【第43回】 2008年12月15日
元米財務次官補が警鐘!
「中国の成長率は6%前後に低下へ、世界は同時不況に突入した」
振り返れば、10年前にはG20はなかったし、FSFもなかった。進化はしているわけで、無責任にレボリューションを語る必要はない。そもそもブレトン・ウッズというレボリューションが起きたのは、第二次世界大戦が起きたためであることを忘れてはならない。
―ドルの基軸体制は見直す必要はないのか。
米国の金融システムが壊れたから、ドルは信用できない、だからドルは凋落する――私は、そんな見方をまったく信じていない。そもそもわれわれが今、目のあたりにしていることと矛盾しているし、つじつまが合わない。
この金融危機下、ドルの役割は誰もが想像していたものよりもはるかに大きかった。FRBはすでに5000億ドル以上ものドル資金をドルスワップ協定を通じて他国の中央銀行に供給している。このことを1年前に予測でもしていたら、「お前は気が狂ったのか」と言われていただろう。
すなわち今回の危機を通じてわれわれが学んだことは、ドルが依然として世界経済の通貨であるということだ。世界経済が過剰にレバレッジされていたときにも、今のようにデレバレッジが進んでいるときにも、その取引はドルで行われている。むろん円でも行われているが、円の場合は、キャリートレードの巻き戻しによるところが大きい。流動性確保のために長期にわたり円へのスクランブルが続くとは思えない。ユーロへのスクランブルはそもそも起きていない。
むろん人びとは将来レバレッジをかける際に、より注意深くなるだろう。しかし大事なポイントは、レバレッジが半分になったとしても、その大半はドルを通じて、行われるということだ。
世界のビジネスマンや政策担当者が今からエスペラント語(19世紀末に考案された国際共通言語)を覚えて話し出すとはとても思えない。国際的なコミュニケーションの場において英語の利便性を捨て去ることができないのと同様に、ドルもまた世界経済の燃料であり続けるはずだ。
(ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)
エドウィン・トゥルーマン
(Edwin Truman)
米連邦準備制度理事会(FRB)国際金融部門長などを経て、1998年~2001年、米財務次官補(国際金融担当)。2001年より米国の有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー。
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『週刊ダイヤモンド』編集部による取材レポート。本誌特集と連動した様々なテーマで、経済・世相の「いま」を掘り下げていきます。