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民主党と対テロ法 参院委では否決したが '08/1/11

 「採決・否決」から「継続審議」、再び「採決・否決」へ。越年国会の最重要法案とされる政府の新テロ対策特別措置法案(給油新法案)をめぐる対応で、民主党の迷走ぶりが鮮明になった。

 給油新法案は結局、きのうの参院外交防衛委員会で採決され、民主党など野党の反対多数で否決された。きょうの参院本会議でも否決されるとみられるが、与党側は直ちに衆院本会議を開き、三分の二以上の賛成多数で再可決して同法案の成立を目指す。

 昨年十一月一日から中断している海上自衛隊のインド洋での給油活動再開を認めるのかどうか。海外への派兵を禁じた憲法九条にも抵触しかねないとの批判も根強い法案の審議は、大詰めを迎える。

 各種の世論調査でも、給油活動再開の是非については賛否が割れている。活動再開をしなかったときの影響を含め、国会であらゆる事態を想定した審議を尽くす必要があるのは言うまでもない。採決に至る過程も大切だ。

 しかし、これまでの経緯を見る限り、民主党の対応には疑問符を付けざるを得ない。政府・与党案に代わる法案を出したにもかかわらず、十分な審議を尽くさないまま、いったんは時間切れによる双方の法案の継続審議を模索した。五十七年ぶりの衆院再可決を想定。「審議中なのに強行採決した」として、与党側の横暴ぶりを際立たせる作戦だったようだ。

 「継続審議」とした党の幹部協議が覆ったのは、共産、社民両党の強い反対に遭ったためだ。理解を得られると早合点した独断専行の結果である。前防衛次官汚職事件に絡んで、財務相の証人喚問を強硬に求めて腰砕けになった見通しの甘さと二重写しになる失態である。

 給油新法案では、国会の承認規定がなくなる。文民統制が後退する恐れは本当にないのか。一方の民主党案には、国連決議を前提にした上で自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法制定への道筋も示されている。

 それぞれに問題を抱える両法案の審議が深まらなかった原因はどこにあるのか。政府・与党は国会の会期を二度も延長して新法の成立にこだわった。政府案の問題点をただす役割を含め、野党第一党の民主党に寄せられた期待は少なくなかったはずだ。姑息(こそく)な策をろうすべきではない。正攻法で骨太な論戦を挑む覚悟がなければ、政権奪取などおぼつかない。




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