少子高齢化で膨らむ社会保障関係費をめぐり、焦点となっていた基礎年金の国庫負担割合引き上げと社会保障費の伸び抑制の財源は、「埋蔵金」といわれる特別会計から手当てする。安定的な財源を確保できず、経費節約による捻出もあきらめたためだ。こうした財源は一時しのぎの手当てにすぎず、麻生太郎首相が掲げた平成23年度の税制抜本改革に伴う消費税率の引き上げをあてにしているが、増税の行方は不透明であり、制度の持続に向けた財源確保が課題となる。
平成21年度予算の財務省原案に盛り込まれた厚生労働省所管の社会保障関係費は13・8%増の24兆5917億円。来年4月からは基礎年金の国庫負担割合が3分の1から2分の1に引き上げられる。
16年に成立した年金制度改革関連法に盛り込んだ措置で税金投入で年金財政を支えるのが狙いだ。ただ、必要となる2・3兆円相当の財源のメドは立たず、結局、財政投融資特別会計の積立金で補うことにした。21、22年度の2年間はこの埋蔵金でつなぐが、その先の財源は決まっておらず、政府が目指す年金不安の払拭(ふっしょく)はできていない。
小泉政権下の平成18年に政府が「骨太の方針」で打ち立てた社会保障費の自然増分を2200億円ずつ5年にわたり抑制する方針も形骸(けいがい)化した。
抑制幅を縮小する代わりに、健康保険組合などへの助成のために年金特別会計に設けられている「特別保健福祉事業資金」を清算して財源を確保した。
この事業を継続するために一般会計から約190億円を拠出する。このため、実質的な節約は医療費抑制につなげる後発医薬品(ジェネリック医薬品)の活用促進による230億円にとどまる。財政規律の確保には禍根を残した格好となった。
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