[デトロイト 12日 ロイター] 鎖の強さがその輪の最も弱い部分に左右されるのであれば、トヨタ自動車<7203.T>やホンダ<7267.T>は、ビッグスリー(米自動車大手3社)の経営危機の直接的な影響を受け、米市場で問題に直面することになる。
ゼネラル・モーターズ<GM.N>とクライスラーは経営破たんの瀬戸際にまで追い込まれているが、両社と米国の部品供給業者とのつながりの濃さを考慮すれば、2社が破たんした場合には日系の大手自動車メーカーも巻き添えで大きな打撃を被るだろう。
アナリストらはGMかクライスラーが破たんしたら、同社に部品を納めている供給業者も連鎖的に破たんしかねないと警告する。
そうなれば、資本基盤がよりしっかりしている日本のメーカーにも、テキサス州からオハイオ州にかけて点在する生産ラインの稼動を維持するため、金融支援を実施するよう求める圧力が強まるとみられる。自動車販売の落ち込みが続き、手元資金が目減りしているこの時期には痛い出費だ。
自動車メーカーはすべて業界再編の影響を免れないが、トヨタ、ホンダ、日産自動車<7201.T>は米国に深く根付いているだけに、供給の混乱には特に影響を受けやすいとアナリストは話す。
日系メーカーは現在、米自動車販売台数の4割を占めている。また、米国の顧客向けに販売する車の6割以上は北米で生産している。
加えて、トヨタが先鞭をつけたスリムな在庫管理方式は、主要部品の不足が組み立てラインを簡単に止めてしまうリスクを意味しているという。
GM車の部品供給業者の58%、フォード車の供給業者の65%は日本を含むアジアのメーカーに部品を納入している。これに対して欧州の自動車メーカーに部品を供給しているGMの取引業者は37%だ。
クロー・ホーワスのアナリスト、エリック・マークル氏は「GMと取引のない部品メーカーなどない」と指摘した。GMは年310億ドル相当の部品を購入しているため、「GMがなくなれば、供給業者は破産を申請する」という。
同氏や他のアナリストは、自動車メーカーが1社破産すれば、事業再編に必要な資金の手当てがほぼ不可能となるため、多くの部品供給業者が清算を余儀なくされるとみている。
マークル氏は「供給業者が清算されれば、部品はそれ以上受け取れない。GM、フォード、クライスラーにとどまらず、トヨタ、ホンダ、日産もだ」と述べた。
140億ドルの自動車大手救済法案が上院共和党の反対で事実上廃案となった後、ブッシュ政権は米メーカーに対する緊急支援を検討している。
メインステイ・キャピタル・マネジメントの最高経営責任者(CEO)、デービッド・クドラ氏は「ホンダやトヨタも、米自動車メーカーの破たんが始まり、そのスピードが速ければ、彼らがすべてを依存している供給基盤が崩壊すると口にし始めている」と指摘した。
米国でGMに次ぐ台数を売り上げているトヨタの株価は、上院での救済協議決裂を受けて12日の東京市場で大幅安となった。ホンダや日産も急落した。
トヨタは「大規模な破産は急激に縮小している米自動車市場をさらに悪化させる。そうした状況の回避を望む」とするコメントを発表した。
ホンダと日産はコメントを出していない。
<デトロイトと名古屋の結びつき>
米国以外の自動車メーカーによって操業、または建設中の米国内の組み立て工場18のうち、日系メーカーの工場は13に上っている。
現代自動車<005380.KS>とメルセデス・ベンツはともにアラバマ州に工場があり、BMWはサウスカロライナ州に工場を持っている。
起亜自動車<000270.KS>とフォルクスワーゲン<VOWG.DE>は米国内で販売するすべての車種を輸入しているため米国のメーカーが破たんしても影響を受けないが、起亜は2009年にジョージア州で工場をオープンする予定で、フォルクスワーゲンはテネシー州に工場を建設中だ。
自動車コンサルタントのCSMワールドワイドによると、外資系メーカーが現在所有している工場は北米の自動車生産の約45%を担っており、2000年代当初の水準の倍近くになっている。
CSMのクレイグ・キャザー社長は「部品供給業者の多くは、生産やキャッシュフローに対する新たな大打撃を耐え忍ぶ余裕がない」と指摘した。
北米の大手自動車部品メーカーには、ジョンソン・コントロールズ<JCI.N>、マグナ・インターナショナル<MGa.TO>、TRW<TRW.N>、リア<LEA.N>などがあるが、アナリストは、大手の部品メーカーに製品を供給している数千社の下請け業者に最も強い圧力が掛かると見込んでいる。
部品セクターに掛かっている圧力を象徴するように、12日にはミシガン州で金属部品を製造しているプレシジョン・パーツ・インターナショナルが破産法の適用を申請した。
同社のジョー・ルフェーブCEOは「国内自動車業界のこのところの落ち込みや信用市場ひっ迫の継続が乗り越えられない障害を作り出した」と釈明した。
日系自動車メーカーは、10月以降に加速している米市場全体の販売台数急減の影響を既に受けている。
ホンダは12日、11月の同社の米自動車販売台数が32%落ち込んだことを受け、09年3月にかけて北米で11万9000台を追加減産すると発表した。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:SoyoungKim、翻訳:関 佐喜子、編集:吉瀬 邦彦)