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【社説】

OPEC大減産 原油安でも『脱石油』だ

2008年12月19日

 OPEC総会で来年一月からの大規模減産が決まった。原油急落に歯止めを、が狙いだ。すぐさま上昇に転じるとの観測は少ないが、日本が目指すべき「脱石油」にはいささかの変わりもない。

 ニューヨーク先物相場のWTI原油は七月の一バレル=一四七ドルをピークに、十七日には四〇ドルを割り込んだ。金融危機をきっかけに市場から投機資金が逃げ出して急落を誘っている。

 潤沢な資金を手にしてきた石油輸出国機構(OPEC)加盟国には相当こたえたようで、穏健派のサウジアラビアですら今回のアルジェリアでの総会を前にアブドラ国王が「七五ドルが適正」と異例の発言をした。

 総会では加盟国間の対立がしばしば表面化するが、今回は過去最大となる日量二百二十万バレルの減産がすんなりと決まった。その背景の一つとして、現状の四〇ドルをはるかに上回る八〇−九〇ドル前後の原油価格を想定して編成した加盟国の予算があげられる。

 ベネズエラはチャベス大統領を支持してきた貧困層に予算を配分できなくなり、政権基盤が揺らいでいる。イランは収入の激減で緊縮予算を強いられた。

 総会には非OPECのロシアも加わり、産油国全体で価格支配力を強めようとしている。

 しかし、減産に価格反転の力はあるのか。専門家は否定的だ。OPECは一九九七年のアジア通貨危機の際にも三次にわたり計二百万バレル以上減産したが、反転したのは景気が回復基調に転じた二〇〇〇年以降になってからだ。

 警戒すべきは油田開発の停滞だ。国際エネルギー機関(IEA)は、埋蔵量は膨大にあるが資金が枯渇して開発が滞ると生産不足を招いて需要に追いつけなくなり三〇年には一バレル=二〇〇ドルを超えると警告した。米エクソンモービルは資金に窮するメキシコ油田向け投資の検討を始めている。

 国内に目を移せば脱石油と向き合うべきだ。IEAは石油はなおエネルギーの主役にとどまるとの見解を示しているが、供給難の時代到来も考えておかなければならない。五〇年までに温室効果ガスの50%削減を、という時代の要請もある。

 原油が安くなると脱石油の熱意が冷める。一九八〇年代の原油安で省エネの技術開発が停滞した歴史を思い起こすべきだ。今夏、福田前首相が提示した低炭素社会へのビジョンは関心が薄れてしまった。無策を続けてはならない。

 

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