平成20年12月19日
公立図書館のBL本(1)
過激な性描写に驚き、抗議 3年越しで動いた堺市
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堺市立図書館に所蔵されているBL本。表紙には二人の男性が描かれ、中の文章やイラストは過激なものが多い
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大阪・堺市に住む梅村秀樹さんは、地元の図書館を愛用して十数年になる。学校の講師をする関係で、よく図書館を利用するという。歴史小説などを読むのも趣味の一つだ。
今から三年前のこと。小説のコーナーで梅村さんが何気なく本を手にして驚いた。
表紙に、裸の男性同士がキスをしているイラストが目に飛び込んできた。裏表紙や中のイラストを見て目を剥いた。男性の下半身に顔をうずめる構図など、もっと過激な男性同士の性行為のものがあったからだ。
それが、少女向けに男性同性愛を描いたBL本だった。BLとは、「ボーイズラブ」の略語だ。書棚を注意深く見ていくと、BL本が数十冊、いやもっと多くの数が、書棚を占めているではないか。
――何で、子供からお年寄りまでが利用する公立の図書館に、こんな本をわざわざ購入して並べる必要があるのか!?
市のホームページを通じて、梅村さんは図書館に改善を申し入れた。だが、彼の要望は黙殺され、図書館は動かなかった。
三年前のこの出来事を、梅村さんが強く後悔したのは今年の夏だった。親戚の娘を伴い、近くの図書館を訪れた時のこと。偶然にも、その娘がBL本を手に取り、中を開いて驚き、梅村さんに「この本はなあに?」と聞いてきたからだ。彼の顔がこわばった。
BL本をこのまま放置しておくわけにはいかない。そう考えた梅村さんは根気強く図書館側に、改善を申し入れた。「おたくの図書館ではこんなポルノ小説を子供に貸し出して何とも思わないのか! わが子に『勉強しに行っておいで』と言って、子供がこんな本を図書館で読んでいたら、あんたが親ならどう思うんですか?」
三年前と同様、黙殺されてはたまらない、と考えた彼は、地元の市会議員に実情を話した。
梅村さんの抗議と、市会議員が図書館サイドに問い合わせをしたタイミングが合って、七月末に堺市のホームページで梅村さんの意見が載った。
「このような破廉恥な表紙の本を一般図書と同じ書棚に並べて大量開架するとは、セクハラ以外のなにものでもなく、子どもに対する影響を心配する親のことをまったく考えていないという他ありません。
また、限られた予算の中において、図書館としては他に買い揃えるべき有益な本が他にもたくさんあります。『表現の自由』ということもありますが、だからといって文化・教養の場である図書館にこのような本を置くこと、子どもに悪影響をを与えかねない本を市民の血税により大量購入し、公共の場である図書館に開架することを正当化できるのでしょうか」
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堺市図書館で起きたBL本騒動。果たして、教育機関である公共の図書館にBL本は適切かどうか、を追跡した。(鴨野 守)