「ねずみ講」まがいの手口による米ヘッジファンドの巨額詐欺事件が摘発された。金融危機が深刻化する折も折である 過日、街で見た光景を思い浮かべる。外国人らしい人物が飲み物を買おうとして手にした硬貨を、自販機に入れ損ねた。硬貨は台の下に向かってコロコロ転がっていく。早く拾わないと、とやきもきしていると、その人は素早く足を上げ、転がる硬貨を靴で勢いよく踏んづけた 何ともったいないことを、と目を見張ったが、その人にすれば、硬貨がもったいないからこそ靴で踏んで紛失を防いだ、と言うに違いない。体をかがめ、手で拾うのが金に対する礼儀、と私たちはしつけられている。他方、靴で踏んでも金を手にするのが流儀、という人もいる 踏まれたところで、金の価値が減りはしない。が、それを非礼と思わぬ人とは、近づきにはなりたくない。靴は大事なものを踏んだり、他国の元首に投げつける物ではない 巨額詐欺事件は世界の金融界を揺るがす、と報じられている。私たちが勤労の代価として得たものも、泥靴は踏もうとしているのだろうか。無軌道極まりない。
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