これまでに広島県保険医協会が発表した声明等
2007年1月〜

《談話》
2008年12月15日

産科医療補償制度について
 2009年1月1日より産科医療補償制度がスタートする。この制度は、分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があるため、患者の救済、紛争の早期解決、事故原因の分析を通して産科医療の向上を図ることを目的に実施される。
 具体的には、加入した分娩機関が取扱い分娩数に応じた掛け金を運営組織である日本医療機能評価機構に支払い、運営組織は保険会社に保険料を支払う。補償対象となる脳性麻痺が生じた場合には、保険会社が補償金を患者に支払う仕組みである。
 しかし、今回の産科医療補償制度にはいくつかの問題がある。まず、なぜ医療機関が保険金の元となる掛け金を支払うのか。医療機関の掛け金の原資は分娩費の引き上げであり、その患者の分娩費は出産育児一時金の引き上げによって補填される。最終的には国を含む保険者の支払いとなる。そうした複雑な仕組みが妥当なのであろうか。
 また、民間保険を導入する点も問題である。制度検討のたたき台となった与党「医療紛争処理のあり方検討会」が作成した「産科医療の無過失補償制度の枠組みについて」には、既に「運営組織を通じて保険会社に保険料を支払う」ことが明記されている。制度内容を検討した産科医療補償制度運営組織準備委員会の報告書にも、「『産科医療の無過失補償制度の枠組みについて』に沿って検討を行った」「産科医療の崩壊を一刻も早く阻止する観点から、民間保険を活用して早急な立ち上げを図る」とされており、民間保険導入が当初からの前提であったことが伺える。実際には与党の指針から2年以上経ての実施であり、公的制度とした場合より「早急」であったかどうかは疑問である。掛け金の総額は300億円。補償金に事務コスト費を足しても、掛け金の合計には満たないとの試算もあり、差額は民間保険会社の利益になる仕組みとなっている。
 以上の点から、産科医療補償制度は民間保険会社を関与させるべきではなく、国が責任を持つ公的制度とすべきである。医療事故における無過失補償制度は、今後も産科医療に限らずその対象を広げていくことが想定される。国による公的無過失補償制度こそ必要とされている。

【要望書】

2008年8月27日

福島地方検察庁
検事正 太田 修 様

 福島県大熊町の県立大野病院で、2004年12月、帝王切開した女性が死亡した医療事故で、執刀した産婦人科医師が業務上過失致死と医師法違反容疑で逮捕、起訴された事件について、福島地方裁判所は、8月20日、無罪判決を下しました。
 判決では、癒着胎盤の用手剥離を開始した後は出血していても胎盤剥離を完了させ、子宮の収縮を期待するとともに止血操作を行い、それでもコントロールできない大量出血する場合に子宮摘出するのが臨床医学の医療水準であり、医師の胎盤剥離の中止義務はないと判断されました。
 当会は、この事件が、担当医師が懸命な努力をしたにもかかわらず不幸な結果となった不可抗力的事例であり、深刻な産婦人科医不足や県立病院全体の安全体制の問題に深く根ざしたものであり、一産婦人科医の責任として矮小化することは許されないとして、無罪判決を要望してきました。
 今回の判決に関し、福島地方裁判所の判断を支持するとともに、貴庁が仙台高等裁判所に控訴なさらぬことを強く要望いたします。

【談話】

2008年9月24日

原爆症認定集団訴訟札幌地裁判決について控訴断念と認定制度の再改定などを求める

 9月22日、札幌地裁は北海道原爆症認定集団訴訟原告4人の却下処分を取り消す判決を出した。肝臓病、慢性甲状腺炎に加えて、新たに高血圧も原爆放射線が影響しうるものとして原爆症の対象と判断した。
 集団訴訟は仙台、大阪高裁の判決も含め国の11連敗となった。来春には東京、広島高裁での判決が予定されているが、国は「内部被曝は軽微であり、健康障害をきたすことはない」と真実に背を向けた主張を繰り返している。原告のうち56名はすでに亡くなっている。認定制度のさらなる拡大が必要であることは明白であり、これ以上裁判を重ねる必要はない。
 今年4月から認定制度が変更となったが、被爆者の死亡にともなう予算減少の範囲内での認定枠の拡大にすぎず、新たに積極認定の対象となった心筋梗塞に関する手続きは7月になって通知が出されるなど、決して満足すべきものではない。
 原告たちは国に対して控訴を断念すること、認定制度の再改定をすること、集団訴訟の一括解決を図ることを求めている。
 私たち広島の医師・歯科医師もこの要求を支持し、被爆者援護の拡大と核兵器廃絶、世界平和をめざしてともに運動していくものである。

【抗議】

2008年9月5日

日本歯科医学会長 
江藤 一洋 殿

日本歯科医学会長の「歯科補綴の保険外し」発言に厳重抗議する

 報道によれば、日本歯科医学会の江藤一洋会長は、7月12日、13日の日本歯科医療管理学会学術大会に於いて『歯科再生の道をさぐる』と題した講演の中で、歯科医療費の総枠の拡大が困難な状況では、「補綴を保険から外して活路を」といった主旨の発言があったとのことである。
 この発言は、歯科医療界に影響のある日本歯科医学会会長の発言とは思えない重大発言である。
 現在、歯科保険医は医療費抑制政策の中で身を削りながら、国民皆保険制度を守るため最大限の努力を傾注しているところである。国民が咀嚼機能を安心して維持改善できるのも歯科補綴が保険給付の対象であり、不採算と言われながらも歯科保険医が頑張っているからである。国民の歯科保険制度の基盤を左右するような発言は、慎重でなければならず、影響力を持つ立場の人の発言として断じて許されるものではない。
 私たち広島県保険医協会は、国民が安心して、何時でも何処でも医療にかかれるよう、そして、安心して医師・歯科医師が医療を施せるような社会を構築することを目指している。アメリカの影響を受けた現在の政治姿勢は、市場原理の下、アメリカの医療制度を取り入れようとし、混合診療解禁を経済界の圧力の下に目指している。このような環境の下、貧富の差によって選択される医療を断固反対する団体として、厳重抗議するとともに、この度の発言を撤回することを要求する。

【談話】
 
2008年6月24日

長崎地裁判決に従って国は控訴をせず、基準の再見直しとすべての原告の救済をはかることを求める

 長崎地裁は6月23日の判決で27人の原爆症集団訴訟の原告中20人に対して原爆症認定申請の却下処分を取り消す判決を出した。広島についで被爆地長崎でも原告が実質勝訴した意義は大きい。
 4月から始まった新しい認定制度では積極的認定の対象となっていない慢性C型肝炎、狭心症、ガラス片摘出後遺症を原爆症と認めた。
 原告のうち8人はすでに亡くなっている。司法判断はすでに結論が出ており、これ以上訴訟を継続する必要はもはやない。被爆者に残された時間は長くはない。
 国は控訴をせず、直ちに認定制度の更なる改善に着手するとともに、全ての原告を一括救済することを求める。

兵庫社会保険事務局
事務局長 浅見 正博 殿

要請文

 広島県保険医協会は、細見雅美医師の行政処分取り消しの神戸地裁判決を支持し、貴局が速やかに控訴を取り下げることを要求します。

理由
 貴局が平成16年10月27日付で細見医師に対して行った保険医取り消し処分は、経緯からして不可解なものであり、処分の比例性、量刑においても過酷であり佐藤神戸地裁判事の裁定は納得いくものです。行き過ぎた指導・監査に対して、貴職の裁量権の濫用を戒める判決であったと理解しています。
 細見医師はこの判決が出るまでの3年半保険医としての仕事も出来ず、その間細見医師を信頼していた患者の皆さんに大変な不安を与え、また、細見医院の従業員を路頭に迷わすことになりました。保険医停止処分の結果の過酷さを真摯に受け止めていただき、この上、尚、控訴して徒に細見医師と家族に苦痛を与えないでいただきたい。
 最後に、貴職の職務に対する熱心さは理解しますが、職務以前に人間性を失わないようにしていただきたい。
 以上、切に願うものです。


平成20年5月29日

談話

2008年5月31日

原爆症集団訴訟、大阪高裁判決について
国の8連続敗訴、これ以上被爆者を苦しめてはならない

5月30日(金)、原爆症集団訴訟控訴審で大阪高裁は2006年5月の大阪地裁判決を全面的に支持する判決を出した。判決では個々の疾患と原爆放射線との関係を証明することは不可能であり、原因確率表を機械的に適応して放射線起因性を否定するのは妥当ではなく、被爆状況、既往歴、病状、治療状況などを総合的に判断すべきとしている。そして原告の申請した3.3km被爆での甲状腺機能低下症、入市被爆での循環器疾患、貧血に放射線起因性はないとして国が却下処分したことを違法として、その取り消しを命じた。
 2年前の大阪地裁判決の全面勝訴は認定の対象となる被爆状況を入市被爆に拡大し、対象疾患を循環器疾患に拡大する画期的なものであり、その後の6地裁での原告連続勝訴のなだれ現象の先駆けとなり、認定制度大幅変更が実現した。
 今年4月から新しい審査が始まったが、対象疾患は心筋梗塞と白内障に拡大されたのみであり、今回の判決を受けて国は認定対象疾患の拡大をすべきである。
 仙台、大阪高裁の判決で集団訴訟原告勝訴の流れは確定した。国は上告してこれ以上裁判を長引かせることなく、高裁判決に従い、原告の全員救済と認定制度のさらなる改善をめざすことを要望する。

談話

2008年5月29日

原爆症集団訴訟、仙台高裁判決について
認定制度のさらなる改善とともに、上告を断念することを求める

 原爆症集団訴訟は全国22都道府県15地裁、6高裁で3005人の被爆者によるたたかいが行われている。5月28日、仙台高裁は地裁判決を支持する判決を出した。
 国の6連敗を受けて、安倍前首相は認定制度の見直しを指示し、今年4月から新しい制度がスタートしてはじめての司法判断であり、今後の集団訴訟の行方を指し示すものである。
 原告は2km被爆で膀胱癌が発症した女性と1.8km被爆で胃癌が発症した男性である。国は女性の膀胱癌発症について起因性、要治療性ともに否定し、男性の胃癌については起因性は認めたが、要治療性は否定していた。従来の国の審査では手術して5年を経過して再発していない場合、癌は治癒したとみなして申請を却下してきた。
 仙台高裁判決での、手術後も後遺症に対する治療や、再発の有無の観察のための定期検査などが実施されている場合は、要治療の状態が継続しているとの司法判断は的確なものであり、この判断を受けて認定審査会は術後5年以上経過して再発のない癌であっても治療継続している場合は認定するように方針を変更すべきである。
 新制度のもと年間1,800人の認定が予定されており、4月、5月で277人が認定され、昨年度累計の128人の2倍に達している。集団訴訟原告305人のうち105人が認定されたことになる。しかし国は6高裁で争っているケースでの控訴を取り下げることもなく、ひとことの謝罪もないままに、原告に認定書が送付されてきた。
 札幌地裁の公判では認定された3人の原告に対して提訴取り下げを迫るなど、国は集団訴訟の原告の分断を図ろうとしている。これまでに原告の15%が亡くなっており、これ以上訴訟を長引かせることは非人道的行為である。
 私たち広島の医師・歯科医師は国に上告しないよう求めるとともに、原告全員の救済と原爆症の対象をすべての被爆者に拡大するなど、認定制度のさらなる改善を求めて、原告団を支えともにたたかっていく決意である。

会員各位

後期高齢者診療料の算定、届出は見合わせるようお願いします

厚生労働省は、2015年に2兆円、2025年には5兆円を高齢者医療費から削減するとして、後期高齢者医療制度を導入しました。無慈悲にも厚生労働省の担当者はこの制度について「医療費が際限なく上がっていく痛みを後期高齢者が自らの感覚で感じ取っていただくものだ」と講演会で言い放っています.
後期高齢者の医療費削減策の一環として、今回の診療報酬改定では後期高齢者診療料が新設されましたが、医療機関や患者さんに関わる重大な問題があります。

1. 無用な混乱やトラブルが予想される 

複数の医療機関の受診を抑制しようと、主病を1つとし、管理、算定する医療機関を限定させようとしています。しかし、例えば、糖尿病を主病とする患者さんが心筋梗塞や脳梗塞を起こし他の医療機関にかかった場合、主病を1つに限定できるのでしょうか。また、同一患者に複数の診療所が算定した場合、すべての診療所が算定できない扱いとされています。請求上の問題や窓口での精算などで混乱し、医療機関相互、患者さんと医療機関のトラブルが頻発しかねません。   

2. 必要な医療の提供を阻害する

 月600点という点数にすべての疾患の医学管理、検査、画像診断、処置が包括され、急性増悪時も550点以上の検査等しか算定できません。現実の診療内容から見て極めて低額の包括点数であり、慢性疾患を有する後期高齢者の全身的管理や必要な医療の提供を行うにはあまりにも不十分な内容と言えます。

3.既存の診療報酬の低点数化に結びついた後期高齢者診療料

 今回の改定で、慢性疾患を有する一般患者に対する生活習慣病管理料が大幅に引き下げられました。低点数の後期高齢者診療料の導入を念頭に、同様の趣旨の一般点数も横並びに近い点数に引き下げたことが想定されます。
 
 以上のような問題点があることから、現在、全国各地の保険医協会や医師会において、後期高齢者診療料の届出、算定を見合わせるよう呼びかける動きが強まっています。だれも届出、算定をしなければ、今までどおりの診療、請求ができ、何の問題も生じません。
 協会では、現在、後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めて請願署名に取り組んでいます。会員諸先生におかれましては、これらの点に熟慮いただき、署名運動のご協力に加え、後期高齢者診療料の算定、届出を見合わせていただきますようお願い申し上げます。

2008年4月10日

第32回定期総会 声明

「医療構造改革」をやり直し、希望の持てる医療制度に

 小泉内閣による市場原理を背景とした「構造改革」に発し、安倍、福田と引き継がれた「医療構造改革」により、今、日本は医療崩壊の危機に瀕している。
 小泉政権によって加速された市場原理の構造改革は国民に痛みを押し付けるだけで、何の希望も与えず、一部の企業家と資産家にのみ光があたり、多くの国民は負担増に喘いでいる。
 まさに、病めるアメリカ社会の構造に近づきつつある。その市場原理先進国アメリカでは既に国民医療は崩壊し、貧困層は医療の恩恵を受けることが出来ず、中流家庭であっても家族に重病者が出れば破産してしまうほどである。日本をこのような国にしてはならない。市場原理の構造改革は今すぐ考え直すべきである。特に医療構造改革は真っ先に中止し、真の改善に着手すべきである。国民に安心を与える「いつでも、どこでも、安心して」受療できる国民皆保険制度を守り、改悪された医療制度を改善するために以下のことを要求する。

一、国民の生命を脅かす社会保障予算2,200億円の削減の中止と、国民皆保険制度を破壊する保険証の取り上げを止め、資格証明書の発行を中止せよ。

一、入院およびリハビリの日数制限を撤廃し、医療難民を引き起こす療養病床の削減と介護病床の撤廃計画を中止せよ。

一、医療事故、医療崩壊の原因となっている医師、看護師不足を改善し、医療事故調査委の設置は、その原因究明と今後の事故防止対策を旨とし、医療従事者の責任追及など医療の本質を逸脱することが無いようにせよ。

一、現代の姥捨て山となる後期高齢者医療制度の実施中止と、医学的根拠の無いメタボリック・シンドローム対策の特定健診・指導を取り止めよ。

一、レセプトのオンライン化の実施は時期尚早であり、義務化を中止すると共に、医院経営を危機的状況に至らしめている診療報酬を医科、歯科ともに大幅に引き上げよ。

一、営利を目的とした規制改革会議等主導の、混合診療解禁を許すな。

一、歯科技工士の身分と仕事を適正に評価し、歯科技工料を診療報酬の中で明確にするとともに、安全性に問題のある保険診療での歯科技工物の海外委託を禁止せよ。

以上宣言する。

2008年1月20

厚生労働大臣 舛添 要一 殿
抗議文

 2007年9月、東京のM歯科医師が、監査の直前自らの命を絶つという痛ましい事件が起きた。指導官による恫喝や長期間の指導中断による精神的重圧ゆえの自殺であった。M歯科医師は一度自殺未遂を起こし、家族が監査の延期を求めたにもかかわらず、東京社会保険事務局はなんら対応しなかった。しかも、現在に至るまで遺族への謝罪、関係者の処分はおろか、事件の解明すらなされていない。全国的に人権を無視した指導・監査が度々発生し、保険医の自殺事件も繰り返されている。協会は、指導・監査に関して、過去の経験がまったく生かされず、今回の事件から4ヵ月を経過してもなんら改善が図られていないことに強く抗議するものである。 事件発生後、国会でもこの問題が取り上げられ、貴職より「(指導では)暴言を吐くようなことは許さないシステムになっているはずだ。しかし、それが機能していないということは大変ゆゆしいことであり、きちんと指導したい」との答弁がなされている。しかし、現実には暴言を許さないシステムに不備がある。当協会には、個別指導でカルテを見るや否や指導官が大声を張り上げ恫喝し、その後の指導では完全に萎縮させられたとの体験が寄せられ、全国保険医団体連合会が2007年12月に実施した指導・監査に関する全国調査でも、同様のケースが報告されている。
 協会は、こうした指導・監査に関する事件が再び起きることがないよう、貴職に対して下記の措置を緊急に講ずることを強く求める。

<記>
一、人権を無視した指導・監査がなされた場合、速やかに全容を解明し、謝罪および指導官等関係者の処分を行うこと。

一、指導者の暴言等行き過ぎた指導・監査を防止するため、指導・監査時のテープ録音、弁護士の帯同、指導対象者の望む同僚医師の帯同等、指導・監査対象者からの要望を受諾すること。

一、個別指導が行政指導であることは自明である。したがって、行政手続法に則り運用すること。個別指導の内容や形式に従わなかったとしても不利益な扱いはしないとの判決も出されている。カルテや資料を持参しなかったという理由での指導の中断、本人が望む同僚医師を帯同したといった理由での指導未実施という取り扱いは、直ちにやめること。

一、上記の2項目について、全国の社会保険事務局に緊急に通知すること。

一、個別指導の根拠法は健康保険法73条等であり、そこには資料の調査権等は規定されていない。監査の根拠法にある手法で指導を行うことは違法である。したがって、直ちに指導大綱の見直しを行うこと。

以上

2008年1月24日

抗議 

6地裁敗訴の事実を受け入れ 被爆者救済の理念に立った認定基準の制定を求める

 12月17日、「原爆症認定の在り方に関する検討会」から出された報告は、現行の「審査の基準」が維持される内容となっており、これまで6地裁で敗訴したという「司法の判断」を無視したものです。
 報告は判決で批判された原因確率に固執し、「10%を下回る場合は急性症状を考慮に入れる」ことが加わったものの、厳格な証拠の提示が必要とされています。残留放射線については新たに審査に加味されることとなりましたが、計算によってどの程度の線量が加算されるのか、個別に割り当てられるものなのかどうかも不明です。また、内部被曝の影響に至っては、「外部被曝に比べて、特段影響が甚大であるとの証拠はない」と述べています。これらの内容は、これまでの被爆者切り捨ての行政を追認し、「審査の方針」の枠組みを維持しつつ一部に修正を加えたものでしかありません。私たちは、被爆地ヒロシマで多くの被爆者治療に携わってきた医師として、長年にわたり被爆の影響に苦しんできた方々の実態を無視するこの内容を容認することができないだけでなく、被爆者の願いに応えているかのように装いながらもそれを欺く姿勢についても強い憤りを感じています。
 検討会では、委員の中からも、これまでの司法審査と一致させる必要があるとの意見が出されたように報道されています。しかし、報告にあるように疾病をがんなどに限定することは、これまでの裁判で勝訴が確定した例も原爆症として認められないという矛盾を生みます。
 このような報告は、被爆者の実態と「二度と被爆者をつくるな」という強い願いを無視するものでしかありません。私たちはヒロシマの医師・歯科医師として、検討会の報告に抗議するとともに、被爆者切り捨てにつながる原因確率を破棄し、被爆者救済の理念に立った認定基準の制定を強く求めます。

2007年12月19日

声明

薬害C型肝炎訴訟の患者の全員救済による早期全面解決を求める

血液製剤を投与されC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害C型肝炎訴訟で、大阪高裁は12月13日、原告と被告である国、製薬会社に対して和解骨子案を示した。骨子案は公表されていないが、国が1987年4月から1988年6月、製薬会社は1985年8月から1988年6月に限って法的責任が生じるとし、被害者の一部のみを救済する案を提示したとされている。15日には国から原告側に修正案が示されたが、一部のみの救済に変更はないとされている。
 薬害C型肝炎訴訟は、昨年から今年にかけて5地裁(大阪、福岡、東京、名古屋、仙台)での判決が相次いで出され、仙台地裁を除く4地裁で国と製薬会社の責任を明確に認定した。特に、名古屋地裁判決は、血液製剤の製造承認時である1976年からの国と製薬会社の責任を認め、原告全員救済への道を開いた。
 しかし、国と製薬会社は責任を認めることなく控訴し、早期解決に背を向ける姿勢をとり続けている。さらにこの間、厚生労働省が、血液製剤による肝炎感染を知っていたにもかかわらず、418人の薬害被害者リストを放置していたことが発覚するなど、国と製薬会社のずさんな対応が明らかになっている。
 日本には、350万人ともいわれるB型、C型肝炎患者が存在しており、ウイルス性肝炎対策はまさに国民的な課題である。1年間の肝癌の死亡者数3万人超のおよそ7割はC型肝炎患者で、約2割はB型肝炎患者である。
 既に青森県で血液製剤による産婦の集団感染が明らかになって以来20年、裁判提訴からも5年が経過した。政府は、薬害エイズ事件の和解にあたって、「医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を」誓ったことを想起すべきである。
 被害者は何の落ち度も無いのに薬剤によって肝炎に罹患し、筆舌につくせない苦難を味わっている。そうした事実は、薬剤を製薬会社が作らなければ、また、国が承認しなければ起きなかったことは間違いない。また、薬剤の投与証明の出来る被害者は約1000名といわれており、その全員救済を不可能とする理由は見当たらない。全員救済という、国の一日も早い決断を強く要望する。

2007年12月17日

抗議
原爆症訴訟熊本地裁判決に対して、国が控訴したことを強く抗議する

 7月30日、熊本地裁は原爆症集団訴訟の原告21人のうち19人の訴えを認める判決をだした。集団訴訟では6度目の原告勝訴の判決であり、現行の認定制度が誤りであるとの司法判断は確定したといえる。安倍首相は5日に被爆者代表に対して、認定基準の見直しを指示すると述べ、柳沢厚生労働大臣も6日、現審査会委員以外の専門家、法律家による検討会を組織し、被爆者の意見も聞いて、1年以内に結論をだしたいと述べ、自民党、民主党の議員たちも検討を開始した。被爆者にとり光明が差したかにみえた時期に、国は、熊本地裁判決を不服として福岡高裁に控訴をした。原告266人のうち35人が亡くなっている。国はこの後も、20連敗を続けて被爆者が死に絶えるのをまつ所存なのか。
 
国は判決に従えば健康管理手当受給者をことごとく原爆症と認定することとなり、そのための予算は現在の被爆者援護予算の2倍の3,000億円にもなり、原資はないと主張している。被爆者の思いは手当の支給よりも自分の病気を原爆のためであると認めて欲しい、そして62年たっても命を蝕み続けている核兵器を地球上から廃絶して欲しいということである。
 私たち広島の医師は、被爆の実相を過小評価し、被爆者に冷酷な国の姿勢に抗議するとともに、一刻も早く、すべての控訴を取り下げ、原爆症認定制度の抜本的改革に直ちに着手することを強く求める。

2007年8月11日

談話

原爆症集団訴訟、熊本地裁判決でまたもや国が敗訴国は控訴を繰り返さず、原爆症認定制度の抜本的改革に着手せよ

 原爆症集団訴訟は開始以来はや4年、昨年5月の大阪地裁をかわきりに、広島、名古屋、仙台、東京と国の敗訴が続き、7月30日、熊本地裁でも21人の原告のうち19人について「放射線起因性が認められる」として却下処分取り消しを命じる判決が出された。原爆症認定制度に誤りがあるとする司法判断はもはや固定した。
 しかし、国は相次いで敗訴しているにもかかわらず、控訴をつづけ、審査の方針を変更しようとはしていない。それどころか「爆心地から2km以内の時は高度の、2kmから4kmまでのときは中等度の、4kmを越えるときは軽度の放射能を受けた処置してさしつかえない」とあった1958年の旧厚生省公衆衛生局長通達を廃止し、原爆症申請にかかわる医師意見書を書きづらい書式に変更し、東(あずま)訴訟の東京高裁判決で否定されたC型肝炎に関する放射性起因性をあらためて国の方針として、この1月には肝炎にかかわる2年分の申請32件をすべて却下処分とした。
 2006年度の認定審査数566件、認定数123件はこの5年間で最低となり、原爆症認定の門戸をますます狭めている。2006年度末の原爆症認定者は2,215人で前年より40人減少している。
 原爆放射線の3分の1に過ぎない初期放射線のみ評価し、3分の2を占める残留放射線を無視するとともに、疫学調査の手法である原因確率をもちいて個々の被爆者の発癌が原爆が原因であるか否かを判定する審査手法は2,000人の原爆症認定被爆者の予算枠を遵守するためのテクニックというほかない。
 参議院選挙での政府与党の大敗の要因には久間防衛大臣の「原爆投下はしかたがなかった」発言があった。
 多くの党派が参議院選の公約に原爆症認定制度の見直しをかかげており、国民の審判の下ったいまこそ、国は速やかに認定制度の見直しに着手すべきである。
 これまで3度目の核爆発によって市民が虐殺されることがなかったのは、被爆者の証言が果たした役割が大きい。国は核戦争の生き証人である被爆者の援護に尽力し、世界平和実現の先頭に立つべきである。被爆者は次々に亡くなっている。私たち広島で被爆者の医療を担当している医師は、国が控訴を繰り返して被爆者の死に絶えるのを待つ姿勢を改めて、一刻も早く、原爆症認定制度の抜本的改革に着手することを求める。

2007年7月31日

抗議声明発表同日、久間防衛相引責辞任。後任は小池百合子首相補佐官に。

抗議声明

久間防衛相の「しようがない」発言に強く抗議するとともに、安倍首相は任命責任をとり大臣罷免を即刻行うよう求める

 6月30日、講演会の場で久間防衛相は、戦争を終わらせ、ソ連の侵攻を防ぐために原爆投下は「しようがない」と発言した。新聞各社はこのことを大きく報じ、安倍首相は防衛相を厳重に注意、本人の陳謝、発言の撤回と報道は続いた。
 広島には今なお多くの被爆者が原爆の傷を身体や心に抱えもって暮らしている。被爆者をなおも踏みつけにする被爆地出身の大臣の発言には、怒りを通り越して言葉を失ってしまう。
 久間防衛相は、「米国の選択というのは、米国からみればしようがなかったんだろうと思うし、私は別に米国を恨んでいませんよとそういう意味で言ったわけだ」と主体のすり替えを試み、安倍首相も「米国の考え方を紹介したと承知」と庇っているようだが、過去の核使用を容認している事実は言い逃れのできるものではない。原爆による無差別殺戮は、当時の国際法からみても明らかに戦争犯罪であった。政府見解でも「国際法の基盤である人道主義の精神に合致しない」としている。また、第2次世界大戦後、ソ連に対して優位な立場にたとうとするとともに、ウラニウム、プルトニウムという異なった様式の原爆を相次いで無防備都市の上で爆発させてその効果を実験したアメリカの行為は、決して肯定されるものではない。
 久間防衛相の発言が政府の見解と相容れないものという批判が出ているが、国土を守るために国民が死ぬのはしかたがないという内容は、教育基本法を改悪し、国民投票法を成立させ、国を愛する国民づくりに勢力をあげる政府の方向と底辺で重なっている。防衛庁を省に昇格させ、久間氏のような人間を防衛相に任命し在日米軍の再編を推し進める責任を担わせている。憲法遵守義務を無視し改憲のための国民投票法を成立させた首相の本音が久間防衛相の発言となって出たといっても過言ではない。
 世界で唯一の被爆国である日本は、その犠牲から学び、世界の核兵器廃絶に向けて果たすべき役割がある。今回の発言は、被爆者が辛苦の中で積み上げてきた平和への努力を冒とくするものであり、「撤回」という言葉で消し去ることはできない。このような不適格者を大臣に任命したうえ、被爆者の立場で叱責することもできない首相の頭に核兵器廃絶などあろうはずがない。
 被爆地ヒロシマで医療に携わり、平和を希求する医療従事者として、今回の発言に強く抗議するとともに、安倍首相に対しても任命責任をとり大臣罷免を即刻行うよう求めるものである。

2007年7月3日

声明

憲法で保障された言論・集会・結社・表現の自由を侵害する自衛隊の情報収集活動は即刻中止し、その事実の調査・公表を求める

 6月6日、陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣に批判的な団体や個人、および取材を行った記者について調査・情報収集を行っていたとする内部文書が明らかになりました。全国289の個人や団体が「監視」の対象とされ、その内容をみると自衛隊派遣や憲法に関わる活動だけでなく、年金制度改悪反対と題する街頭宣伝や医療費負担増の凍結・見直しを求める行動なども含まれ、防衛相の「イラクに派遣された隊員の留守家族を安心させるため」との言葉で説明がつくものではありません。
 そもそも「情報保全隊」は自衛隊が持っている軍事的情報を保全する任務を与えられた部門であり、自衛隊法では個別の事件が発生した際に、機密情報保護のための捜査を認められています。しかし、今回の情報収集は、憲法で保障された言論・集会・結社・表現の自由という重要な基本的人権を侵害し、捜査権も持たない自衛隊が写真撮影という法的根拠のない越権行為を行うなど、自衛隊法からも大きく逸脱したものと言わざるを得ません。自衛隊の役割を「国土の防衛」と認識する国民の理解ともかけ離れた重大な問題です。
 久間防衛相は、国会で情報収集の事実を認めたうえで監視行動を当然視する答弁を行っています。これは認識の不足を指摘されるだけで許されるものではありません。今後、これらの情報が有事の協力を義務づけた国民保護法成立とも絡んで、国民監視の体制強化に利用される危険性を、私たち国民も強く認識するべきであり、メディアも徹底的な追求をしていく必要があると考えます。
 私たちは、命と健康を守り、平和を守る医師・歯科医師の団体として、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対する立場(「開業医宣言」1989年採択)から、自衛隊の監視・情報収集活動の即刻中止と、直ちに事実関係を調査し、公表することを求めるとともに、引き続き、国民医療の向上と保険医の経営と権利を守る活動を、広く共同の活動として行っていくものです。

2007年6月12日

談話

平和を脅かすテロ行為を厳しく糾弾する

 長崎市の伊藤一長市長が4月17日、暴力団組員に銃撃されました。市長選の最中、選挙事務所の前での凶行に日本中の人々が驚き、怒り、憤りました。そして、伊藤さんの無事を祈りましたが、翌18日未明、残念ながら帰らぬ人となりました。 
 報道によると、テロを実行した暴力団組員は、車の自損事故について長崎市の対応をめぐって揉めていたことを襲撃の理由としていますが、どのような理由であってもテロ行為は、平和と民主主義を脅かすものであり、許し難い犯罪行為です。
 伊藤さんは昨年の8月9日、長崎の平和記念式典で平和宣言を読み上げました。

「人間はいったい何をしているのか」

 この言葉で始まる平和宣言に、私たちは伊藤さんの核兵器廃絶、平和への思いの強さを感じました。被爆地長崎の市長として、核兵器廃絶の実現と被爆者の生活向上等に尽力される姿には心より敬意を表するものです。
 私たちは被爆地広島の、また人命を守る医師・歯科医師の立場から、今回のテロ行為を厳しく糾弾し、二度とこのような行為が起こらないよう、捜査当局には徹底した原因の究明を求めます。
 私たちは、伊藤さんにあらためて弔意を表明するとともに、伊藤さんの意志を受け継ぎ、核兵器廃絶に向けて全力を尽くす決意です。

2007年4月26日

声明

次々と明らかになる原発事故隠しに抗議するとともに、政府の原子力行政の根本的転換を要求する

昨年、全国的な電力会社のデータの改ざん・隠蔽問題により、経済産業省原子力・安全保安院は各電力会社に発電所の総点検を指示した。このことを契機に国の安全を脅かす原子力発電所の臨界事故や制御棒のトラブルが相次いで発覚している。
 3月15日、北陸電力志賀原発1号機において、1999年の定期点検中に臨界事故が発生し、7年9ヵ月もの間隠蔽されていたことが明らかになった。
 事故は、燃料を入れたままの点検の際、操作手順書の記載間違いや安全装置の設定不備などの原因が重なったことによって、原子炉の核分裂を止める役割を果たす制御棒3本が引き抜かれ核反応が始まり臨界状態となった。幸い制御不能状態は15分程度で解消し作業員らの被曝はなかったが、引き抜かれた制御棒の数が多ければ、放射能漏れによる大事故に繋がる恐れがあった。
 3月19日には、中部電力浜岡原発3号機、東北電力女川原発1号機で、それぞれ1991年5月、1988年7月に、臨界状態とはならなかったが制御棒の脱落事故が発覚。3月22日には1978年に東京電力福島第1原発3号機で制御棒5本が抜け、臨界状態が7時間半にわたって続く事故が発生していたことが判明した。
 重大なことは、こうした国民の命に関わる大事故が長期間にわたって、組織的に隠蔽されていたことである。国への報告は一切なされていなかった。1978年に起きた東京電力福島第1原発3号機の制御棒脱落・臨界事故において、その内容が広く公表され、原因究明がなされていれば、その後の事故が未然に防げた可能性は十分にある。
 事故隠しの背景には、事故を明らかにすることにより原発の推進計画がストップすることを避けたいという電力会社の姿勢が見え、国民の命より社の方針を優先する体質は断じて許されない。
 国内で運転中の商業用原子力発電所の原子炉55基のうち、32基は事故が発生した沸騰水型原子炉であり、そのうち改良型は4基のみである。報道によると、沸騰水型原子炉は、点検時に操作を間違った際に制御棒が抜けてしまうことを防ぐ仕組みはないという重大な欠陥をもっているとされている。したがって、国内の半数の原発において、今回と同様あるいはそれ以上の事故が何時起きてもおかしくないという状況である。
 被爆地広島で、国民の命と健康を守る医師、歯科医師としてこうした事態は許すことはできず、強く抗議するものである。第2の東海村JCO臨界事故やチェルノブイリ原発事故を防ぐためにも、今後、事故の真相究明はもちろん再発防止のため以下の施策を国に対して要求する。



1 電力会社における国への報告対象を見直す等、国の原発に対する安全監視体制を強化し、住民や自治体にその情報を公開すること

2 原子力・安全保安院を経済産業省から独立させ、しっかりした行政権限を与えること

3 プルサーマル計画の中止など原子力行政を根本的に見直すこと

以上

2007年3月29日

談話

原爆症集団訴訟、仙台地裁・東京地裁において原告が実質勝訴
国は控訴せず制度の改革を急げ


 原爆症集団訴訟は大阪、広島、名古屋につづき、3月20日に仙台地裁、22日には東京地裁において、相次いで原告実質勝訴の判決が出された。東京地裁の判決では被爆距離による初期放射線被曝計算値であるDS86にのみ依拠した現在の認定制度を批判し、以下の問題点があることを指摘している。
 各種調査報告からは遠距離被爆者、入市被爆者の中にも、相当程度の放射線被曝をしたものが存在することを念頭におく必要があること。原因確率は集団における過去の傾向を調査したものであり、個々の被爆者の放射線起因性の有無を示すものではないこと。放影研の調査は昭和25年以降のものであり、生き残った被爆者は放射線に影響を受けにくいものが選択された可能性があること。残留放射線による被曝線量が算入されていないこと。
 科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨にそぐわないとして、認定のありかたとしては、被爆状況、被爆後の行動、急性症状の有無・態様・程度を慎重に検討した上で、DS86による推定値を上回る被曝をうけた可能性がないかを判断し、生活状況、病歴、認定申請疾患の具体的な状況や経緯などから総合的に考慮した上で、当該疾病は放射線に起因するものであると判断しうる場合には、放射線起因性を肯定すべきである結論している。
 東京地裁での勝訴は残念ながら7割にとどまったが、入市被爆者や遠距離被爆者であっても、相当程度の被曝が推測され、急性症状の発現、被曝が関与したと考えられる身体症状があった原告は放射線起因性を認めている。
 原爆のエネルギーは爆風が50%、熱線が35%、初期放射線が5%、残留放射線が10%とされている。初期放射線の2倍の残留放射線の個々人への影響は確定できないが、決して無視できるものではない。2km以遠での被曝はほとんどないとする国の主張は、原爆投下後2週間以内に爆心2km以内に入った2号被爆者、救護活動にたずさわった3号被爆者に被爆者手帳を返上しろと迫るものであり、決して容認できない。
 DS86にもとづく機械的な現行の認定制度を不適切とし、被爆者個人の被爆状況、健康実態などを総合的に判断して被爆者救済を目的とする被爆者援護法の趣旨にそった判断をすべきであるとの司法の判断は5地裁の判決で一致しており、ますます揺るぎないものとなっている。
 東京の原告31人のうち、すでに11名が判決を聞くことなく亡くなられている。被爆者に残された日々は少ない。国が相次ぐ敗訴判決を真摯に受け止め、控訴を断念して、認定制度の改革を一刻もはやく着手することをわたしたち被爆地広島で医療に携わる医師、歯科医師は強く求める。

2007年3月23日
声明

福島県立大野病院産婦人科医師の無罪判決を求める

 福島県大熊町の県立大野病院で、2004年12月、帝王切開した女性が死亡した医療事故で、執刀した産婦人科医師が業務上過失致死と医師法違反容疑で逮捕、起訴された事件の公判が、今年に入って2回開かれた。公判は「癒着胎盤の部位と程度」、「出血の部位・程度とその予見性」、「死亡したこととの因果関係」、「クーパー(手術用はさみ)を用いて胎盤を剥離したことの妥当性」、「医師法21条違反の正否」などを争点としている。
 事件は、担当医が懸命な努力したにもかかわらず不幸な結果となった不可抗力的事例であり、深刻な産婦人科医不足や県立病院全体の安全体制の問題と無縁ではない。また、公判前整理手続きで確定した争点にも含まれている医師法違反についても、「異状死」の定義は極めて不明確な現状で、本事件の死亡が「異状死」かどうか医療界でも判断が分かれているところである。柳澤厚労相は有識者による検討を含めて、医師法21条の見直しを表明している。
 逮捕・起訴以来、1人医師の産科医療は閉鎖・再編され、地域での産科医療の確保が一層困難になっている。本事件を、結果のみに基づき刑事事件として起訴することが、本来追求すべき医療事故の原因究明と再発防止に寄与するどころか、逆に医療現場での萎縮診療の広がりや地域医療の弱体化につながらないか、強い危惧を抱かざるを得ない。
 本会は、産婦人科医師の逮捕、起訴に強く抗議するとともに、無罪判決を強く要望する。同時に、医療事故を取り扱う第三者機関や無過失補償制度の創設など、下記事項の実現を要望する。



1.医療事故を取り扱う公正中立な第三者機関を設置し、医療事故による死亡については、警察ではなく第三者機関に届け出る仕組みを整備すること。

2.被害者の迅速な救済のため、すべの診療科を対象とし公費の投入を含む社会保障としての無過失保障制度の導入を検討すること。

3.医師不足、看護師不足、地域偏在、勤務医などの過酷な労働条件を改善すること。

以上

2007年3月13日

第31回定期総会 声明

「国民の生存権を蔑ろにする政治に、日本の将来を託すことは出来ない!」

 今、日本はGDP世界第2位の経済大国でありながら、過去7年間年平均約33,000人もの自殺者を出し、飽食とも言えるこの日本で餓死者まで出る始末である。 自殺者の内訳を見ると最も多い約15,000人が無職者で、年齢的には60歳以上が最も多く、50歳以上が6割を占めている。その原因は生活苦が主なものであり、病気を苦にしての自殺も増加している。最近、福岡で生活保護を申請しても受けられなかった働き盛りの男性の餓死者が出た。
 その他、保険証の取り上げによる病死等々、政治の貧困による死者の数が年々増加し、社会不安は増大する一方であるにもかかわらず、安倍内閣は政策を変える気配も無い。
 安倍内閣になって数ヶ月であるが既にその政治姿勢は顕わとなり、教育基本法の改正、防衛庁の省への格上げなど、小泉内閣より右傾化し憲法改正にも意欲を燃やしている。
 また、史上空前の利潤を上げている大企業、銀行、資産家などをより優遇し、低所得者にはより重い負担を課そうとし、格差社会の是正どころかむしろ拡大に向かっている。
 大企業は大きな利潤を上げながら国民に還元することなく、日本国民にはもう用はないとばかり、更に低賃金を求めて海外に生産拠点を求め、その結果、国内は低賃金化と失職のため、ワーキングプアと格差社会という社会現象を生じている。
 この社会現象が国内の個人消費を抑え景気の低迷を招いている。大企業こそ愛国心が欠けているといわざるを得ない。  
 銀行は国民の税金で助けられ、度外れの低金利状態で国民からお金を吸い上げ、その結果大幅な利潤を上げたのであり、今こそ銀行も大企業も利潤にあった利息、更に税金と賃金を払い、国民に還元しなければならないはずである。
 安倍内閣は日本の現状を見極め、日本国憲法を変えるのではなく遵守し、国民の基本的人権(生存権)を尊重した政治に立ち返り、社会保障の充実によって国民が安心して働くことが出来、将来の希望が持てる国づくりを目指すべきである。
 国民の健康と命を守る医療団体として強く要求する。

2007年1月14日