福岡県で開催された日本、中国、韓国の首脳会談で、三カ国の協力関係促進をうたった共同声明が宣言された。緊急時の外貨融通など金融危機への対応や、北朝鮮の非核化実現に向けた連携強化も確認された。
首脳会談には麻生太郎首相と中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領が出席した。
日中韓の首脳会談は一九九九年に始まったが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議の場を利用して開かれてきた。独立して首脳会談を開いたのは初めてで、これを機に定期化して持ち回りで年に一回開催することが決まった。
三カ国はそれぞれアジアの有力国であり、隣国同士でもあるが、独自に三首脳が意見交換する機会はなかった。歴史認識や領土問題などで常にぎくしゃくする「危うさ」を内包する不安定な関係の中で、独立した定期会談の開催決定は意義がある。大きな前進として評価できるのではないか。
初となった日中韓首脳会談の独立開催について、共同声明では「三国間協力に新時代を切り開くものであり、地域の平和と発展につながる」と宣言した。今後も領土問題などで摩擦が生じるかもしれないが、一方的に非難し合うのではなく、トップ同士が対話を通じて冷静に対処する場として定着させたい。
金融危機に関しては、三カ国の協力強化が「世界経済と金融市場の深刻な課題に立ち向かうには不可欠」との認識で一致した。その上で緊急時に日中韓で外貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定の資金枠拡大などで合意した。
韓国経済は現在、通貨ウォンの下落で苦しんでいる。スワップの拡充は既定路線だったとはいえ、早急に対応して実績を残すことが大切だ。
北朝鮮の核問題では、先の六カ国協議首席代表会合が成果なく閉幕した。これを踏まえて非核化の実現に向けた連携強化の必要性を再認識し、麻生首相は拉致問題を含めた日朝関係進展への協力を要請した。
このほか大気・海洋汚染問題やアフリカの開発支援、青少年交流など約三十分野にわたる行動計画を採択した。
麻生首相にとって地元の福岡県で開いた首脳会談は、外交でのリーダーシップを演出し、支持率が急落する政権の浮揚を狙ったとされる。今後、重要なのは定期対話の成果を日中韓で着実に挙げることである。特に初の単独会談を主導した日本の責務は大きい。
救済法案の事実上の廃案を受けて米政府が経営破たんの瀬戸際にあるゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラー救済の準備を進めるなど、ビッグスリー(自動車大手三社)をめぐる情勢は予断を許さない。
米議会での救済法案頓挫の衝撃は大きかった。米景気の悪化を懸念して各国の株価が急落、円は急騰した。ショックを和らげるため米政府は金融危機対策のための七千億ドル(約六十四兆円)の資金枠活用を検討すると表明した。だが、まだ細部は十分煮詰まっていない。
議会共和党にはもともと救済に慎重論が多く、世論もビッグスリーに批判的だった。共和党がいう通り各社の労務コストは米進出の日本メーカーに比べて高く、環境車への対応は遅れ、生産は大型車に偏っていた。弱点を抱えたままでは窮地を救ってもすぐに危機が再燃するとみる専門家は少なくない。
「一度破たんさせてから再生を目指すべき」との意見が根強く、再建型の法的整理である連邦破産法一一条の適用が必要とする声は当初からあった。
連邦破産法一一条はユナイテッド航空などの再生にも使われた。しかし、ビッグスリーに融資している銀行や社債などを保有する投資家、部品メーカーなどに大きな損失が生じる恐れがある。米国だけでなく世界経済が大きく混乱し、景気や雇用が一段と悪化する可能性は否定できない。世界経済は今、GMなどの破たんを受け止められるほど強くはなかろう。
日本でも十五日、日銀企業短期経済観測調査(短観)で景気の急減速が明らかになった。救済か破たん処理か、いずれにしろGMなどをめぐって事態が具体的に動きだすにはまだ曲折があろう。世界経済への衝撃を極力抑える対処が望まれる。
(2008年12月16日掲載)