09年度予算の財務省原案が20日、要求官庁に内示された。08年度予算までは、長期景気拡大を背景に、わずかずつだが財政状態も改善していた。それが、09年度予算案は一転して大幅に赤字が拡大した。
景気テコ入れと税収大幅減のためだ。一般会計の規模は前年度当初比5兆4867億円増の88兆5480億円、一般歳出は同4兆4465億円増の51兆7310億円と、ともに過去最高だ。新規財源債発行見込み額も33兆2940億円と当初予算では4年ぶりに30兆円の大台だ。麻生太郎首相は、国債の30兆円枠にこだわらないと発言していたが、08年度の第2次補正後に続き、09年度当初もそうなった。
小泉改革以来、「小さな政府」論が突出し、財政政策は悪であるとの雰囲気が、政治の世界を支配していた。しかし、景気が悪化している時には、財政が適切な役割を果たさなければならない。では、09年度予算案はそれに応えるものになっているのだろうか。
基礎年金の国庫負担拡大や、道路特定財源の一般財源化などこれまでの約束は予算に盛り込んだ。国民の安心を高め、公共事業のゆがみを直すため、当然のことだ。3次にわたる景気対策を受け、雇用や住宅、地域活性化などに配慮していることは事実だ。
形骸(けいがい)化している復活折衝を廃止し、3300億円の重要課題推進枠を麻生首相自らが政府案決定までに配分することも、内容が伴うならば評価できる。
ただ、政府がいくら重点化を叫んでも、予算案から強いメッセージは伝わってこない。どこが勘所か明確でないためだ。その大きな原因は予算制度であり、概算要求基準(シーリング)が創意工夫を阻んでいる。
シーリングは歳出の一律削減には有効だ。裏返せば、メリハリを付けにくい。財政の景気刺激効果を高めるためや、経済産業構造を転換するためには、必要な分野に集中的に予算配分しなければならないが、09年度もそうはなっていない。
シーリングは当初予算はほどほどの規模にとどめ、追加支出は補正予算で、という悪弊ももたらしている。09年度のように財政支出が必要な時には、当初から過不足なく予算計上した方が効果も期待できる。
予算制度改革は緊急の課題ということだ。歳出をただ削ればいいのではない。機能する予算への改善が最大の目的だ。
09年度予算案では特別会計の積立金などを一般会計に繰り入れ、新規国債増発を抑えた。これも、長い目でみて望ましくない。その分、国債残高を減らす原資が削られ、実態は国債発行と変わりない。財政健全化の観点からも、財源不足は国債で賄う方が正直だ。
日本経済は転機を迎えている。財政も旧態依然であってはならない。
毎日新聞 2008年12月21日 東京朝刊