映画「動物農場」では人間を追放後、豚が農場の権力を握る=©RD DR 1954(renewed 1982)
試写会後、互いの「仕事観」を語り合う学生たち=東京都新宿区の早稲田大学
半世紀以上前にイギリスで制作された長編アニメーション映画「動物農場」が20日、日本で初公開される。重労働に耐え、人間に搾取されてきた農場の動物たちが反乱を起こすストーリーだ。試写会に参加した大学生らは、内定取り消し、雇用契約打ち切りなど今の苦しい日々と映画を重ねた。
「動物農場」はイギリスの作家ジョージ・オーウェルが1945年に発表した同名小説が原作で、54年に映画化された。労働者の国であったはずの旧ソ連で権力が腐敗し、「粛清」の名のもと反抗分子が次々と処刑されたことを、動物に仮託して批判した作品と言われる。
配給するのは三鷹の森ジブリ美術館(東京都)。スタジオジブリの宮崎駿監督が40年余り前、長編アニメ映画の手本としてこの作品を知ったのが縁だ。
初公開に先立ち、早稲田大(東京都新宿区)で9日、就職活動を控えた早大や日本女子大の学生約20人を集め、試写会と座談会が開かれた。「働き者の馬に同情した。けがをして働けなくなったとたん、皮革工場に売られ、殺されるなんて可哀想すぎる」「働けなくなったら殺される動物は、会社に切り捨てられる契約社員と同じだ」「就職が心配になった」といった声が相次いだ。
映画では、太った豚が人間に代わって反乱後の農場を支配し、ほかの動物を酷使する。怒りが頂点に達した動物たちは再び蜂起する。
原作も読んだという女子学生は「今の社会で問題をどう解決するか、自分の頭で考えるしかない」。ジブリ美術館の中島清文館長は「働き者の動物を切り捨てるのが今の社会。若者たちは世間に出て、働くことの夢と現実とのギャップを知る」と話す。
「動物農場」は20日から、東京・渋谷「シネマ・アンジェリカ」、立川「シネマシティ」などで公開される。(寺下真理加)