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社説:日銀利下げ 大不況回避へ官民で総力を

 日銀がまた金利を下げた。企業の資金繰り支援にも直接乗り出す。効果の大きさはまだ分からないが、米国が史上初となるゼロ金利政策を採用し、他の国の中央銀行も次々と大幅な利下げを実施する中、日銀も有効な手だてを求めて踏み込んだ。

 景気への下支えとして、公的な支援が今、特に求められているのは企業の資金繰り面である。日銀が先に発表した短観でも、中小企業に加え大企業の資金調達が厳しくなっている実態が浮き彫りになっていた。

 これまで社債や、コマーシャルペーパー(CP)と呼ばれる無担保の約束手形を発行し資金を調達できた大企業が、金融危機のあおりで銀行借り入れに頼らざるを得なくなっている。その結果、従来は銀行から借りられた企業がはじき出され、倒産の危機に直面している例も少なくない。

 日銀が銀行を介さずに企業から直接CPを買い入れることにしたのは、こうした資金繰りの悪化を緩和させるねらいがある。

 もちろん民間の銀行は経営の健全性を保つ必要がある。だが、貸し出しで極端に慎重になると、企業の倒産が増加し、景気全体を一段と冷え込ませ、結局は、自らの不良債権も増やすことになる。銀行には、日銀の措置に呼応する形で、企業の資金需要を積極的に支えるよう求めたい。

 一方、日銀の政策金利は、10月末の利下げで年0・3%の低水準に下がっていたことから、さらに0・2%引き下げても、それほど大きな景気刺激効果は期待できないだろう。

 それでも、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策に踏み切ったことで、日銀も動かざるを得なかった。約16年ぶりに日米の金利が逆転し、わずかでも金利の高い円を買ってドルを売る動きが加速したためだ。放置すれば、円高を容認したと受け取られ、一層、円が買われる可能性があった。

 ただ日銀は、当面ゼロ金利にはしない姿勢である。短期金融市場が事実上崩壊するなど、過去のゼロ金利で弊害を経験したためだ。金融政策を維持するうえで最低限必要な条件を守ったといえる。

 次は政府や民間銀行が踏み出す番だ。09年度予算の財務省原案がきょう内示される。ようやく本格的な景気刺激に向けて動き出す形だが、迅速で効果の高い支援を実行できるよう全力を挙げてもらいたい。

 世界的に景気悪化が深刻化する中、日本もいや応なくその渦に巻き込まれる。しかし、過剰に自信を失い、投資、貸し出し、雇用、消費を一斉に絞り込めば、景気はより一層深く沈む。心理面から無用に傷を深くしてはいけない。公的な支援は当然だが、民間の金融機関や企業も、マイナス思考に陥らないことが肝心である。

毎日新聞 2008年12月20日 東京朝刊

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