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クローズアップ2008:09年度予算・財務省原案 埋蔵金使い生活支援

 09年度予算財務省原案は、「派遣切り」に象徴される雇用不安の解消や中小企業支援の施策を充実させるため、景気後退に伴う税収不足を特別会計の積立金(埋蔵金)流用という「裏ワザ」でしのいだ。国の借金返済が滞りかねない埋蔵金の取り崩しで、暮らしにどんなプラス効果があるのだろうか--。

 ◇雇用--住居、内定切り配慮

 景気の冷え込みで派遣社員など非正規雇用の労働者の解雇が急増していることを受け、雇用対策は09年度当初で2742億円、08年度2次補正の4048億円を加えれば6790億円と手厚くした。

 解雇で会社の寮などを出された労働者に、住宅入居初期費用(上限50万円)や家賃(上限36万円)、生活・就職活動費(上限100万円)を貸し付ける。会社が寮を退去させず無償提供した場合は労働者1人あたり最大6万円を助成する。

 解雇による住居喪失を放置すれば大量の野宿者が出かねないという危機感の表れで、労組幹部は「雇用対策に住居問題を組み込んだ例はなく評価できる」と話す。ただ、「次の仕事も見つからないのに金は怖くて借りられない」との声もあり、迅速な貸し出しが課題だ。

 事業者支援も強化された。一時帰休や職業訓練で解雇を回避した際に出される雇用調整助成金の支給要件を緩和し、支給対象も拡大。雇用保険の被保険者になっていない派遣労働者の一時帰休も助成対象とし、解雇回避のセーフティーネット(安全網)を広げた。さらに、大企業への助成が賃金などの3分の2なのに対し、中小企業(従業員300人以下)への助成は5分の4とする支援も新設した。

 また、内定を取り消された学生を雇用した企業には100万円(大企業は50万円)を支給する制度を設けるなど住居、生活資金、内定切りに目を配った。

 08年度2次補正では再就職支援対策で、都道府県の雇用創出を支援する特別交付金に2500億円、職を失った非正規労働者などに一時的な雇用・就業機会を作る緊急雇用創出事業に1500億円を計上。地方にも配慮した。【東海林智】

 ◇子育て--手厚い対策並ぶ

 介護職員の低賃金を改善し、人材不足解消を狙い、介護事業者への報酬を3・0%引き上げる。00年度の介護保険発足以来初のアップになる。ただ、夜勤など負担の大きい業務や介護福祉士の配置が手厚い施設などが加算対象となる見通しで、政府が示した「月額賃金2万円アップ」が実現し、職員の待遇が改善する保証はない。

 一方、子育て分野は手厚い対策が並ぶ。待機児童解消策では民間保育所の受け入れ児童数を約4万5000人拡大し、妊産婦支援では無料検診回数を5回から14回に増やす。22日にも首相が表明する重要課題推進枠では、出産一時金が4万円アップし42万円となる見通し。2次補正案では、物価高などに対応する08年度限りの緊急措置として、2人目以降の子ども(02年4月2日~05年4月1日生まれ)に1人当たり3万6000円を支給する制度も盛り込んだ。

 医師不足が深刻な医療分野では、厚生労働省が産科、救急、へき地の勤務医への手当用に約97億円、救急搬送で病状に応じた医療機関に患者を振り分ける体制を整備する新事業に38億円を要求しており、重要課題推進枠で要求額がどこまで予算化されるかが焦点だ。【堀井恵里子】

 ◇財務相「異常事態の臨時措置」

 「埋蔵金頼みの予算編成」。財務省幹部は08年度2次補正、09年度当初予算案を自嘲(じちょう)気味にこう表現した。財政投融資特別会計の積立金(埋蔵金)の流用額は、計8兆3930億円。消費税増税で手当てするはずだった09年度からの基礎年金の国庫負担引き上げ(2・3兆円)まで賄った。

 埋蔵金は財投で行った過去の高金利貸し付けの利子などをため込んだもので、これまでは国債償還(借金返済)に充ててきた。しかし、経済対策などの財源として08年度2次補正で4・2兆円流用、今年夏には13兆円程度あった埋蔵金が08年度末には8・9兆円に減少。09年度も利子収入はあるが4・2兆円使う予定で、同年度末には6・5兆円と今夏の半分に減る見通しだ。

 中川昭一財務・金融担当相は20日、埋蔵金頼みの予算を「経済の異常事態の臨時異例の措置。赤字国債発行の代わりのギリギリの判断」と説明した。埋蔵金が無ければ、09年度の新規国債発行額は37・5兆円と当初予算ベースで過去最悪に膨らむところだっただけに、埋蔵金流用は赤字国債を少なく見せる点で政治的な意味がある。

 しかし、財投特会の積立金が増えれば、本来は借金を返すのがルールで、経済対策などへの流用は財政再建に逆行する。景気後退の長期化でさらなる経済対策を迫られれば、埋蔵金流用による財政の帳尻合わせもいずれ限界に達し、財源捻出(ねんしゅつ)は赤字国債に頼らざるをえなくなりそうだ。【清水憲司】

毎日新聞 2008年12月21日 東京朝刊

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