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【東京】

上場控えた『欲張り』裏目 トラブル多発の副都心線開業

2008年12月20日

渋谷行き始発電車の到着を見守る大勢の人たち=6月14日午前5時7分、新宿区の新宿三丁目駅で

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 「難易度の高いさまざまな新しい技を一気に取り入れようと欲張りすぎたんです。それがあのトラブルにつながった」

 東京メトロの一年を振り返る年末懇親会の席で、同社の幹部はそうもらした。「あのトラブル」とは、開業の六月十四日から四日連続でダイヤが大幅に乱れた副都心線のトラブルだ。

 「欲張りすぎ」には大きなわけがある。同社は二〇〇九年中にも株式を上場する。東京で最後の地下鉄となる副都心線は、そんなメトロの企業価値を高める切り札と期待されてきた。

 埼玉県和光市と東京・池袋、新宿、渋谷の三副都心を結ぶ首都圏の新たな大動脈。東武や西武と乗り入れ、一二年には東急とも直結する。同社の地下路線としては初の急行も導入。最新の自動列車運転装置(ATO)やホーム柵も採用された。

 「うちにとって集大成の路線」(同幹部)だったが、トラブルは副都心線最大の売り物である他路線との相互乗り入れから発生した。西武線と直結し、東武線や有楽町線も乗り入れる小竹向原駅で指令ミスが起き、ダイヤが混乱。これにATOの不具合も加わり、トラブルが拡大した。

 いずれも試運転の段階でチェックされるべき基本的ミスだったが、「他路線が営業運転している中での制約された試運転で、本番に向けての問題点のチェック、克服が十分でなかった」(瀬ノ上清二運転課長)。

 その後、小竹向原駅などで指令体制、マニュアルを再構築し、ATOの調整も厳密化。ミスやトラブルは激減した。

 同社広報によると、現在、副都心線の遅延率は地下鉄十三路線の中で最低となっているという。一日当たり乗降客数も今は約十九万人で、開業前に予測された同十五万人を上回っている。

 結局、トラブルの続いた四日間とは、利用者を巻き込んだ「営業運行本番での試運転」だったといえる。「歴史的な開業の舞台でお客さまに迷惑をかけ、耐え難い屈辱を味わった」(同社職員)。その思いを、「欲張りすぎた」同社経営陣は忘れてならない。 (稲熊均)

 <副都心線トラブル> 6月14日の開業初日から指令ミスや車両トラブルでダイヤが大幅に乱れ、折り返し運転や他社路線への振り替え輸送が4日間続いた。この間、各停電車が急行の軌道に入り停車予定駅を通過するなど事故につながりかねないミスも発生した。

 

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