2008年12月19日 (金)

昔書いた事:模型と高度な認知と高度な身体運動制御

おなじみの(嘘)覚書からの抜粋。少し書き換えてあります。

模型

非常に繊細で、根気の要る作業であり、集中力を試されるものである。

書道等と違って、リカバリーできる幅が広い。寧ろ、それがどの程度妥協無く為されるかが、最終的な完成度に大きく関わってくるので、非常に重要であるといえる。とはいえ、失敗せずに作業する方が、遥かに作業効率が良いので、失敗しない様集中力を高め、慎重に行う必要がある。ちょっと考えるだけでも、ヤスリの当て方、接着剤の塗り方、貼り合わせ、パーツについたホコリの除去、パーツにホコリがつかない為の管理、乾燥時間、塗料の希釈度、ハンドピースのケア(ニードル、ノズル、洗浄)、塗装時のエア圧、ニードル開度、パーツとの距離の関係、キャップの汚れ具合、失敗時のリタッチ、スジ彫り、面出し、等々…。

と、ある程度のレベルの作品を創り上げるだけでも、これだけの多くのことに気を遣い、注意を払いながら、作業をしていかなければならない。「力任せ」では絶対に出来ない。生力に頼って乱暴に投げ捨てる武術家諸氏に見せてあげたい。

左手で、不安定に持ち手につけられたパーツを保持し、右手で、カップのフタをつけていないハンドピースを操り、細かい塗装作業を行う、これは非常に高度な運動である。持ち手、パーツ、ハンドピースの重心を捉え、ハンドピースをミリ単位以下で操作していく。左右の手は全く独立した運動を行うので、身体を割ってつかわなければならない。ハンドピースは、塗料の噴出口の位置を数ミリ単位で変えることが必要なので、ベストをつかわないと、正しく操作ができない。

この様に、模型製作は、非常に高度な認識・身体運動が要求される文化である。もとより他文化も同様ではあるが、ある程度のレベルまで達することが難しいということである。例えば、「ホコリの全くついていない作品を完成させる」といわれた場合、これはかなり困難なことである。しかし、ホコリが少しついているだけで、それが非常に目立ち、作品に対する評価は著しく落ちることになる。指摘されると誰もが容易に、欠点を視認することができるということである。料理等では、下拵えが多少雑でも、味つけが大雑把でも、「美味しい」という評価を受けることがある。偶然味付けがうまくいった、ということがあるのである。一方、「汚れのついていない模型が偶然陥穽した」とか、「偶々表面処理で美しい面が得られた」等ということは、絶対に(と言って良いだろう)有り得ないことである。

この頃、自分がやっている事の構造を分析的に把握して、何でも身体運動や武術と関連づけようとするのが流行っていました。私の中で。

それにしても、書いてある内容の微妙な事よ。

唐突に武術家諸氏の話が出てきているのは、多分そういう年頃だったのでしょう。模型についての分析は、別におかしな事は書いていないかな。料理との対比はおかしいですが。自分も料理やるのに、なんでこういう風に比較してるんでしょうね。模型を作る、というのに塗装や継ぎ目消しを含意させている、というのがそもそも変ですな。

久しく模型はやっていませんが(どうせ一生やるから、後回しにしている。環境的にも難しいし)、実際、片手でパーツを持って、もう片手でハンドピース(いわゆるエアブラシってやつです)を操作するというのは難しいのです。フタを開けたまま細かい操作をするとなると、たぷたぷしてる塗料が零れないようにコントロールしなくちゃならない訳ですね。それで、塗料が出る所は0.5mm以下ですから、それを微細に動かすには、バランスよく身体を使う必要があります。手先を使っちゃいけないというのは、武術と一緒でしょう。

どういった文化でも、目標の設定の仕方によって難度が変わってくるんですね。模型で言うと、素組みするだけなら簡単。料理でも、食べられるゆで卵を作るとか、インスタントラーメンを作るとかは簡単。

でも、継ぎ目を完全に消した鏡面仕上げをする、というと難しいし、油っぽく無いパラパラチャーハンを作る、となると難しい。模型にしろ料理にしろ、それは単純な作業を指す言葉では無く、様々な方法や技術を含んだ文化なので、観点が色々ある訳です。

まあ、そんな感じです。

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2008年12月18日 (木)

数理心理学

Book 数理心理学―心理表現の論理と実際 (心理学の世界 専門編)

著者:吉野 諒三,山岸 侯彦,千野 直仁
販売元:培風館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

この本を読もうとした……が、難しすぎて撃沈した。

いや、数学に親しんでいる人ならば、さほど手ごわいものでは無いのでしょうけど…。

やっぱ、分野を問わず、ある程度の数学理解は必須だろうな、と思います。

実証科学方面だと、少なくとも統計学は知っておかないとね。で、どこまで知っておけば良いか、と言うと、構造を理解するには数理統計学的な所まで踏み込まざるを得ないだろうから、それを勉強しようとすると、当然他の分野の知識も関わってくるのですな。

結局、高校で習うような数学が、基礎としてどれほど重要であるか解ってきて、後悔する。これを、after carnival と言います。

勉強勉強・・。

余談。

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2008年12月17日 (水)

サンネーン

さっき思い出しましたよ。

このブログ、多分、今日で3周年です。

わーい。

それにしても、よく、ほぼ毎日書けるものだ。

それにしても、よくこんなブログを読んでくれるものだ(ツン←誤用)。

いや、実際、読んで頂いて、本当にありがとうございます。皆さんのお陰で成り立っているブログです(デレ←誤用)。

コンゴトモ ヨロシク・・・

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ノート:心理学研究法(8)

第6章の続き。

§3 相関仮説の検証の例

先に出た「仮説A」、つまり、「現実自己と理想自己のギャップが大きい人ほど、向上心が強い」を例にとって説明。

▼質問紙の作成

青年を対象にし、現実自己と理想自己を測定する質問紙と、向上心の強さを測定するための質問紙を作成。

現実自己と理想自己――「他人のミスに対して寛大である」などの「よい」特性を表す項目20個を、4段階で評定。得点の範囲:20~80点。

  • 当てはまらない:1点
  • あまり当てはまらない:2点
  • やや当てはまる:3点
  • よく当てはまる:4点

「よい」特性を表す項目だけだと、「当てはまる」と答える人の得点が極端に高くなる可能性があるので、「悪い」特性(「気が短い」など)も適度に交ぜる。悪い特性は、点数を反転させる(「当てはまる」→1点)。そのような項目を、逆転項目と言う。

向上心――「何か失敗をしたときは、よく反省して次には失敗しないように心がける」などの項目10個。5件法(5段階)で評定。

▼被験者とデータ

被験者:ある大きな大学の新入生からランダムに選んだ100人母集団は、ある大きな大学の新入生全体

上の質問紙3つを被験者に実施する。量的調査のデータは、「被験者×変数」の形式の一覧表にまとめられる。※「×」はクロスって事です。この場合、縦にAさん、Bさん(あるいは割り振った番号)…を取って、横に現実自己・理想自己・ギャップ・向上心の点数を書いて表にする。

▼データの分析と結果の解釈

変数間の相関関係の強さを、相関係数という統計的指標によって表現出来る。

相関係数

  • -1から+1までの範囲の値を取る。
  • -は負の相関、+は正の相関を示す。
  • 絶対値の大きさが、相関関係の強さを表現する。

今見ているのは、ギャップが大きい人ほど向上心が強い、という仮説だから、ギャップの値と向上心の値との相関係数に着目する。ここでは(本書の架空のデータ)、0.52(本書では0が省略されていて、.52となっていますが、ブログでは見にくいのでつけます)という正の値。0を省略して書くか、とかは、論文の投稿の規程とかにもよるらしい。省略しない方がいい、という意見も見ます。

ギャップの値と向上心の得点間の関係を、散布図で図示出来る。参照⇒散布図

点が、右上がりの直線の近くに集中していれば、相関係数が大きくなり、全ての点が直線上に一列に並べば、最大値の1になる。散布図が右下がりであれば、相関係数は負の値になる。ここで解るように、この文脈で言う「相関係数」は、「直線的な関係」を見るもの。それを、「ピアソンの積率相関係数」と言います。ピアソンは人の名前。だから、曲線的な綺麗な関係があっても、この相関係数はあまり高くならなかったりします。

相関係数がいくら以上であれば、仮説が支持されたと考えて良いか?

→仮説自体が、「正の相関関係がある」という大雑把なものなので、問いに明確に答えるのは困難。

→心理学の研究でしばしば用いられる基準――得られた相関係数が統計的に有意か否か。←この基準による判定の手続き:統計的検定(第9章参照)

ちょっと触れます。この場合の統計的検定は、

「母集団において相関関係があるか」となります。

で、仮説は、

「母集団において相関係数は0である」

とします。そして、母集団から標本を採ってきて(ここでは、大きさ100)相関係数を計算して、

「母集団で相関係数0だとしたら、標本でこんな値が出るのはどのくらいの確率よ?」

というのを計算します(確率論によって)。で、その確率が前もって決めていた値(たとえば5%)より小さければ、

「こんなに小さいんだから、母集団でも相関係数は0じゃ無いに違いないぜ!」

として、最初に立てた仮説、つまり「母集団の相関係数は0である」という仮説を棄てます。

ちなみに、上に書いた、「前もって決めていた確率」より小さい場合、それを「統計的に有意」である、と言います。

§4 相関係数および関連する統計的指標

▼共分散

相関係数→共分散という、2変数間の関係を表すより基本的な指標を用いて定義される。

共分散の求め方。

変数xの相加平均を求める。いわゆる平均値です。

Xheikin_4

変数yの相加平均を求める。

Yheikin_2

変数間に正の相関関係があるとは――ギャップが(全体のギャップの)平均より大きければ向上心も(全体の向上心の)平均より大きく、ギャップが平均より小さければ向上心も平均より小さい、という関係。

→各被験者について、値と平均値との差を取る:「ギャップの値 - ギャップの平均」と「向上心の値 - 向上心の平均」これを、「(平均からの)偏差」と言います。たとえば、平均60点のテストで85点取れば、偏差は+25。50点だったら、偏差は-10

→正の相関関係があるならば、「ギャップの値 - ギャップの平均」と「向上心の値 - 向上心の平均」を掛け合わせた値は正になる、つまり、「正×正」または「負×負」一方が平均より高いのにもう一方が低ければ、プラス×マイナスで負数になる訳ですね。で、それを足し合わせれば、相関関係がどうなっているか解る。

→全ての被験者について掛け合わせた値を出し、それを足し合わせる。下の公式の分子です。これを、「偏差積和」と言います。偏差 積 和 つまり、xとyの偏差を掛け、それを全部足す(総和)。だから、「偏差積和」そして、それを平均する(被験者の総数で割る)。データ数で割らないと、データ数が増えるほど値が大きくなる。

↓クリックで拡大

Kyoubunsan

Sxy:(変数xとyの)共分散 ※ここでは、xはギャップ、yは向上心

正の値であるから、正の相関関係がある事が判る。

共分散を解釈しやすいように加工した値が相関係数。→その加工のために、標準偏差という別の指標が必要。

▼分散と標準偏差

同一変数の共分散を求めたもの:分散

Bunsan

左辺が分散。

分散は、ばらつきの指標になる。つまり、平均から離れているものが大きければ、分散の値も大きくなる。

共分散では、分子は「偏差積和」でした。分散では、「偏差平方和」と言います。何故かって? 偏差 平方 和 だから。「積」が「平方」になっているだけですね。同じ変数で平均からのずれを掛けるので、それは平方、つまり2乗になります。上の公式に出てますね。偏差積和と同じように書くと(xの平均をmとする)、

(32 - m)(32 - m) + (9 - m )(9 - m )……(30 - m)(30 - m)

となるのですね。だから、「同一変数の”共分散”」が分散になる訳なのであります。

分散の正の平方根:標準偏差

Hyoujunhensa_2

S:標準偏差

上に書いてあるように、最初に2乗したから、それを開いてやります。そうで無いと、単位が変わります。何故2乗するか、というと、平均からの偏差(ずれ)をそのまま足し合わせてデータ数で割ると、0になってしまうから。

向上心の標準偏差=4.00

▼相関係数

共分散を、それぞれの変数の標準偏差で割る。

Soukankeisu_2

r:相関係数――分子:xとyの共分散 分母:xの標準偏差とyの標準偏差の積

今の例では、

r = 16.73 / ( 8.04 * 4.00 ) = 0.52

従って、ギャップと向上心との相関係数は0.52になる。

なぜ相関係数を用いるか。

  • 共分散は、値が単位に依存する。
  • 例:身長と胸囲の関係を知りたい→単位をセンチメートルにするかインチにするかで、値が変わる。
  • 共分散を標準偏差で割った相関係数は、単位の取り方に依存しない。
  • 共分散の取り得る値の範囲は、各変数の標準偏差の大きさに依存する。
  • 相関係数の取り得る範囲は、-1 ≦ r ≦ 1 と決まっているので、都合が良い。

▼統計ソフトウェア

色々あるよ。

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