海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続する改正新テロ対策特別措置法が衆院の三分の二以上の賛成多数で再可決、成立した。対テロ作戦に従事する米、英などの艦船への給油活動が、来年一月十六日以降も一年間延長される。
政府、与党は今国会の重要法案と位置づけていた。だが、給油法案をめぐる与野党の論戦は内容に乏しく、遺憾と言わざるを得ない。
衆院での委員会審議は実質二日間だった。政府、与党は活動継続の重要性を訴え、民主党も早期の衆院解散・総選挙の環境整備のためとしてスピード採決に応じたためだ。
参院での審議期間は長かったものの、衆院解散先送りや二〇〇八年度第二次補正予算案の今国会提出見送りに野党が反発、審議や採決の日程が与野党の駆け引きの材料に使われた。前航空幕僚長の論文問題でも、民主党は参院外交防衛委への招致が給油法案採決の前提とした。
政局を絡めた民主党の対応ぶりはうなずけないが、与党側のやり方も納得し難い。またも多数を占める衆院で再可決する手法を使った。憲法が認めたルールではあるものの、この議席数は郵政民営化に特化した〇五年の総選挙で得たものだ。使うには慎重であるべきだろう。この時は給油延長問題はほとんど争点になっていない。
本来、給油延長の問題は日本の安全保障政策や国際社会とのかかわり方に直接関係してくる重要なテーマである。各党がそれぞれに考える国際貢献の在り方を踏まえ、給油延長の是非について活発な論戦を展開してもたいたかった。
前回の延長をめぐる国会論戦でも本質的議論は十分でなかった。それでも給油燃料のイラク作戦転用が議論されるなど、今回よりは中身があった。
対テロ戦の主戦場をイラクからアフガニスタンに移す米国は新たな人的貢献策や巨額の戦費負担をにおわせる。七月下旬に来日した米国防副次官補は湾岸戦争時を上回る資金拠出への期待を述べた。国務省日本部長は十五日、アフガン本土へ自衛隊だけでなく、警察、建築、医療などの分野で文民派遣を期待する考えを示している。
今国会閉幕から間を置かず次期国会が開かれる。与野党は機会をとらえ、安保や国際貢献策の議論を深めるべきだ。折しも航空自衛隊のイラク撤収が始まり、約五年にわたった自衛隊活動が終結する。国民も関心を高めなければならない。
ポーランドのポズナニで開催された気候変動枠組み条約第十四回締約国会議(COP14)は、京都議定書に続く二〇一三年以降の新たな温暖化対策の国際的枠組みについて、これといった成果を示せないまま閉幕した。来年末に迫る交渉期限内の取りまとめができるか気がかりだ。
今回の会議は、交渉の合意へ向けた重要な折り返し点と位置付けられていた。しかし、ふたを開けると、またぞろ「発展途上国にも削減義務を」とする先進国と、「先進国の一層の削減」を主張する途上国の思惑がぶつかり合った。作業計画など一部で合意したが、多くの重要課題は持ち越しとなった。
例えば、先進国が主張する「五〇年までに世界全体で温室効果ガスを半減させる」とした長期目標は、削減の義務付けを警戒する途上国側の反対で合意できなかった。途上国側が「先進国は二〇年までに一九九〇年比25│40%の削減が必要」と迫った先進国の中間目標設定には、国内調整が進んでいない日本などが難色を示し、前回の域を出なかった。途上国が温暖化の影響に対処するための「適応基金」の拡大も不調に終わった。
温暖化対策は喫緊の課題である。先進国はもちろん、京都議定書の批准を拒否している米国や途上国が一体となった取り組みが欠かせない。「ポスト京都」の持つ意義は大きい。にもかかわらず、相手方への要求ばかりが目立ち、歩み寄りを欠いたことは残念な限りだ。
背景には、世界的な金融危機による景気悪化や、温暖化対策に積極的なオバマ次期米大統領が誕生してからとの空気も見受けられる。だが、停滞は許されない。互いの溝を埋めるため、まずは先進国が積極姿勢を示して途上国の参加へと導きたい。日本の存在感も問われる。
(2008年12月17日掲載)