sgi-logo 日本SGIソリューションキュービックフォーラム2006
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●イタリアのピニンファリーナ(Pininfarina S.p.A)は、フェラーリやポルシェ、マセラティといったイタリアの高級スポーツカーや“名車”と呼ばれるクルマのデザインを手がけるデザインハウスだ。同社でデザインディレクターを務める奥山清行氏が、基調講演の壇上に立ち、イタリアにおけるものづくりやデザイン、あるいはブランディングの考え方を紹介した。また、米国や欧州各国におけるものづくりの在り方を比較しながら、日本ではどのようにしてブランドを構築していくべきか、いくつかの示唆を提示した。
1台7500万円のフェラーリが熱狂的に完売する理由

 「デザイン・フォーラム」のオープニングを飾ったのは、イタリアのデザインハウス「ピニンファリーナ(Pininfarina S.p.A)」で、フェラーリやマセラティといった超高級車のデザインを手がける奥山清行氏だ。壇上に立った奥山氏ははじめに、「今日は、欧州で長年クルマのデザインに携わってきた経験を踏まえて、日本人の中にあるデザインのDNAとはなにかについて語りたい」と挨拶した。

奥山清行氏
ピニンファリーナ(Pininfarina S.p.A)
デザインディレクター(Director of Design)
奥山清行氏
 企業にとって、いかに自社製品の優位性や独自性を高めていくかというのは昔から変わらぬ必須の命題である。昨今、日本のものづくりにおいては、独自性の高い新製品を出してもすぐに価格競争に追い込まれたり、“ブーム”になっても長続きせず、製品のライフサイクルが極端に短いといった課題を抱えている。

 こうした課題を解決していくためのヒントとして、奥山氏は「イタリアでの経験から、これからのものづくりは“アイデンティティ”と“クリエイティビティ”そして“ブランディング”を改めて見直す必要があるのではないか」と語る。

 「今のものづくりにおいてアイデンティティがなぜ重要かと言いますと、類似商品が混在する市場で圧倒的な競争力を持つのは、価格ではなく、その製品のアイデンティティだからです。よく“商品のコモディティ化”などと言われますが、どれほど斬新な製品を出しても、類似商品が出てくれば、価格競争になっていくのは経済の大原則であり、当たり前のことなのです。それを避けるためには、製品のアイデンティティと企業哲学を明確化すること、すなわちブランディングが必要。ブランドとは、“コストと価格の不透明性”を維持することと言うことができます。これによって価格競争に巻き込まれずに済むのです」(奥山氏)。

価格の不透明性、情報の非公開によってブランドを生み出す

 現在、日本の多くの企業が、“コストや業務の可視化(見える化)”を叫び、価格の「透明性」こそビジネスを成功に導くのだといった考え方が主流になりつつある。そうした中で、奥山氏が言うように「あえて製品のコストを不透明化する、情報公開しない」というのは一見リスクの高い方法にも受け取れる。それにもかかわらず、顧客も作り手も満足させてしまうのが、ブランドの力だ。その一つの例として、奥山氏は2002年に発表したフェラーリの「エンツォ(Enzo)」というクルマの売り方を紹介した。

奥山清行氏
ピニンファリーナ(Pininfarina S.p.A)
デザインディレクター(Director of Design)
奥山清行氏
 「エンツォ」は1台7500万円という価格のフェラーリである。2002年に349台のみ限定販売すると発表した時、世界各国から現金小切手を持った顧客が3500人近くディーラーに押しかけたそうだ。フェラーリ社は、3500人の顧客候補者から7500万円分の現金小切手を一時預かった上で、審査を行って顧客を“選定”した。年収や社会的地位はもちろん、知名度、レース用のライセンスの有無といった、いくつかの条件に合った349人にのみエンツォを売ったのである。残りの3000人に対しては小切手を返却した。ここでは会社が顧客を選ぶのである。

 当時、奥山氏は「なんという“高飛車”な販売プロセスだろうか」と大きなショックを受けたそうだ。この例から、どれほど値段が高くても、人にものを欲しがらせる仕組みを作ることができ、ブランドや企業哲学というものがいかに市場に生き残る上で強力であるかということを学んだという。

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