大学を卒業した新人医師に2年間義務付けられる臨床研修制度について、厚生労働省と文部科学省は17日、医師不足への対応から研修期間を実質1年に短縮する見直し案を両省の専門家検討会に提示した。検討会は年度内にこの方向で報告書をまとめる見通しで、国は10年度の導入を目指す。総合的な診療能力向上を目的に04年度から始まった制度は、わずか6年で方針転換されることになる。
新人医師はかつて、卒業した大学の医局(診療科)にそのまま所属するケースが大半だったが、臨床研修制度導入により、2年間で内科、外科・救急、小児科など6診療科の研修が必修となり研修先の医療機関も自由に選べるようになった。この結果、地域の病院に医師を派遣してきた大学病院を研修先に選ばない研修医が多くなり、「地域の医療崩壊を助長した」との制度批判が出ていた。
見直し案は、必修を内科、救急など2~3診療科に減らして1年で終わらせ、その後は将来専門とする診療科に入るという内容。2年目も医師法上は「研修」の扱いだが、実質的に各診療科の働き手として組み込まれる。地方の病院も研修医を確保できるよう、募集定員に地域別の上限を設定する案も盛り込んだ。
ただし、研修医は例年、5割以上が大学以外の病院を研修先に選んでいる。見直し後も大学病院に研修医が戻る保証はなく、勤務医不足の解消につながるかは不透明だ。
検討会では「卒業前の教育を充実させれば研修は1年でも可能」などと肯定的な意見が相次いだが、「見直す必然性がない」との声もあった。また、国が約7600人の医学生に行ったアンケートでも、研修期間は「現状がいい」が31%と最も多く、厚労省は「さらに議論していきたい」としている。【清水健二】
毎日新聞 2008年12月17日 22時20分
12月17日 | 臨床研修:1年に短縮へ 医師不足で10年度から |