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2008年12月18日

◎米国のゼロ金利 日銀も追加利下げの決断を

 米国が史上初の事実上のゼロ金利政策に踏み切った。米連邦準備制度理事会(FRB) は、利下げに加えて、「量的金融緩和」も実施すると明言しており、円高圧力はますます強まるだろう。日銀は、きょうから始まる金融政策決定会合で、追加利下げを決断してほしい。

 十二月の日銀短観で、企業の景況感が大幅に悪化したのを受けて、日銀は金融政策決定 会合で、市場への資金供給拡大のための追加策を打ち出す見通しという。市場への資金供給を円滑にする狙いだが、日米金利の逆転という新たな事態に対処するには、それだけでは心もとない。

 日米の政策金利が逆転するのは約十六年ぶりのことである。市場に及ぼす影響は極めて 大きく、円相場は再び一ドル=九〇円を割り込み、八〇円台に突入した。みずほ証券が十七日付のレポートで、「一ドル=八〇円割れの水準も想定される」との見通しを示したように、市場では円高不可避論が広がり、追加的な金融緩和が必要との声が高まっている。

 金融政策決定会合で、追加利下げが見送られたら、円高が加速する可能性がある。そう なれば、株式市場が一段安となり、実体経済への悪影響は避けられない。円高と外需不振に苦しむ企業の雇用調整に拍車がかかり、金融機関の含み益も吹き飛んでしまう。

 白川方明総裁は、十月に政策金利を0・2%引き下げた後、追加利下げの可能性を否定 する発言を続けてきた。利下げの効果を見定めたいとの思いは分かるが、景気悪化のスピードはこれまで経験したことがないほど早い。そう遠くない時期に欧州各国も限りなくゼロ金利に近い水準まで金利を下げてくるはずだ。日銀は速やかに協調利下げを実施し、円高リスクを減らし、市場の動揺を抑えてほしい。

 日銀の短期金利が米FF金利を下回るのは、一九九三年二月以来のことである。九〇年 代前半は日米の金利差が最も縮小した時期で、九〇年に対ドルで一六〇円台だった円相場は、九五年に七九円台にまで急騰した。金利と為替の関係は、このときと不気味なほどよく似ている。

◎税の滞納対策 タイヤロックやむを得ぬ

 税滞納対策として、石川県が「タイヤロック」の装着で差し押さえた自動車の引き揚げ に踏み切ったのはやむを得ぬ措置である。今回は初めてのケースとなったが、差し押さえ後も納付意思を示さない悪質なケースについては財産の引き揚げをためらう必要はないだろう。

 タイヤロックは車輪止めの器具を固定して走行不能にする方法で、県は昨年度に導入し 、十一月末までで計五十四件、約四百万円を徴収した。装置を取り付ける直前や通告の段階で支払いに応じるケースが大半を占め、納付を促す効果はすでに実証済みである。

 景気悪化に伴い今後、自治体の税収減が見込まれ、滞納の増加も懸念される。タイヤロ ックは県税である自動車税の滞納対策として、納付対象の車を差し押さえる手段に用いられているが、自動車税に限らず、他の税目でも活用は可能である。自動車の依存度が高い石川県のような地域ほど差し押さえは不便さを強いることになる。他の自治体でも導入を検討してよいだろう。

 県が今回、自動車を引き揚げたのは自動車税を三年間滞納したケースで、タイヤロック で車を差し押さえても納付に応じなかったため実行した。財産の処分は滞納対策の最後の手段といえるが、支払っている人との不公平感を是正するうえで必要な措置である。自治体側が財産処分も辞さない強い姿勢を示すという点でも意味がある。

 タイヤロック導入の背景には、民間のオークションシステムを通じて自治体が参加する インターネット公売の普及もある。自治体は滞納者の不動産や預金などを差し押さえることはあっても、車などの動産は売却先が見つかりにくく、差し押さえに積極的でなかった。ネット公売の定着で現金化の道は格段に広がったといえる。

 ネット公売への参加やタイヤロック導入は県内では一部の自治体に限られているが、県 は積極的に普及を図ってほしい。「税金を払わなければ車が差し押さえられる」という認識が広がっていけば、滞納の一定の抑止力にもなろう。


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