新橋亭が入る予定の再開発予定地。壁に覆われた周辺をサラリーマンらが行き交う=東京都港区、益満写す
着工時期を過ぎても解体されないまま残る旧公務員住宅=千葉県船橋市、本社ヘリから
景気の悪化に伴い、工事が中断したビルやマンションが各地で増えている。建設を心待ちにしている人たちに影響が出ているほか、治安面の不安を訴える声も。不動産市況の急降下と金融危機という二重苦が、街に影を落としている。
むき出しになった鉄骨。散乱するコンクリートの塊。東京・JR新橋駅近く、約1100平方メートルの再開発事業の解体工事の現場から、工事音はほとんど聞かれなかった。
その一角にあった3階建てのビルには、1946年創業の老舗(しにせ)中華料理店「新橋(しんきょう)亭」の本店が入っていた。作家の谷崎潤一郎や政財界の大物がひいきにしていたことで知られる。老朽化のため、不動産開発会社の「アーバンコーポレイション」(広島市)が、11年に11階建てのビルに建て替えて、新橋亭は他のテナントと一緒に入る予定だった。
ところが、アーバンが今年8月、約2558億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請し、経営破綻(はたん)。解体工事が中断してしまった。「ここは華僑である創業者の血と汗が流れている場所です。(悪い)夢を見ているようだ」。新橋亭の4代目社長の呉祥慶さん(40)は話す。
アーバンの破綻は、同社の再開発物件を買う見込みだった投資ファンドが資金不足になったのに加え、国内の金融機関も融資に慎重になったためだ。米国のサブプライムローン問題が影響した。
解体作業は今月、再開されたが、なかなか進まない。アーバンの広報担当者は「更地にした後、予定通りビルを建てるかどうかは、経営再建を支援するスポンサー企業の意向で決まるので、今は明言できない」。