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【社説】

09年度予算の財務省原案 景気対策も財政再建も

2008年12月21日

 政府の来年度予算(財務省原案)が歳出拡大に転じる。景気が深刻化する中、容認できるが、同時並行で徹底した行政改革を断行せねばならない。

 家を失い途方に暮れる派遣社員。次はわが身と身構える正社員たち。日本経済は底が割れたかのように、すさまじい勢いでがけから転げ落ちつつある。

 そんな中で編成された来年度の当初予算案は三十三兆円を超す国債を発行し、過去最大の八八・五兆円を超す歳出規模になった。一方、税収は七兆円以上も減収になった。財政再建は当面、棚上げである。

 ヒントは埋蔵金活用に

 これで暮らしが守れるのか。いや、財政赤字を続けて大丈夫なのか。さまざまに将来への不安がよぎる中、今回の予算は国民に思いがけない「掘り出し物」ももたらした。霞が関埋蔵金である。

 来年度当初予算案と本年度第二次補正予算案で活用される特別会計の積立金など、いわゆる埋蔵金は計八・四兆円に上る。

 埋蔵金をどう評価するか。ここに将来へのヒントも隠されているように思える。

 一般会計と同じく特別会計も財務省の査定を経て、国会で歳入・歳出が審議される。ところが、仕組みが複雑で監視の目も届きにくいために、実質的には所管する各省庁の裁量に任されていた。中でも積立金や剰余金は、あたかも「役所のへそくり」のように埋め込まれていたのである。

 財務省は「それぞれの積立金には存在理由がある。余った分は国債償還に使う」という立場だった。だが、歳出拡大の圧力に押されて、虎の子のへそくりにも手を出さざるをえなくなった。

 とはいえ、これで完全に透明になったとはいえない。

 国会が特別会計精査を

 二〇〇五年の経済財政諮問会議で民間議員が初めて「埋蔵金候補」の存在を指摘してから、〇六年度から〇八年度まで、総額二七・三兆円の埋蔵金が国債償還や一般会計への繰り入れに使われてきた。それでも、ことしも埋蔵金が出てきた事実をみると、特別会計には、まだ相当な無駄あるいは役所の裁量が残っているのではないか、と疑わざるをえない。

 経済危機が「役所のへそくり」をあぶり出したのを機に、今後はへそくりを許さない方策を考えるべきなのだ。

 「税金の使途は国民が決める」という原則に照らせば、透明性に欠ける運用を役所任せにしている現状はおかしい。与野党は国会で特別会計と埋蔵金の実態を徹底的に精査する必要がある。

 毎年のように剰余金が出てくる財政投融資特会はもちろん外国為替資金特会も例外ではない。経済学にしたがえば「変動為替相場制の下で中央銀行の介入効果はない」はずなのに、介入をもとに得た一兆ドル(約九十兆円)もの資産を外貨準備として保有するのが妥当なのかどうか。根本の原理原則に戻った議論をしてほしい。

 財政再建も特別会計を入り口にして見直すべきだ。

 民主党の要請に基づき、衆議院調査局がまとめた調査報告によれば、〇六年度で二万六千六百三十二人の国家公務員OBが四千六百九十六の法人や団体に天下りしており、その法人や団体には総額十二兆六千億円の税金が補助金、交付金あるいは契約の代金として支払われていた。その多くがまた、特別会計を経由している。

 内訳は補助金などが六兆八千億円、契約が五兆八千億円で、うち随意契約が98%に上っている。ここに無駄や非効率が残っていないはずがない。独立行政法人の統廃合による補助金削減や競争入札への変更だけでも、数兆円単位のカネが浮いてくるのではないか。

 こうした税金の実態は予算編成のシーズンになると、垣間見えるようでいて、実はベールに包まれている部分がある。先の調査報告も、実態を知るはずの財務省はおろか、衆議院も国会議員以外に報告書を公開していない。情報公開も不十分である。

 問題はやはり政権の意思だ。

 麻生太郎首相は三年後の消費税引き上げを明言しているが、首相自ら強調するように、増税には大胆な行政改革が大前提になる。

 税金の無駄遣いは役人の天下りと表裏一体である。天下り構造を放置したまま無駄遣いはなくならず、無駄遣いを放置したまま国民は増税を容認しないだろう。

 危機をチャンスにせよ

 現在はもちろん将来にわたって、国民の暮らしを守るためには、景気対策も財政再建も必要である。政府がずっと「ない」と言い張ってきた埋蔵金の存在を認め、相当部分をはき出した今回の予算編成は財政のあり方を根本から考え直す好機にしたい。

 

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