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【主張】来年度予算 財政悪化の「底抜け」防げ
麻生政権で初めての来年度予算の財務省原案が内示された。米国発の金融危機に対応する景気対策と選挙対策で、歳出規模、国債発行額ともに急拡大し財政規律は大きく失われた。
最大の注目点は「骨太の方針2006」の歳出削減工程に沿った概算要求基準が守られるかどうかだった。残念ながらそれは実質的に崩壊したといえる。
象徴的なのは、新規財源の確保を条件に2200億円の抑制幅圧縮を認めた社会保障費である。たばこ増税が流れると、年金特別会計の余剰金と道路特定財源の一部を充当、実質的な抑制幅はたった約230億円となった。
安定財源を前提とする社会保障制度にとって危険な財政措置だが、そうした手法は来年度からの基礎年金国庫負担2分の1引き上げ財源の確保でも使われた。
消費税を含む税制抜本改革が先送りされたため、その財源に財政投融資特別会計の運用益積立金を充てたのだ。この積立金は首相が赤字国債に頼らないとした景気対策もすべてまかなった。
今年度第2次補正予算では例の定額給付金をはじめとして4兆円超、来年度予算の新たな別枠予備費1兆円や政策減税、地方交付税増額などの財源もそうだ。これらの合計はざっと10兆円に上る。
この積立金は総資産の5%を金利変動準備金とし、それを上回る剰余金は国債の圧縮に充てるよう法律で定めている。剰余金流用は国債発行と実質的に同じであるうえ、準備金まで取り崩さなければならないのだ。
いわば禁じ手を使うわけだが、それでも足りずに国債発行額は今年度当初予算比で約8兆円も増加し33兆円超となった。景気悪化で税収見込みが今年度当初比で7兆円以上落ち込むからだ。
この結果、対国内総生産(GDP)比で0・5%まで改善した基礎的財政収支(地方を含む)の赤字は一転して急拡大する。このままでは政府目標である2011年度の黒字化など不可能になる。
選挙向けといわれる給付金や道路特定財源の一般財源化と地方交付税でみられるようなばらまきは許されない。景気・雇用対策の対象も効果を基準にしないと、財政は底が抜けて悪化しよう。
せめて財政悪化の歯止めとして、3年後からの税制抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」を明確に法制化せねばならない。