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【主張】ビッグ3救済 再生プランの早期策定を
米政府は米自動車大手3社(ビッグスリー)救済のため、総額174億ドルのつなぎ融資を実施すると発表した。金融危機対策のために設定した公的資金枠7000億ドルを活用するという。
この融資枠は本来、金融機関の資本増強が目的である。だが部品メーカーなどを含む約300万人の雇用を支えるビッグスリーが破綻(はたん)すれば金融不安が深刻化するとの理由で、米政府は資金枠の転用が可能と判断した。
先の連邦議会上院で総額140億ドルの融資を行う救済法案が共和党議員らの反対により廃案となった。それだけに米政府の土壇場の緊急支援の決断で3社の破綻はとりあえず回避された格好だ。
しかし、これは年末の資金繰りを手当てする一時しのぎの策にすぎない。ビッグスリーの経営悪化は深刻だ。政府以外に融資に応じる民間金融機関はなく、今回の緊急融資でも経営の現状は何ら改善されるわけではないからだ。
米国内には根強い救済反対の世論がある。米政府が緊急融資の見返りとして、複数の厳しい条件を付けたのは当然だろう。
まず、各社に対しては大規模なリストラを行うとともに、抜本的な再建計画をまとめて2009年3月末までに存続可能な状態にするよう求めた。さらに、経営陣の報酬制限や配当の禁止を要求し、政府が各社から株式を取得できる権利(ワラント)を得て、経営を監視するとした。
もし再建がうまく進まないならば、今回の融資は回収され、法的破綻が選択肢になる。
これまで何度も3社の再建策が失敗してきた背景には、経営の怠慢やコスト削減を拒む労組のかたくなな姿勢がある。ブッシュ大統領も会見で「改革に必要な厳しい決断を下さなければならない」と注文を付けている。
今後の抜本的な再建支援策はオバマ次期政権に委ねられる。再建が失敗すれば、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用が再び視野に入ってくるだろう。だが、この時期の3社の破綻は世界経済全体にとっても大きな打撃となる。
ビッグスリーの経営危機はいまや悪化する米国経済の象徴だ。再建の行方は世界の金融市場が注目している。米政府と3社は、米経済への信認を再び取り戻すうえでも、再生プランの早期策定に全力を挙げてもらいたい。