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会期末まで残りわずかになった国会で、忘れてはならない法案がまだ衆院で足踏みしている。閣僚や与野党幹部らの事務所費問題に端を発した政治資金規正法の改正案だ。やる気が本当にあるのか、疑わざるを得ない。
実質審議が衆院の政治倫理・公選法改正特別委員会で始まったのは先週金曜日。ところが、与党側は審議二日目のきのう、同日中に採決を行いたいと提案した。野党との主張の隔たりを埋めようともせずに、採決を持ち出すのは乱暴すぎる。
野党側に「審議不十分」と拒否され、与党が採決を先送りにしたのは当然だ。それでなくても相次ぐ強行採決に国民の批判が強まっている。これ以上、強引な国会運営をすると、参院で渋滞状態になっている他の重要法案の採決日程に支障が出かねない、との懸念も与党側にあったのだろう。
一連の「政治とカネ」の問題で浮上したのは、表に出しにくい支出を光熱水費などに紛れ込ませ、裏金を捻出(ねんしゅつ)したのではないかとの疑惑である。家賃無料の議員会館に資金管理団体を置きながら、多額の事務所費や光熱水費を計上していた政治家が続々明るみに出て、国民はうんざりしている。松岡利勝前農相が自殺し、一時期、この問題が宙に浮いてしまったのも残念だ。
何としても今国会で決着をつけなければならない。政治資金の透明性を高め、新たな疑惑を生じさせないように対策を打つのは、政治家の責務である。
与党の改正案と民主党の修正案は(1)政治資金収支報告書への領収書の添付(2)不動産の取得禁止―では一致している。だが、領収書が「一件五万円以上」か「一万円超」か、対象は資金管理団体だけか、すべての政治団体かなど、違いも多い。株などの有価証券の取得を禁止するのかも焦点だ。
与野党の修正協議を急ぎ、隔たりを埋めるべきだ。すべての政党が加わり、一致点を探らなければ政治不信はぬぐえまい。その際のポイントは、領収書の小分けや政治団体への付け替えなどの「抜け道」をいかにふさぐかだ。
共同通信社の世論調査では、有権者の七割以上が今国会での改正を求めた。衆院の後、参院での審議時間を考えると残された日数は少ないが、会期を延長してでも決着を図るべきだ。改正できずに参院選で責任のなすり合いをする愚は避けたい。
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