中国が経済の改革・開放政策を打ち出して30周年を迎えた。
中国は資本主義的な政策を積極的に導入して経済成長を続けてきた。今年はドイツを抜き、米国、日本についで世界第3の経済大国になる見通しだ。
有人宇宙船の打ち上げや北京五輪の開催などでも、世界に国力をアピールしている。
胡錦濤国家主席は、北京で開いた記念式典で、「30年来、世界が注目する新しい偉大な成果を達成した」と胸を張った。中国共産党による一党支配の正当性や、独自の社会主義の成果を強調したかったのだろう。
表向きには順調な発展を遂げているように見えても、問題は山積している。
新しい富裕層が次々に生まれる一方で、貧富の差が急速に広がっている。党に権力が集中し過ぎたことなどによる汚職の多発、環境や食物の汚染、少数民族問題なども気にかかる。
とりわけ心配なのは、民主化に対する姿勢である。
例を挙げよう。今年のノーベル平和賞の有力候補者に人権活動家、胡佳さんの名前が挙がった時、中国政府は不快感を示した。
胡さんは、中国の人権弾圧の実情をインターネットで世界に告発した。今年4月、外国メディアの取材を受けたことなどを理由に政権転覆扇動罪で実刑判決を受け、服役している。
今年度のサハロフ賞に胡さんが決まった時も、中国政府は「内政干渉」と強い不満を表明した。欧州連合(EU)の欧州議会から人権擁護活動で貢献があった人物や団体に贈られる賞である。
1989年にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世に対してノーベル平和賞が贈られた時も同様だった。同賞委員会のあるノルウェーの駐在大使を召還するなど、過剰反応とも受け取れる行動に出て批判された。
胡主席は、記念式典の演説で、▽人民の幸福のための執政▽調和の取れた社会の建設−などを目指すと訴えた。
重要な目標である。でも、人権や表現の自由など、民主的な国造りの土台となるものがないがしろにされている現状では、本当に実現できるのか疑問が膨らむ。
世界との交流が深まるほど、中国の人々は自由の大切さを知っていくはずだ。民主化の動きをもっと大切に扱うべきだ。力で押さえようとすればするほど、その反動は大きな代償となって政府自身に返っていくだろう。