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【書評】『人間として生きてほしいから』笹川陽平著 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:ミャンマー情勢
■ハンセン病制圧に挑む著者
本書を読了後に、思わず巻末の著者略歴を見てしまった。「1939年、東京に生まれる」と書かれている。ということは、著者は69歳になる。
なんというエネルギーだろう。1年のうち3分の1は発展途上国で過ごしている。しかも、1カ所に滞在する期間は、ブラジリアの4日間が最長だという。
いったい何のために、著者はそれほど忙しく地球上を飛び回るのか。「旅の主な目的はハンセン病の制圧活動です」とある。
私たちのハンセン病に対する意識はきわめて薄弱といってよいだろう。日本では、すでに制圧された病気だと思われている。
しかし、まだハンセン病の犠牲者は世界中に存在し、著者は猛烈な勢いで救済活動を続けている。
その足跡は中国、モンゴル、北朝鮮、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマー、東ティモール、フィリピン、マレーシア、エチオピア、コンゴ民主共和国、マダガスカル、レソト、タンザニア、モザンビーク、アメリカ、ブラジル、ロシア、グルジア、チェコにまで及んでいる。
なぜ、ここに著者が訪問した国々を列挙したかというと、これら多くの地域でいかに活動を展開したかを著者が飾らない筆致で具体的につづっているからだ。
肩に力を入れずに、遠い僻地(へきち)を訪れ、劣悪な環境の中で暮らす人々に温かいまなざしを向ける様子が生き生きと描かれている。