C'est mon petit jardin, foutez-moi la paix
解説=フィリップ・ペリシエ、実況アナウンサー=ジェラルディン・ポンス@ユーロスポーツ・フランス。

一つあらかじめ言っておかなければならないことがある。私達は安藤が怪我をしていたことを知らなかった。ユーロスポーツでも、TSRでも知らなかった。前日の演技という背景が既にあって、さらに朝の怪我を知らない人が見たら、あれがどういう風に目に映るのかということを、下の実況は十二分に示していると思う。あまりにもショッキングだった。

安藤美姫


安藤美姫(Miki Ando) 世界選手権 2008 フリー

解説:おそらくここで、、ひとつの真剣勝負に立ち会えることになるでしょう。

アナ:はい。まず何よりも自分自身に対する戦い…

解説:ミキ・アンドーです。昨年世界チャンピオンであったことをなんとしても今は忘れなければなりません。

アナ:それから、ショートで8位だったこともですね。

解説:いや、こういう状況に置かれている場合、とりわけ世界チャンピオンであったことを忘れなければなりません。こういう、にっちもさっちも行かない難しい状況においては…。私たちにもそれがどんなに難しい事かよくわかっています。しかし、ここでは持てる力を全て出し切って闘うのみです。誇りと自信を持って、そして名誉のために。疑いを差し挟んではいけません。彼女が日本人であることには意味があるのです。そういう精神の中で育てられているはずです。彼女は闘いますよ。そして彼女の持てる最良のものを見せてくれるでしょう。…少し無表情というか、受け身に見える表情ですが、氷の上にコールされたら、きっと顔つきも変わるはずです。そして、最後まで闘いきってくれることでしょう。

アナ:ミキ・アンドーは、ショートのあとで8位。フリーはビゼーの「カルメン」で滑ります。

解説:その上「カルメン」ですよ。高慢なまでに誇り高くなければなりません。

アナ:(演技開始、サルコー失敗後)…これは…難しくなりました。

解説:…演技を続けないようです。ああ…ほら。わかりましたか。

アナ:中断します。

解説:中断します。

アナ:何が起きたんですか?

解説:何も起きていません。おそらく心理的に…

アナ:…滑りに入っていけません。ジャッジに説明しに行きます。

解説:もしかしたら怪我をしたのかもしれませんが、私はむしろ彼女のプライドが傷つけられたのではないかと思いますね。彼女にとって耐え難いまでに。

アナ:はい。どこかが痛む所為で演技を中断したようには見えませんでした。

解説:痛むのは心でしょう。

アナ:痛みはどこか別のところにあるようです。…はい。終わりましたね。

解説:ここで止めても、彼女の抱える問題が解決されることにはならないんじゃないかと、それが非常に心配ですよ。

アナ:まさしくそこが…なんだか変ですね。たしかにプライドが傷つけられた。でもこういう風に自ら負けを認めるのはおかしな感じがします…いえ、再開するようです。

解説:いや、これは…思ったとおりです。(ここでお辞儀)

アナ:終わりました。

解説:これから先、心理的なケアが大変な事になりますよ。

アナ:8位という結果を受け入れる事ができなかったのでしょうか? ともかく、彼女はチャンピオンのタイトルを守るために来たわけですから。

解説:ええ、でも私が言いたいのは、ここで彼女は自分の選択した行為の重大さを完全には理解していないという事です。状況から逃げてしまったからです。今後もっと酷いことになるでしょう。(長い沈黙)…なんということでしょうか!(再び長い沈黙)…彼女にとって最悪の日になりましたね。

アナ:本当に…こんな風に止めるなんて!

解説:最悪の日です。自尊心が傷つけられただけでなく、それとは別に、これからどういうことになるかを考えると。…彼女は降参したんです。そう言っても良いと思います。この映像を見てください。あまりにも暗示に満ちていて…。

アナ:トンネルの中に入りました。

解説:トンネルの中に入ったんです。とても長いトンネルになることでしょう。

アナ:こういう風に耐えられないというのは…。

解説:ええ。ええ。

アナ:少なくとも立ち向かわないと…。

解説:ほんとうに、後が大変です。本当に。

アナ:はい。(ここでAshley Wagnerが氷上に出る)

解説:それに私が理解できないのは、コーチングのレベルで彼女に状況をきちんと説明していないという事です。

アナ:きつく言わなかった。

解説:「よく聞きなさい。もうダメになった。それは分かっている。順位の事はもう関係なくなった。でも気にするな。君は世界チャンピオンだ。たとえ7位や8位で終わったとしても、誰一人としてそのことに文句はつけられない。順位は問題じゃ無い。ただし、恥ずかしくない滑りをしなさい。最後まで滑りなさい。持てる力を出し切りなさい。君は表彰台に上ったからチャンピオンだというわけじゃない。君自身の全力を出し切ったという意味で、チャンピオンである事を証明しなさい。今回は君は表彰台に登ることは できない。けれど、それは全く大したことじゃない」と、言ってやる事だってできるんです。

アナ:ですが、私達は彼女が闘うことのできる選手、闘ってきた選手だということを知っているのに…。

解説:ものすごく闘う事のできる選手なんです。でも、滑る前の表情にはなにか煮え切らないところがありましたね。受動的だった。「受け身の表情だけれど演技の時には」と言ったのですが…変わる様には感じられなかった。後になってからこう言うのは簡単ですが、あの時本当にそういう風に感じました。そして、コーチングのどこかに良くないところがあったと思われます。彼女を取り巻く人々、本当に彼女の傍にいて、彼女に助言を与える立場の人々の責任は非常に、非常に重大です。

アナ:(Ashley Wagnerの演技後、得点待ちの時)アンドーのあの件は、他の2人の日本人選手に影響を与えるでしょうか?

解説:私は、あれで2人のプレッシャーが無くなると思いますね。

アナ:…と言うことは、影響はあるということですね。悪い影響じゃなく…

解説:ポジティヴな影響です。2人は完全にプレッシャーから解放されるでしょう。今夜、アンドーは彼女自身に対して負けただけではありません。他人に対しても負けたのです。自分から戦いを放棄して、他の2人に代わりに闘ってくれるように短刀を手渡したようなものです。良くありません。(長い沈黙)負けない強さを造り上げるにはとても長い時間がかかるし、とても難しい事です。

アナ:確かに。でも、私は本当に彼女の行動がよく解らないんです。ああいう風に止めるのは、彼女のイメージにも良くありません。彼女自身にも。

解説:自傷行為ですよ。

アナ:明日、視聴者の皆さんにお報せできるような何らかの説明があれば良いんですけれど。

解説:ええ。でも明日でてくるような説明は、必然的に偽の説明だと思いますよ。本当に原因を分析するには時間が足りません。生々しすぎます。

Carolina KOSTNER


Carolina Kostner World figure skating Champ.ship 2008 FS

アナ:さて、カロリーナ・コスナーです。2008年世界選手権のタイトルを争うのは今をおいて他にありません。果たして彼女は、2人の日本人選手の前で1位という現在の順位を維持できるでしょうか? ドヴォラックの「Dumsky Trio」で滑ります。

解説:カロリーナ・コスナーの目標は、3-3のコンビネーションを一つ、3ルッツを1つ、そしてその他の一通りのトリプル・ジャンプ、ループ、サルコー、トゥループを入れることです。これがちゃんとできれば、順位を守るには充分なはずです。注目しましょう。

(演技開始)ここで3-3です。…うしろに2ループも付けました!今度は3ルッツを成功させねば。

アナ:彼女にとっていつも問題のあるジャンプですね。

解説:そうです。がんばれ。このルッツは入るような気がします。さあ…前傾して…(ここでお手つき)ああ、軽くバランスを崩しました。手をついてしまった。…これで技術点から0コンマいくつかが消えてしまいました…。

アナ:(演技終了後)カロリーナ・コスナーでした。さてフィリップ、小さなミスがありましたね。小さなミスが積み重なりました。これで勝てるんでしょうか? 確かに構成点で遅れは取り戻せるでしょうが、マオ・アサダに対しては本当に僅かなリードしかありませんでした。

解説:それでは答えましょう。もし彼女のミスがあのルッツのミスだけだったら、まだ可能性はありました。あれは大したミスではないからです。しかし、あのマオ・アサダに対して、確かにフルッツでダウングレードされるでしょうが、3アクセルを跳び、3-3のコンビネーションを連発してくるあのアサダに対してですよ。カロリーナ・コスナーはすでに技術点で、理論的にはマオ・アサダに大きく負けています。構成点に関しては、たとえこのプログラムの構成が目を見張るほど素晴らしいとはいえ…おそらく気づかれたと思いますが、プログラム終盤の1分間が、彼女の見事なスケーティングを見せ付ける構成になっています。とても美しいステップ・シークエンスと、非常にたっぷりとしたスパイラルですね。とてもよく滑っていたし、姿勢も美しかった。しかし、しかし、しかし。技術点が、私の考えでは、マオ・アサダの逆襲に抵抗するには低すぎます。しかも、マオ・アサダがすごい演技をしそうなことは今となっては大いに予測可能なことですからね。

ともかく、カロリーナ・コスナーは、これまでの彼女の演技に比べて…欧州選手権ではなく、世界選手権の話ですよ…以前よりもはるかに良く闘ったと思います。たぶんまだ限界まで力は出し切っていないでしょうが、勝負のかかっている場面で自信を取り戻す必要がありました。すべての要素に成功したわけではありませんが、ともかくすべてを試みたこのプログラムで、彼女はおそらく、自分の内部に、バンクーバーのタイトルを狙いにいけるだけのパワーと自信を見出す事ができたのではないかと思います。

アナ:世界選手権に関しては、2006年のカルガリーで12位、昨年の東京では6位でした。そして今回はおそらく…

解説:表彰台に乗るでしょう。たぶん銀メダルだと思います。

アナ:まずは残りの選手の演技を見てからですね。コルピ、キム…

解説:いや、無理でしょうね。

アナ:アサダ、そしてナカノ。

解説:はい。しかしキムの問題点は…彼女はアサダと同じで、技術点で差を付けてきます。しかしアサダは二つ目の得点…構成点でキムにまさっています。ですから私は、構成点で勝負が決まると思うんですね。そして構成点で、カロリーナ・コスナーはユナ・キムよりも優位に立つと思います。まあ、もう少し待ちましょう。

アナ:あら、彼女は怪我をしたようです。

解説:はい。ちょっとだけ手に怪我をしましたね。たぶんどこかの着氷で…。

アナ:さて、技術点は61.88.構成点も一気に上がります。58.52.ですからトータルは120.40.これをすべてメモしておかないと…

解説:とくに技術点をしっかりメモしておいて下さい。

アナ:はい。

解説:61.88.もしアサダが65〜66点くらいだったら、俗に言う「屈服した」ということになりますね。

アナ:「屈服した」というのはあまり俗っぽくありませんよ。

Yu-Na KIM


Yu-Na Kim 2008 World FS

アナ:さて、今度は韓国のユナ・キムの演技へと続きます。ショート・プログラムでは5位。待ち遠しいですね。今シーズン無敗です。三戦三勝。昨年の世界選手権でも堂々たる演技を見せました。シビアな優勝候補の一人ですが…。「ミス・サイゴン」のサントラで滑ります。

解説:(演技開始)3アクセルを試みなかったという事実が、彼女がタイトルを争っているわけではないということを証明していますね。

アナ:(3-2-2の後で)それにしてもなんと易々と跳ぶのでしょうか。非常に幅のあるジャンプです。

(演技終了後)韓国のユナ・キム。やはり素晴らしいプログラムです。3ルッツは不発でしたけれど…。

解説:えーと、カロリーナ・コスナーの技術点が60点くらいでしたっけ。ここが大事です。61.…

アナ:61.88です。

解説:88、と。ですから、ここで勝負が決まりますよ。ほとんど断言してしまいます。構成面では、めぼしいところはなかったと思いますから。

アナ:ありませんでした。

解説:カロリーナ・コスナーが構成点では大きなリードを守るでしょうから、ここでユナ・キムがカロリーナ・コスナーを脅かすには、彼女の技術点が少なくとも…「少なくとも」ですよ…67点くらいないとだめでしょう。

アナ:ショートではカロリーナ・コスナーとユナ・キムの間に4点差がありました。

解説:4点差、という事は、差として3点を足すと7.ということは、カロリーナ・コスナーを脅かすには、彼女は技術点で少なくとも68点必要になります。

アナ:たくさん必要ですね…。ここで彼女のジャンプがスローで映っていますが。コンビネーション・ジャンプです。

解説:出だしのコンビネーションは美しかったですね。3フリップ-3トゥループです。非常に安定しています。しっかりコントロールされています。ここは、ショートの時に悩みの種だった3ルッツですね。覚えているでしょうか。これも完璧にコントロールされています。それに2トゥループ、さらに2ループを続けています。ですからこれが3-2-2のジャンプですね。ブライアン・オーサーが凝視しています。彼自身がこのプログラムを滑っているかのようにのめりこんでいますね。生徒と一緒にジャンプしています。わかります。わかります。文句を言うつもりはありません。彼のそういう気持ちは実に良くわかります。

これは水平方向にジャンプするスピンです。ひねりの入った非常に美しいポジション。一方、シット・ポジションの方は少しぎこちないですね。そしてとりわけ、ステップ・シークエンスとスパイラルが、カロリーナ・コスナーがやったものよりも明らかに遥かに劣っていました。おさらいすると、私の意見では、技術点では、当然ユナ・キムがカロリーナ・コスナーをリードするでしょう。しかし構成点のおかげで、カロリーナ・コスナーがユナ・キムに対して大きなリードを守るはずです。

アナ:さて、得点が出ます。その前に、ミキ・アンドーに関する小さな情報があります。先ほど演技開始直後に演技を止めて棄権しましたが、筋肉に痛みがあるとのことです。とにかく、そう発表されています。さて、得点は…64.82.えーと…足りませんね。

解説:勝つには明らかに低すぎる点数です。

アナ:あ、待ってください。58.56…カロリーナは58.52でした…ちょっと信じられませんね。ですから…

解説:フリーのですか?

アナ:はい。フリーのです。…123…

解説:フリーって言いましたよね?

アナ:フリー・プログラムでトップに立ちます。

解説:フリーでトップ、総合ではカロリーナがトップのまま、ですね?

アナ:4点差がありましたから、彼女は総合得点では後ろになるはずです。

解説:当然です。それに、構成点で良い点が出すぎですよ、ユナ・キムは。

アナ:はい。

解説:やりすぎはいけません!

浅田真央


Mao Asada World figure skating Champ.ship 2008 FS

アナ:さて、この選手によって、タイトルが今まさに争われます。マオ・アサダ。勝つために何をしなければならないか、彼女はわかっています。

解説:彼女の場合は、二回3-3のコンビネーション、そして3アクセルですね。彼女はわかっていますよ。跳ぶ気満々です…。世界チャンピオンになりたいなら、3アクセルを成功させなければならないことをよーくわかっています。

アナ:はい。出だしの3アクセル…ですから、すぐに見られますね。彼女はフレデリック・ショパンの幻想即興曲で滑ります。さあ、見てみましょう。

解説:(演技開始)…ここです…(転倒)

解説+アナ:ああああっ!!

解説:ああ、ああ、ああ…これはむごい。…今夜は決定的に、悪い驚きが続くようです。…想像してもご覧なさい、プログラム開始直後でこんな転倒をやってしまっては…抜重が早すぎました…(3フリップ-3トゥループ)見事に立て直します。

(中盤の3-3の前で)次のジャンプにタイトルがかかっていますよ。

アナ:(ステップ終了後)なんというステップでしょうか…。

解説:(2アクセル成功)マオ・アサダが世界チャンピオンです!…そして、ビールマン・スピンでタイトルを決定的にします!

(演技終了後)ステップがレベル4、スピンがレベル4。失敗は、出だしのあの3アクセル踏み切りの、ありえないような転倒だけ…。

アナ:なんという意志の強さでしょう!

解説:しかし一方で、あの失敗があったからこそ、完全に力を出し切れたのかもしれないですね。この小さな女の子が、…私達は彼女がどえらい演技をするのを見て来ました。小さいミスや、大きいミスがある場合ですら、成功が積み重なって、彼女にならなんでも可能だということを見て来ました。ともかく、私の考えでは、今夜の偉大な、偉大な、偉大なスケーターは彼女です。それははっきりしています。絶対に彼女が世界チャンピオンになるでしょう。それ以外の結末はありえないと思います。

アナ:それに、彼女にとってなんというシーズンでしょうか。マオ・アサダは四大陸選手権とボンパール杯で優勝し、グランプリ・ファイナルでは2位。スケート・カナダも優勝。昨年の世界選手権は準優勝ですよ。それに、ものすごい意志の力です。なんといっても、出だしであんな風に転んで、そのあと全ての要素を成功させたんですから。

解説:彼女にはそれほど技術的に飛び抜けているんですよ、ジェラルディン。3年前から飛び抜けていました。

アナ:しかも17歳。

解説:ええ、ええ。初めて彼女を見たのはカナダで行われた2007年のジュニア世界選手権でしたが、あの時既に驚嘆させられるようなまばゆさでした。

アナ:はい。(スロー映像)あ、先程の踏み切りです。

解説:見て下さい。ああ、これは、肩の部分はもう開いて跳ぼうとしているのに、残念ながら足がついていっていません。もう一度良く見て…あ、これはコンビネーション・ジャンプのところですね。3フリップ-3トゥループ。それから、彼女はフルッツもやりました。3フルッツ-3ループ。もう何の事だか意味がわかりますよね。イン・エッジ、不正エッジで踏み切るルッツの事です。ジャルゴンで「エッジにやられる」というのは、不正エッジでダウングレードされることです。

アナ:でも、構成点のほうはどうなんでしょう?

解説:とてもいいですよ。レベル4のステップ、レベル4のスピン。カロリーナ・コスナーが優っているのは音楽性の解釈の部分だけです。五つある構成要素ののたった一つだけですよ!

アナ:じゃあ、3アクセルの転倒の部分しか減点はないと。ふう…。

解説:3アクセルが入れば、五輪金メダリストの出来上がりですよ。

アナ:…それなら、2アクセルにしておくべきではなかったですか?

解説:そうじゃありません。

アナ:そうじゃありませんか?

解説:五輪金メダリストになりたいならね。

アナ:私は今夜のことを話しているんですけれど。

解説:今夜は…まあ、どちらでもいいじゃないですか。今から五輪タイトルの準備をしているんですよ。ですから、今夜…たとえフリーで2位になったとしても、3アクセルを試みたのはとてもいいことだと思いますよ。

アナ:さて、カロリーナ・コスナーの得点は61.88でしたが…

解説:じゃあ、私は65点くらいと予想します。…あ、それほど高くないですね。

アナ:61.89です。0.0いくつの差ですよ! …と言うことは、もし…60…いえ、彼女が優勝のはずです。構成点で高得点が出ましたから。フリー前の差はわずか0.18でしたが。…なんだか、変な点の出方ではないですか?

解説:奇妙ですよ。そう思いますよね?

アナ:はい。1点減点が一つ。差し引きすると…

解説:技術的に見れば…

アナ:あ、待って、待ってください。121.46.はい、はい、彼女が優勝です、勿論です。カロリーナ・コスナーが120.46でしたから。はい。マオ・アサダが、ここヨーテボリでの、フィギュアスケート世界チャンピオンです。昨年準優勝でしたが、今夜カロリーナ・コスナーとユナ・キムを抑えて優勝です。…この得点は…リスクが考慮されていないという事なんでしょうか?

解説:そうじゃありません。彼女がフリーで2位になったのは、フリーで1位になったのがユナ・キムだからです。

アナ:はい。

解説:たとえ最終的な順位が妥当な正しいものだとしても、今日のこのフリーが採点されたそのやり方は、私にはおかしなものに思われますね。それ以上は言いませんけれど。

中野友加里


中野友加里(Yukari Nakano) 世界選手権 2008 フリー

アナ:(すでに演技が始まっている)さて、続いてユカリ・ナカノです。

解説:彼女も3アクセルを跳びますよ。

アナ:ショートの後で3位です。

解説:出だしにやるはずですが…マオ・アサダと同じように…はい。そして成功しました!

アナ:はい!!

解説:(最後のスピンで)これはスタンディング・オベーションですよ…! フランス語で言えば「立ち上がって拍手」…

アナ:素晴らしいプログラムです、ユカリ・ナカノ。とにかく…

解説:ほら。会場全体が立ち上がります…

アナ:まさに。

解説:皆立ち上がります…。

アナ:それに、日本国旗もかなりあります。…ええと…ジャンプはアサダよりも良かったですよね。それからステップは見直せるでしょうが、…レベル4ですか? 今度は、ユカリ・ナカノはカロリーナ・コスナーを脅かせるんじゃないですか? どんな感じになるんでしょうか?

解説:説明しましょう。確かに3アクセルはありました。しかし、技術的に細かく見ていくと、…つまり、テクニックのアナリストの視点で見て、ジャンプの質を決定する規範に照らし合わせて…という意味ですけれども、彼女のジャンプは確かに手堅い。しかし美しくない。フリー・レッグを縮めて跳んでいるんです。左脚をきつく交叉しています。そのため、骨盤から上半身の回転が不完全なのです。フリー・レッグを交叉させる事によってのみ、回転しているジャンプなのです。それがはっきりとわかるスロー映像が いくつか見られると思います。非常に目立つものですから。

しかし、たとえそういう欠点があろうとも…なんという素晴らしい演技でしょうか!なんというどえらいパフォーマンスでしょう!確かにこの選手には、プレッシャーはありませんでした。表彰台圏内とは予想されていなかったからです。(スロー映像)見てください。3アクセルです。1、2、3…と半分。そしてすでに、ここで回転不足です。ですからダウングレードされるでしょう。これが第一点。第二点は、よく見て下さい。右膝の上に、左脚が交叉されているジャンプです。ルッツではものすごく目立ちます。たとえエッジが正しくても、これほど脚の位置が高いと…こういうのを「ネクタイ・ジャンプ」と呼んでいるんですが。フリーレッグの位置が異様に高いジャンプです。技術的な観点から見て、これはよろしくない。回転が足りていても、よろしくない。

ですから、私は技術点でもそれほど高い点は出ないと思うのです。ともかく、もし私がジャッジだったら、彼女にはマオ・アサダよりもはるかに低い点をつけると思います。スピンは、良い。すべてレベル3です。しかしスピンでも、彼女のはマオ・アサダやカロリーナ・コスナーほどの上質のポジションではありません。一方ステップはレベル2で、二人の選手、1位のマオ・アサダと2位のカロリーナ・コスナーに比べて大きく劣っています。

率直に言って、ジェラルディン、今順位が変動するとは思いませんね。しかし…

アナ:ユナ・キムに対してはどうですか?

解説:そこです。もしかしたらナカノがユナ・キムを脅かす事ができるかもしれません。しかし、確信はもてません。というのは、忘れないで下さい。ユナ・キムはフリーで1位なんです。私の言いたいことがわかりますか?

アナ:はい。はい。

解説:総合順位に関して、もしフリーでナカノがユナ・キムに対して優位に立てれば、その時は彼女は3位になることができるということです。


おまけ:中野友加里、エキシビション

解説=セドリック・モノー、実況アナウンサー=パスカル・ブラットナー@TSR。

アナ:私達は彼女が表彰台に上がると思っていたんですが、最終的に4位でした。…彼女のジャンプのテクニックはとても特殊で、まさにそのために、表彰台に上れなくなってしまったのですが…。

解説:その通りです。彼女のプログラムは、8つのトリプル・ジャンプが入った、技術的には本当にものすごく難しいものでした。しかし残念な事に、あのテクニックのせいで、いくつかのジャンプが不可と判定され、ダウングレードされてしまったんですね。そのせいで表彰台を逃がしてしまいました…。とても残念な事です。というのも、現役選手の中で、彼女はもっともエレガントな選手の一人だと思うし、それにまったく非の打ちどころの無い素晴らしいスケーティング、「滑り」を持っている選手だからです。さらに表現力の点では…本物の「氷上のバレリーナ」ですよ。僕は彼女のファンですね。22歳…本当に成熟したスケートを見せてくれます。


みにまるは来週一杯いません。続きは帰ってきてからね。

≪ょうむくむくがみにまるは | PAGETOP▲ | 2008年世界選手権:女子シングル SP≫
あいあいさん
とてもとても興味深く読ませていただきました。
本当にありがとうございます!
真央に対する絶賛ぶりは凄いものがありますね。
ここまでズバズバいってくれると気持ちがいいです。
日本の放送ではありえませんが・・
みにまるさんの語学力はすばらしいですね〜
これからもよろしくお願いします!!

( ・(ェ)・ )さん
とても分かりやすかったです。
日本の解説とは雲泥の差ですね。。。

フリーの構成点の出方に疑問を持っていることも分かりましたし。

ありがとうございました!

しらこさん
ありがとうございました。(翻訳)
来年、またお邪魔しますね!


うにさん
こんにちは。とても興味深い解説訳をありがとうございます。
私は今まで、実況解説とは知識や情報を集めて持っている人たちだと思っていました。
安藤選手については知らなかったからこういう解説になったのはわかるとしても、その後はどうなったのでしょうか。「明日でてくるような説明は、必然的に偽の説明」というのはどういう意味でしょうか。
日本ではフリー試合前の時点で、コーチが欠席届けを出しに行く用意をしているという情報が広まっていました。それはここが日本だからなのでしょう。しかし事前の情報さえ把握出来なかった彼らは、これからどこで、しかも明日(?)、どうやって情報を得るというのでしょうか。そしてそれは「嘘」であるという根拠はどこに存在するのでしょうか。
何でも思った事を適当にズバズバ言えば、無責任な人間には気持ちがいいのかもしれませんが、「知らなかったから」という無知と怠慢をさらけ出したまま放置されそれが許されるなら、この解説は実に怠惰でお気楽な仕事という印象を受けます。

こんこんさん
はじめまして。フィギュア好きで以前から何回か覗かせていただいていました。ありがとうございます。
この解説者はGoldenSkateAwardsで荒川さんのことをこれでもかとベタ褒めしていた人ですよね?今回中野さんのファン発言もあり、真央ちゃんのこともすごく褒めている。日本贔屓な方なんでしょうか(笑)
安藤さんの怪我の情報を事前に知っていたらどんな解説になっていたのか…聞きたかったです。

通りすがりさん
いやぁ、面白いですね。
真央ちゃんが海外でも絶賛される一方、中野はああいう風に見られているんですか。
観客の支持は思いっきり受けていましたが、専門家の目はやはり、あのジャンプに対してかなり厳しいのですね。
また、ステップやスピンについてもなるほど・・と思いました。
いやいや〜、面白い。

りんどうさん
物凄く面白いです。翻訳して下さって本っ当にありがとうございました。とてもとても嬉しいです・・・。
日本の解説と段違いですね、ペリシエ爺さん(笑)。点数出る前にほぼ的確な点数を言ってのけますし、それが見事に当たっている!フルッツの事もちゃんと言及するし(日本の解説者は浅田選手の3ルッツを見て「成功しました」って言っちゃってますよ)。日本とはスケートの歴史が違うって事でしょうねえ。はあ・・・。

まゆさん
はじめまして。
いつも興味深く読ませて頂いています。
英ユーロスポーツの解説はいつも選手への尊敬と愛情が感じられて大好きなんですが、フランスはさすがフランス!という感じでした(笑)
ところで、真央ちゃんの演技についてですが、ルッツ(フルッツ)は単独1回しか飛んでいません。
後半のコンビは3フリップ3ループです(結果的には回転不足としてダウングレードされてしまいましたが)。
あれが3フルッツ3ループに見えたのなら、ペリシエさん解説として大丈夫なんでしょうか?

お時間ありましたら、男子のほうもよろしくお願いします。
これからも楽しみに読ませて頂きます。



エフさん
毎年楽しみにしています。
今年は中野選手がほめられていたので、
うれしく思いました。
外国語は、全くわかりませんから解説がありがたく、本当に楽しんでいます。さらに動画も貼り付けてくださりありがとうございます。それで もしよろしければ、いまや知らない人とは思えない
ペリシエさんが実況している動画が貼ってあると
より楽しめるのかなぁと思います。
このブログを拝見して、同じ競技を海外の解説で視聴すると、面白いことに気がつきました。(もっぱら英語ですが)日本の特に民放のアナウンサーは”魂のリレー”だとか意味不明なことを言うので困惑してしまいます。今大会に限ってはキム選手の出来が最高ではなかったわりにGOEが高い評価なので、仕方ないことと思っていましたが、「やりすぎはいけない」という言葉は励みになりました。

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