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【主張】日銀利下げ 景気の下支えへ実効性を
日銀が今年10月に続いて、政策金利を現行の0・3%から0・1%前後へ引き下げた。
先に米国がゼロ金利政策に移行して日米の政策金利が逆転し、円高ドル安が進んでいる。円高がさらに進めば、輸出企業の収益悪化をより深刻にし、景気悪化に拍車が掛かる。
日銀がほとんど余地のない中で利下げを決めた一番の狙いは円高抑止であろう。利下げの判断は妥当であり、景気を下支えする効果も期待したい。
問題は、日銀の金融緩和策をどう浸透させるかである。
政府は信用保証枠を拡充するなど中小企業支援策を打ち出しているが、なかなか効果があがらない。サブプライム問題が表面化した昨年夏以来、金融機関の融資姿勢が慎重になったからだ。
日銀が大量に資金を供給しても、金融機関のところでパイプが詰まっていれば、企業まで円滑にそれが流れない。中小企業の多くが貸し渋りや貸しはがしを訴えているのはその表れだ。
金融庁はそうした状況を是正するため、先月、金融機関が融資先に対して返済期間の延長や金利の減免をしても、その融資先企業の再建計画が明確なら、貸し倒れ引当金を積まなくてもいいとする条件緩和措置を発表した。しかし、その効果が表れておらず、さらに周知徹底する必要がある。
日銀が今回、企業が短期資金を調達するために発行するコマーシャルペーパー(CP)を買い取るのは、非伝統的手法の導入といえる。日銀はこれまで、民間企業の信用リスクを直接引き受けることになるとして慎重だった。
政府が政策投資銀行を通じてCP買いを決めたため、異例の措置として連携したのだろう。事実上の量的緩和策である。
日銀は平成13年から5年間、金融機関が日銀に開設している当座預金を通じて資金を大量供給する手法で量的緩和策を実施したことがある。
しかし、その効果をめぐっては賛否両論があっていまも評価が定まっていない。CP買い取りが実質的な量的緩和として効果をあげるなら、日銀にとっても有用な政策手段となるだろう。
日銀も米国同様、これで利下げ余地がなくなった。当面は今回の利下げ効果を見なければならないが、さらなる非伝統的手法の準備もしておく必要があろう。