことになります。汗が多く付くTシャツやサマーセーターは「水洗い可」でなければ清潔さを保つことができません。ドライクリーニングで汗がとれずに残っている衣料は、保管中に黄変することもあります。また汚れの激しい子供の衣料も「水洗い可」のものでなければ困ります。




 海外旅行や個人輸入などで外国の衣料品を直接購入する人も多くなっています。これらの衣料品にはその生産国の法律等に基づいた表示がされています。表は一般的な国際絵表示(ISO)と日本の取扱い絵表示の図柄(日本工業規格:JISで定められている)の対比です。
 ISOの表示では、水洗いできるものは、たらいに波線のマークがつけられ、手を入れているもの(手洗い)以外は洗濯機洗いができるというマークです。中心の数字は限度となる水温です。

国際標準化機構(ISO)の表示と日本工業規格(JIS)に基づく取扱い絵表示との対比。
●洗濯(水洗い)
欧州を中心に
取扱われている
国際表示
意 味 日本の
取扱い表示
最高温度95℃で普通の洗い方ができる。
最高温度60℃で普通の洗い方ができる。
最高温度40℃で弱い洗い方ができる。
最高温度40℃で手洗い。洗濯機は使用不可。

ただし、適温度30℃
洗濯禁止。濡れた状態での取扱いに注意。

●ドライクリーニング
欧州を中心に
取扱われている
国際表示
意 味 日本の
取扱い表示
通常のすべての溶剤でドライクリーニングできる。
(なし)
パークロルエチレン、石油系、フッ素系(F11、F113)の各溶剤で、通常の方法によりドライクリーニングできる。

ただし、フッ素系(F113)
の溶剤は除く
全期各溶剤でドライクリーニングできるが、添加水分量・機械的作用・乾燥温度に厳密な制限がある。
(なし)
石油系、フッ素系(F113)の各溶剤でドライクリーニングできる。

ただし、フッ素系(F113)
の溶剤は除く
前記2つの溶剤でドライクリーニングできるが、添加水分量・機械的作用・乾燥温度に厳密な制限がある。
(なし)
ドライクリーニングできない。

●アイロン掛け
欧州を中心に
取扱われている
国際表示
意 味 日本の
取扱い表示
アイロンの底面温度(最高温度約200℃)
アイロンの底面温度(最高温度約150℃)
アイロンの底面温度(最高温度約110℃)
アイロン掛けはできない

●塩素系漂白
欧州を中心に
取扱われている
国際表示
意 味 日本の
取扱い表示
塩素系漂白剤による漂白ができる。低温、希薄溶液に限る。
塩素系漂白剤を使用できない。