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【第43回】 2008年12月15日

元米財務次官補が警鐘!
「中国の成長率は6%前後に低下へ、世界は同時不況に突入した」

―世界経済が回復局面に入るのはいつ頃になりそうか。

 まず米国経済に関して言えば、2009年のどこかで回復基調に入るだろう。ただ、回復の勢いは当面極めて弱々しいものになるだろう。端的に言って、その理由は、金融システムが壊れてしまったからだ。

 米国をはじめとする先進国の需要が回復しなければ、新興国経済も回復しないことは、世界経済の現実である。米国経済が崩れても、中国やインド、ロシア、中東などは高成長を続けるとするデカップリング論をまだかすかにでも信じている人がいるならば――少しでも新興国のほうがましだろうと考えているならば――今すぐ忘れたほうがいい。これから厳しくなるのはむしろ新興国だ。回復はまず先進国経済から始まって、その後新興国経済という流れになるだろう。世界経済全体で見れば、今後長期にわたり4%台に戻ることは期待できない。3%台がいいところだ。

―地域別に見て、どこが一番厳しい落ち込みとなりそうか。

 (マクロ・インバランスが目立つ)東欧諸国の前途は、厳しい。ただ、アジアも東欧に比べればましだが、総じて見れば、南米よりは深刻だ。景気が過熱していた分、谷は深くなる可能性がある。潤沢な外貨準備にしても、資本流出に火がつけば、あっという間に目減りする。それは韓国の例を見ても明白だ。

―韓国で1990年代後半と同じ経済危機が起きる可能性は?

 歴史をそっくりそのまま繰り返すとは思えないが、大幅な景気減速に見舞われることは間違いない。そもそも外貨準備は、成長のツールではなく、あくまでインシュランス(保険)にすぎない。

 確かに、韓国を含むアジア諸国は、通貨危機を経て、柔軟な為替レート体制、構造改革などの必要性を理解した。それ自体は進歩である。しかし、実践しても、世界経済の急減速から無傷でいられるわけではない。それがグローバリゼーションの本質であり、G7やG8ではなく、G20で事態打開の議論が進められなければならない理由である。

―G20では、流動性危機に陥った新興国救済や国際金融システム再構築を担う組織としてIMFの役割が改めてクローズアップされた。IMF改革はどうあるべきか。

 まずIMFの財務基盤強化が必須だ。最後にクォータ(加盟各国の投票権などの基礎となる出資割当額)を大幅に増やしたのは1999年だが、当時と比べて世界経済は二倍の規模に拡大した。少なくとも50%、理想論でいえば、100%の大幅増資が必要だ。

 むろん、その際には、中国などの有力新興国が出資シェアを増やすことになるが、それは彼らの発言権の増大につながる。(IMFでの発言権低下に抵抗してきた)米国の政策転換が必要だ。

関連キーワード:アメリカ グローバル経済 金融危機

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