ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 佐賀 > 記事です。

佐賀

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

同床異夢:武雄市長選の底流/下 どうする医師確保 /佐賀

 「このまま救急を続けていたら、医療事故が起こりかねない」。武雄市民病院の救急医療休止が決まった今年3月、樋高克彦院長は病院の窮状をそう訴え、市民に理解を求めた。07年度は727人の救急搬送患者を医師12人が支えていたが、今年4月からは医師は9人に減った。

 同じ医療圏の嬉野医療センターと比べると過酷な状況は明らかだ。07年度に同センターは、約70人の医師が1843人の救急搬送患者を受け入れていた。

 市民病院の医師数は、04年の16人をピークに減少し、同年秋から約1年半は脳外科医がゼロになった。救急搬送の約4割は、脳外科の関係だ。救急医療の機能は著しく低下した。

 地方の医師不足の要因の一つは04年度に始まった新医師臨床研修制度。研修医が自由に研修先を選べるようになって人材が民間に流れると、大学は公立病院から医師を引き揚げざるを得なくなった。

 ■  ■  ■

 今年1月。市民病院の院長以外の医師11人が辞職願を出す事態に陥った。きっかけは、樋渡啓祐前市長(39)が今回移譲先に決まった医療法人池友(ちゆう)会(北九州市)などと接触したことが明らかになったからだった。

 その樋渡氏が、同会の病院を「市民病院のあるべき姿に一番近い」と認識したのは、昨年12月だという。救急医療の実績や、大学に頼らない医師確保に期待を寄せる。

 同会の計画では10年2月に市民病院の135床を引き継ぎ、別の場所に高度医療も担える8階建ての病院を新築する。看護学校も併設し、旧病院跡地には介護福祉施設を造る。

 樋渡氏は「雇用も増大し固定資産税も入る」と強調する。

 こうした巨大病院産業の進出に対して古庄健介氏(70)は「地元医師とうまく連携してきた市民病院の機能をそのまま維持すべきだ」と主張する。

 古庄氏を推す武雄杵島地区医師会の古賀義行会長は「公益性が損なわれる」と指摘したうえで「医師を派遣してきた佐賀大が指定管理者で運営する形が、将来、最も自然ではないか」と提言。臨床研修についても国が制度変更を検討している状況を挙げ、「大学へ人材が戻ってくる流れがある」と分析する。

 ■  ■  ■

 全国に約1000ある自治体病院。それぞれの自治体にふさわしい医療のあり方を決めるのは、住民自身だ。武雄市民の判断は28日、示される。(この企画は原田哲郎、関谷俊介が担当しました)

==============

 ◆変更後の病院経営の特徴と選択した主な九州の自治体◆

経営形態      特徴                                               自治体

地方独立行政法人化 自律的な経営が可能だが、設立団体からの職員派遣の段階的縮減など自律性の確保に配慮が必要      佐賀県・長崎県江迎町・那覇市

指定管理者制度導入 民間的な経営手法の導入が期待されるが、地方自治体も管理の実態を把握し、指示なども求められる    宮崎県三股町・鹿児島県霧島市・長崎県大村市

民間移譲      可能地域は対象とすべきだが、採算確保が困難な医療が引き続き必要な場合、譲渡先との十分な協議が必要 福岡県・長崎県・沖縄県・大分県佐賀関町

※特徴は「公立病院改革ガイドライン」(総務省)による。自治体名は当時の表記のまま

毎日新聞 2008年12月19日 地方版

 
郷土料理百選
みんなで決めよう!08年重大ニュース

特集企画

おすすめ情報