雇用情勢の悪化は急速に深刻の度を深めている。自動車、電機などの大手メーカーが次々と人員削減を発表し、非正規労働者だけでなく正社員にも影響が及び始めた。大手製造会社の下には膨大な中小の関連企業が存在する。雇用不安がさらに加速することも考えられる。政府、与野党は政策を総動員し、雇用対策の充実を図ることが重要だ。
政府・与党は先ごろ3年間で2兆円にのぼる新雇用対策をまとめた。雇用保険制度を見直し、非正規労働者への適用基準の緩和や地域で安定雇用をつくるための特別交付金の増額などを打ち出した。だが雇用情勢が予想以上に悪化する中で果たしてこれで十分なのか。状況を冷静に判断し、必要な対策があれば追加をためらうべきではない。
対策の多くは予算措置や法律改正が必要だ。政府・与党は来年1月からの通常国会に雇用保険法改正案や今年度第2次補正予算案を提出し、その成立を待って対策を実施する方針だが、まず法改正なしにできるものは早く実行すべきである。
厚生労働省は通達をだして、相談業務の充実や雇用促進住宅への入居あっせんなどを始めているが行政の判断・権限で実施できる対策はほかにもあるのではないか。一般会計や労働保険特別会計の予備費を活用するなど知恵をだして機動的に対応する必要がある。
雇用対策をめぐっては野党3党が提出した4法案に与党が猛反発している。4法案の中には期間社員などの契約期間中の解雇を基本的に無効とするものなど企業の手足を縛りすぎないかと懸念される法案も含まれている。しかし政府・与党の対策案と共通する措置もある。
例えば非正規労働者の失業保険の受給要件緩和や、再就職が困難な人への給付日数の延長など、与野党ともに必要と認め、かつ急がれる政策については今国会の会期内に審議を進められないものだろうか。国民の目線に立ちあらゆる可能性を探る必要がある。
雇用削減の痛みは、大手企業の工場が立地する特定の地域により大きくでている。キヤノン子会社の工場がある大分県杵築市などは失職した従業員を市の臨時職員として雇う試みを始めた。国の支援を待っていては住民の生活を守れないとのせっぱ詰まった判断だろう。
麻生太郎首相は2009年度予算で積み増す地方交付税の1兆円を雇用対策に使うよう指示したが、自治体とすれば今使えるお金がほしいはずだ。雇用対策は待ったなしである。