派遣切り:真っ先に影響、外国人労働者 浜松や広島で訴え

「社宅から追い出すな」「派遣切りするな」などと訴えながらデモ行進する外国人労働者ら=JR浜松駅周辺で、2008年12月21日午後3時6分、平林由梨撮影
「社宅から追い出すな」「派遣切りするな」などと訴えながらデモ行進する外国人労働者ら=JR浜松駅周辺で、2008年12月21日午後3時6分、平林由梨撮影

 自動車産業や電機産業を中心に派遣・請負労働者といった非正規社員の人員削減が続くなか、日系ブラジル人をはじめとする外国人約3万人が住む浜松市で21日、雇用継続を訴える今不況下で初のデモがあった。非正規社員のうち、言葉が不自由なため真っ先に影響を受ける外国人労働者。突然、理由も不明確なまま訪れる「派遣切り」の実態を訴えた。

 デモに参加した日系ブラジル人のセイチ・トメ(43)さんは5年前に単身で来日。愛知県豊橋市や長野県佐久市などで働き、同県飯田市にあるレタスやピーマンの栽培農家へ移った。だが、約3カ月前に解雇され、就職先を求めて、外国人が多く住む浜松市にやってきた。

 「浜松ならすぐに仕事が見つかるだろう」。そんな思いはすぐに打ち砕かれた。自動車やその関連産業も不況の波が襲っていた。10月からはとうとう、JR浜松駅前の地下道で寝泊まりする日々だ。

 洋服を何枚も着込み、日系ブラジル人の僧侶にもらったという寝袋をかかえたまま、デモに参加した。1日の食事はパンとコーヒーだけ。「ブラジルの人材派遣会社にあと70万円を送金しなくてはならない。それまでは帰れない。何でもいい、仕事がほしい」とつぶやいた。

 12月に入り、勤務先の静岡県湖西市の自動車部品工場で同僚40人が解雇されたというブラジル人のフェレイラ・ジルさん(32)は「自分はまだ仕事があるが、いつ解雇されるか分からない。そのときに備えて労働組合に入った」と話す。

 13歳の息子がいるブラジル人のメロウ・ブラジミルさん(36)は1カ月前、同県磐田市の自動車部品工場で、夫婦そろって雇用を打ち切られた。「帰国するのは簡単。でも今、ブラジル人社会に自分が何か役立てないか。もう少し日本で頑張ろうと思っている」と話していた。

 この日、浜松市中区の公民館でデモに先立つ集会が開かれ静岡、愛知、岐阜県などから外国人を含む約200人が参加した。「企業は雇用を守って」「政府は雇用の創出を」などを盛り込んだアピールを採択、今回の不況で職を失った外国人労働者が状況を説明した。その後、JR浜松駅周辺を約1時間にわたりデモ行進した。【平林由梨】

 ◇広島では相談会 行政支援も言葉の壁

 広島市安芸区で21日「派遣切り」などで職を失った日系南米人の相談会が開かれた。「日本が人手不足だった時、呼び掛けに応じて来日したのに。日本政府も会社も無責任だ」と憤る声も聞かれた。

 組合員約150人のうち約100人が外国人労働者という同市の労組「スクラムユニオン・ひろしま」が、ポルトガル語が出来る組合員を配置して公民館で開いた。相談に訪れたのは15人で、大半が自動車メーカー、マツダ(本社・広島県府中町)など自動車産業の下請けや関連会社で派遣社員として働いていた。

 15人は大半がブラジル人でペルー人もおり20~50代。片言の日本語で「仕事がなくなったら、どう暮らせばいいのか分からない」などと訴えた。派遣会社から説明がなく「雇用保険を受け取れるのか」と聞く人や、派遣会社から労働契約書を受け取っていない人もいた。

 同県には約5200人の日系ブラジル人や日系ペルー人らがいる。「派遣切り」対策で行政は12月から、離職者向けに住宅あっせんなどの支援を始めたが、応募のビラが読めないなど言葉の壁があり外国人労働者まで届いていないという。【上村里花】

毎日新聞 2008年12月21日 21時40分(最終更新 12月21日 23時15分)

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