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NIKKEI NET

社説1 政府・日銀はカネ詰まり阻止へ全力を(12/20)

 日銀が追加的な利下げに動いた。19日の金融政策決定会合で、無担保翌日物金利の誘導目標を年0.3%から0.1%に引き下げることを決めた。企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)の買い取りも決め、目詰まり感が強まっている企業金融を下支えする。

 米国発の金融危機をきっかけに日本経済は過去にないほどのスピードで下降しており、金融環境も悪化している。これに対応して日銀が追加的な金融緩和に踏み切ったのは当然である。カネ詰まりにより、経済が一段と押し下げられることのないよう、政府・日銀は万全の措置を取っていくべきだ。

 利下げは誘導目標を0.5%から0.2%引き下げた10月末以来2カ月ぶり。CP買い取りに加え、長期国債の買い入れ額を月2000億円増やすことも決めた。結果的に長期金利の低下を促し、景気の下支えにつながる可能性がある。

 日銀が利下げに加えて、CP買い取りという異例の措置を取ったのは金融の引き締まり感が急速に強まっているためだ。CPや社債の発行金利上昇を背景に大企業が銀行借り入れにシフトしており、中小企業がおカネを借りにくくなっている。日銀がCPを買い取ることで、銀行の貸し出し余力が高まり、企業の資金繰り改善につながるのを狙っている。

 日銀は今後も経済や金融の動向をにらみながら、景気の落ち込み防止に積極的な役割を果たすべきだ。利下げが限界に来つつあるのは確かだが、一段と強まる恐れがあるカネ詰まりの緩和や、長期金利の低下につながるような政策対応は可能だ。

 もちろん、日銀がやみくもにリスクを取ればいいわけではない。中央銀行の資産内容が悪化すれば金融政策や通貨への信認が揺らぎかねない。日銀がCPなど信用リスクのある資産を購入する場合は、損失保証など政府の後ろ盾も必要である。

 政府も金融環境の悪化を防ぐための措置を強化する必要がある。中小企業の命綱になりつつある信用保証枠の拡充や政府系金融機関の危機対応融資の活用が求められる。先に成立した金融機能強化法を活用して、中小金融機関に対する資本注入も積極的に検討すべきだ。

 経営内容が悪く、もともと生き残れないような企業まで助ける金融支援は望ましくない。ただ、暴風雨のような経済・金融環境の悪化で、普通の企業でも資金繰り倒産に追い込まれかねない状況が生まれているのが実情だ。政府や日銀はこうした被害を最小限にとどめる責務がある。

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