専門委員会による報告書

 

専門委員会設置主旨

 松阪SCマーム受水槽内での死体判明事故に伴い、下記についての検証を求められた。

  1.水質検査方法並びに検査結果の妥当性・安全性についての専門的な検証
  2.ヒトの健康に及ぼす影響についての科学的な見地からの検証
  

松阪SCマーム施設内の水の安全性について

事故判明時及び受水槽・高架水槽洗浄後の水質検査は水道法に基づいて全て適正に実施されたことを確認した。また、法に基づく設置者による日常の水質検査も適正に行われていたことを確認した。水質検査の結果を精査したところ今回の事故による水質への影響は認められなかった。さらに、事故判明後の処理も迅速に的確に行われたことを確認した。
 受水槽内に死体があったにもかかわらず水質検査項目に異常が認められなかった要因として、当該施設の受水槽には適正な残留塩素濃度が保持されており、加えて水が絶えず供給され、受水槽内の水が頻繁に入れ替わっていたことによると考えられた。

<水質検査および結果の検証について>

 

感染症等ヒトの健康に及ぼす影響について

ヒトへの危害性については、これまでの学術的報告、病原菌の感染経路、有害物質の濃度を根拠に議論すべき問題である。
代表的な水系汚染細菌である病原性大腸菌、カンピロバクター、赤痢菌や死体の腐敗に伴って増殖してくる細菌類は水道法による塩素消毒で死滅するので、残留塩素の濃度が確保されていれば健康への影響はないと考えられる。ウイルスによる水系感染症ではA型肝炎、E型肝炎、ノロウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルスが報告されているが、これらのウイルスは生きた細胞がなければ生存できず、また、水道法に定められた残留塩素濃度を保持した水中での長時間の生存は不可能であり感染性を失うと考えられる。B・C型肝炎、エイズウイルスについては水系感染したという報告はない。
当該施設内の水は、先に記したように頻繁に新しい水に入れ替わっているため、水中の残留塩素は細菌やウイルスを死滅させるに十分な濃度を維持していたこと、また、他の有害物が存在していたとしても多量の水で希釈されていたことからヒトの健康に及ぼす影響はないと考えられた。

 

今後のフォローアップについて

今後も近隣の主要な病院とコンタクトをとり、今回の事故に関連した特定の事象集積がないか等の情報収集を継続的に行いフォローアップすることが望まれる。

2008年12月15日 
専門委員会  
委員長    藤田  定 
  精神科医
  刈谷豊田総合病院東分院 顧問
  元愛知教育大学保健管理センター教授
  イオンリテール(株)中部カンパニー 産業医
   
委員 太田 美智男
  医学博士
  名古屋大学大学院医学系研究科教授
   
委員 西尾 治
  医学博士
  愛知医科大学医学部客員教授
  元国立感染症研究所室長
   
委員 橋爪 清
  医学博士
  (財)三重県環境保全事業団
  調査部特別研究員

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