◎教科書充実 授業の質が一層問われる
政府の教育再生懇談会が第二次報告で小中高の教科書充実を打ち出し、国語、理科、英
語ではページ数の倍増を提言した。学習内容を増やす新学習指導要領が小学校で二〇一一年度、中学校では一二年度から全面実施され、教科書もそれにふさわしい中身が求められるのは当然である。
今回の教科書改革で「ゆとり教育」からの転換が加速する中、問われてくるのは授業の
質である。教科書の中身がどれほどよくなっても、学力向上は教員の手に委ねられていることに変わりはない。全国学力テストを契機として、石川、富山県で外部人材の導入や指導力に優れた教員のノウハウ共有化など授業の質を高める動きが徐々に広がってきたのは望ましいことである。教科書の充実を学力向上につなげるためにも取り組みをさらに活性化させてほしい。
薄くなった教科書は「ゆとり教育」の象徴としてさまざまな問題点が指摘され、教員ア
ンケートでも「算数で練習問題の量が少ない」「国語で文豪の名文が物足りない」など不十分さを指摘する声が出ていた。第二次報告では、それらの意見を反映させたほか、実生活との関連など興味を高める記述の充実が強調された。学習指導要領の範囲を超える「発展学習」の上限撤廃も盛り込まれた。
基礎、基本を着実に身につけ、読解力や知識を活用する力などを育てる工夫はとりわけ
大事である。教科書を使って一人でも勉強が進められる「自学自習」にも適した内容にするという提言は、教室で授業を受けながら使うことを前提にした従来の教科書観の転換を促すものである。これらの狙いを生かすには学校現場の一層の努力が必要となる。
石川県では大学教授らを「活用力向上支援アドバイザー」として小中学校に派遣したほ
か、「優秀教員」の授業を積極的に公開している。富山県でも同様の取り組みのほか、「とやま型学力向上プログラム」で教員の力量を高めている。石川県教委が実施した県民意識調査では学力低下を心配する声が七年前の前回調査より急増した。こうした不安を現場は真摯に受け止め、教員同士が切磋琢磨できる環境を整えてほしい。
◎空自イラク撤収 得難い体験を生かしたい
イラク復興支援活動を行っていた航空自衛隊が撤収を開始した。延べ約三千五百人の派
遣隊員のうち、小松基地からは、九十人が参加した。復興支援の最前線で黒子に撤し、黙々と任務をこなしてきた隊員たちに心からの敬意を表し、労をねぎらいたい。イラク復興支援の協力を求めた国連安保理決議が年内で切れる。イラク国内の治安もかなり回復しており、今が撤退の潮時だろう。一人の犠牲者も出さず、厳しい任務を無事終えることができたのは幸運だった。
空自はクウェートに拠点を置き、イラクの首都バグダッドなどへ国連や多国籍軍の人員
、物資を空輸してきた。飛行回数は八百二十一回、輸送人員は約四万六千五百人、輸送物資の総量は約六百七十三トンに上る。空自が外国に駐留し、長期任務を果たしたのは初めてのことである。この得難い経験をこれからの活動に生かしてほしい。
オバマ次期米大統領は、テロとの戦いの主戦場が、アフガニスタンとパキスタンになる
と明言している。海上自衛隊によるインド洋での給油活動を来年一月以降も継続させる新テロ対策特別措置法改正案の再可決により、日本が今後もテロとの戦いに最低限の役割を果たせることになったのは幸いだが、オバマ政権はアフガニスタンへの派遣を求めてくるだろう。
今年八月にはアフガニスタンで、非政府組織(NGO)の日本人職員が拉致され、殺害
される悲しい事件があった。先月末には、インド・ムンバイで同時爆破テロが発生し、日本人を含む多数の犠牲者が出た。アジアでのテロ拡大が、給油活動にとどまらぬ貢献を日本に迫っている。
アフガニスタンでは今年、テロとの戦いの前線に立つ米軍兵士の戦死者が既に百人を超
えた。支援はあくまで民間主体で、という声もあるが、これほど危険な場所に、丸腰の民間人の派遣など論外である。軽々しく自衛隊員を送り込めるような状況でもない。給油支援以外に日本は何ができるのか、次の一手を真剣に考えなくてはならない時期にきている。