救急受け入れ支援の情報活用研究会が初会合
受け入れ可能な医療機関が見つからず、妊婦が死亡した問題などを受け、厚生労働省と経済産業省は12月17日、「救急患者の医療機関への受け入れを支援する情報活用等に関する研究会」の初会合を開いた。研究会では、医療機関が救急患者の受け入れを円滑にする情報システムや運用体制について検討していくが、大都市部と地方での運用方法の違いなどの問題点について、課題が浮かび上がった。
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研究会の座長には、有賀徹・昭和大医学部救急医学講座主任教授が選ばれた。研究会の下には「運用・IT技術ワーキンググループ」(座長=山本隆一・東大大学院情報学環准教授)を設け、今年度中に報告を取りまとめる。 初会合ではまず、厚労省が、都道府県が医療機関に要請している「救急医療情報システム」の入力状況などについて報告。導入している43自治体のうち、「情報に変更があればその都度入力する」が4自治体、「1日2回以上」が7自治体、「1日2回」が29自治体、「1日1回」が3自治体と、頻度に地域差が見られた。厚労省側は、医療機関に入力頻度を上げるよう協力を求めることは負担増につながるほか、最終の搬送先決定には直接電話連絡をする必要があるため、医療機関と搬送機関のヒューマンネットワークの構築などが必要とした。
研究会の検討事項としては、▽救急医療情報システムの機能増強▽周産期救急情報システムの機能増強▽各情報システムの運用体制の強化▽新情報システムによる実証事業で検証が必要な事項−が挙げられた。
質疑応答の冒頭、有賀座長は「産科救急と一般救急のネットワークはかなり違う」と指摘した。
これに続き、岡井崇委員(昭和大医学部産科婦人科学教室教授)が、産科救急では、妊婦はこれまで診察を受けていた医師の元に一度運ばれ、その医師が医療機関に搬送を指示することがあると指摘。「問題はベッドが満床で、医師不足のために現場が多忙で、病院を見つけることが困難なことだ」と訴えた。また、「周産期救急は、一般救急と比べ圧倒的に件数が少なく、これまでは医療機関同士でやりとりをすればうまく回っていたが、それが変わった」と説明した。
小倉真治委員(岐阜大大学院医学系研究科救急・災害医学分野教授)は、都市部と地方の救急搬送の状況の違いを指摘し、「岐阜県では救急患者を受け入れるため、時間をかけてマニュアル化を行い、ある程度うまく機能している。まず、『医療情報システムの構築ありき』といっても、地域や地場の情報体制を変えるのは難しい」と述べた。
続いて、杉本充弘委員(日赤医療センター第一産科部長)が、「大都市圏ではITが特に必要かもしれないが、過疎地では状況が違ってくる。その地域に合うように幾つかのモデルを示す必要があるのではないか」と指摘した。
また、坂本哲也委員(帝京大医学部救命救急センター教授)は「ディスパッチャー」と呼ばれる管理者を引き合いに、「米国では、空床の状況を把握しながら、医療機関に受け入れを要望するコーディネーターがいる。情報といっても誰が管理するのか。サポートはどうするのか議論が必要」と述べた。
厚労省は救急医療情報システムについて、「全国一律ではなく、各地域に最も合ったものを県の中で議論してほしい。ただ、他県に患者を運ぶことが多い地域は、近隣県と相互に検討が必要。一般論として広域化が望ましい」とした。また、「新しい情報技術を使えば、入力などでもっと人の負担が少なくなるのではないか」と指摘した。
これに対し、有賀座長が「現場の意見としては、ITだけで判断できるとは思っていない」と述べたほか、山本ワーキンググループ座長も、「ITはあくまでツール。ツールと仕組みは分ける必要がある。ツールは共通して利用できることが必要だが、判断については、自動化はできない。判断をする人の負担を減らすことを考えるべき」とした。
研究会は、ワーキンググループによる数回の議論を経て、来年3月に第2回会合を開く予定だ。
更新:2008/12/17 19:43 キャリアブレイン
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