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 安倍晋三首相にとって厳しい結果が出た。共同通信社の世論調査である。内閣の支持率が35・8%で昨年九月の発足以来、最低となった。参院選の投票先は、民主党が初めて自民党を超えた▲「政治とカネ」で追及されながら、首相がかばい続けた松岡利勝前農相が自殺した。五千万件もの保険料納付記録が宙に浮く年金問題は、とても解決しそうにない。不信感の広がりは当然といえよう▲注目されるのが内閣不支持の理由である。「首相に指導力がない」が最も多く、31・4%に達した。三月の参院予算委員会を思い出す。「小泉氏は劇薬だが私は漢方薬」と例えた。じわりとした効果を強調し、強引さの目立った前任者と異なる手法を打ち出そうとする意欲がうかがえた▲しかし言葉とは裏腹に、最近は数の力で押しまくる姿勢が目立つ。憲法改正の手続きを定める国民投票法に続き、米軍再編推進法を成立させた。極めつきが年金に関する二法案をめぐる強行採決などの混乱である。とても指導力を発揮しているとは言えまい▲首相は東京大気汚染訴訟の和解へ、六十億円を拠出する考えを打ち出した。自民党が参院選の公約に、被爆者支援策の充実を盛り込む方針を固めた。いずれも前進だが、唐突に出た背景には票につなげようとのもくろみが見え隠れする▲国民をどこへ導こうとしているのか、はっきりしないのが気になる。じっくり説明責任を果たしてこそ、支持率回復は始まる。 
            
            
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