【エルサレム前田英司】イスラエルの占領地ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ヘブロンで、ユダヤ人入植者が不当に住宅を占拠し続けたとして、イスラエル治安当局は4日、入植者約250人を強制排除した。この際、入植者は住宅に立てこもって投石などして抵抗。治安当局は催涙ガスで応戦し、双方の計約35人が負傷する事態に発展した。
入植者は住宅をパレスチナ人所有者から買い取ったと主張し、07年3月から住み着いていた。パレスチナ人側は売却を否定している。イスラエル最高裁は先月中旬、所有権が明確でないとして入植者に退去を命じたが、これを拒否して居座り続けていた。
入植者の多くはユダヤ教の強硬派で、入植を「神に与えられた『祖先の地』への帰還」と正当化。付近のパレスチナ人住民と衝突を繰り返す一方、最近では強制排除を阻止しようとして、イスラエル治安当局に対し暴力を激化させていた。AP通信によると、この日の排除後には、至近距離からパレスチナ人を銃撃したり、腹いせに家や車に放火したりした。イスラエルが西岸で入植者を本格排除したのは06年2月以来。
ヘブロンは、ユダヤ教とイスラム教の共通の祖先の墓がある両教徒にとっての聖地。
毎日新聞 2008年12月5日 東京夕刊