◎北陸新幹線 福井への延伸を歓迎したい
政府・与党が、北陸新幹線金沢―福井の来年中の認可、着工に合意したことを歓迎した
い。一九六五(昭和四十)年に「北回り新幹線」の名で構想が浮上してから四十余年、これで南加賀や福井県内でも待望の槌音が響き、北陸新幹線が名実ともに「北陸の大動脈」となる日が見えてきたわけである。これからも北陸三県の緊密なスクラムを維持し、早期開業を目指すとともに、北陸と首都圏、さらに三県の県都同士が太いパイプで結ばれることによる効果を最大限に引き出すための手を着実に打っていきたい。
北陸新幹線が福井まで開業すれば、金沢―福井は約二十分、富山―福井は約三十五分で
結ばれると試算されている。当然ながら経済面での行き来は今以上に活発になり、来年は会場を富山、福井にも拡大して開催される「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭」のような文化交流もしやすくなるだろう。もともと一体感の強い三県にとって、開業のインパクトは大きいはずだ。
石川、富山県では、金沢開業に備えるための「二〇一四年」対策が緒に就いたばかりで
あり、今後は福井延伸も織り込みながら、地域の魅力に磨きをかける取り組みを加速させてほしい。たとえば広域観光など、テーマによっては福井県を交えて話し合うことも必要になってくるだろう。
石川県の場合、延伸決定によって重い課題も背負い込むことになる。JR西日本から経
営分離される並行在来線が延びるのに加え、建設費負担も増大する。円滑な工事推進のカギを握る用地買収体制のさらなる強化も不可欠であろう。沿線市町と協力して対応を急いでもらいたい。
今回の合意では、金沢―福井や将来の延伸の担保として整備される敦賀駅の完成目標年
度は明記されなかった。与党が当初の要望より着工区間を絞り込んだにもかかわらず、財源について結論を出せなかったからである。工期がはっきりしなければ、沿線関係者も開業対策を進めにくい。政府・与党には、可能な限り早く財源論議を詰めて開業時期をより明確にすることを求めておきたい。
◎学力テスト実施要領 「公表可能」も積極PRを
全国学力テストの来年の日程が決まり、実施要領については都道府県による市町村別、
学校別の結果公表や、市町村による学校別の結果公表を禁じた現行の路線を維持する方針が固まった。文部科学省はこの点について「序列化や過度な競争を招く」と従来通りの見解を示したが、実施要領は市町村教委や学校が自らの結果を公表することまでは禁止していない。
にもかかわらず、公表する自治体がさほど増えず、石川、富山県でも金沢、白山、富山
、南砺の四市にとどまっているのは、文科省が原則非開示をことさら強調していることが影響しているのではないか。このままでは市町村教委は萎縮するばかりで、公表を通じて学力向上につなげるという意欲も広がっていかないだろう。文科省はテスト結果の開示は可能であることを積極的にアピールし、独自公表を促すような工夫も考えてほしい。
テスト結果の公表をめぐっては、大阪府の橋下徹知事や秋田県教委が市町村別成績を部
分開示したほか、鳥取県議会では成績開示に向けた情報公開条例改正案が成立する見通しとなった。都道府県が市町村の意向を無視して成績を公表することに対して賛否が分かれる中、望ましいのはやはり市町村が自主的に結果を公表することであろう。
学校別はともかく、市町村が自らのデータを示すことで序列がついたとしても、それほ
ど問題があるとは思えない。全国平均、県平均より成績が下回っても、学力向上策と併せて保護者や地域に示せば、その自治体の学校に奮起を促し、家庭も学習のあり方を見直すきっかけになるだろう。
全国学力テストの在り方を検討している文科省の専門家会議は、来年の実施要領に関し
て、都道府県教委の申し出があれば成績データを提供しないという選択肢を新たに示した。成績開示の動きに配慮した措置だろうが、これは学力テストの意義を自ら否定するに等しい。テスト結果を受けて現場で始まった授業改善の取り組みにも水を差すだけである。