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年金新対応策 実効性は疑問だらけだ '07/5/31

 いったいどの程度の効果があるのか。年金記録の不備を救済するため、政府・与党は新たな対応策と年金時効撤廃特例法案を出してきた。法案は社会保険庁改革関連法案と併せ、きょうの衆院通過を目指す方針である。

 誰のものかわからずに放置されている記録は約五千万件。政府は、一年かけて徹底的に照合▽二十四時間対応の電話相談窓口設置▽記録のない場合は第三者機関で審査―などを示した。さらに与党は、社保庁のミスなどで「もらい損ない」があった場合、時効五年を撤廃して国が全額を補償する法案を提出した。

 強制的に徴収した保険料の記録を保管する義務は社保庁にある。その意味で時効撤廃は当然だ。だが公表した対応策が本当にできるのか、どのぐらいの人が救済されるのか、大きな疑問がある。

 五千万件には、十年前の基礎年金番号導入の際に確認できなかった「懸案」が多く含まれ、難航は必至だ。照合、通知、電話や窓口での応対…。膨大な作業を一年でやりきるとする根拠は何か。当の社保庁は「照合のシステム構築に二年かかる」と説明している。

 記録のないとき、保険料支払いを証明する責任は社保庁と加入者のどちらにあるか。国民が最も怒っているこの点について、安倍晋三首相のきのうの党首討論での説明は食い足りなかった。

 弁護士や税理士による第三者が「国民の気持ちに立って審査し、きちっと確証が取れれば…」。領収書に代わる証拠が何かは示されないまま。加入者が証明できなければ泣き寝入りしかない現状と、どこが違うのかはっきりしない。

 作業に伴う事務コストはどう賄うのか。役所の怠慢の後始末に税金を充てることに違和感を持つ国民は多いはずだ。

 社保庁法案の委員会強行採決から一週間もたっていない。状況に変化がないにもかかわらず、関連法案を議員立法で提出するなど矢継ぎ早に対応策を打ちだすのは、参院選を控えて国民の反発を最小限に抑えたい思惑がある。世論調査で内閣支持率が急落したのに加え、松岡利勝前農相の自殺の衝撃も影響しているとみられる。

 とりあえず仕組みを作ってお金をつぎ込んで、やってはみたが効果は得られなかった―では、国民はますます許さないだろう。疑問の解消につなげる審議がたった一日とは到底納得できない。場当たり的ととられても仕方ない。




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