江戸時代に京都で活躍した絵師で、近年、「奇想の画家」として人気の伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716〜1800)が晩年に描いたとみられる屏風(びょう・ぶ)が北陸地方の旧家で見つかった。今年8月に美術関係者が発見した。
鑑定した滋賀県甲賀市のMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)によると、屏風は縦159センチ、横354センチの六曲一双(左右一対)。一方(右隻)に波打ち際に座る白い象が、もう一方(左隻)には黒い鯨が潮を吹き上げている様子が大胆に描かれている。落款のそばに「米斗翁八十二才画」という書き込みがある。「米斗翁」は若冲の戒名になっており、80代前半の作とみられる。岡田秀之・同館学芸員は「晩年の大作は珍しく若冲の業績を知る上で貴重な資料」と話す。
若冲に詳しい同館館長の辻惟雄(のぶお)・東大名誉教授は「思いもよらない発見で大変驚いている。画面いっぱいに空想をまじえて描かれた象の姿や、鯨を包む波頭の表現からも、落款からも若冲の作品に間違いないと思う。若冲研究にとって、大きな発見だ」としている。