年後の消費税上げを諮問会議が決定、政府が責任政権追求し強行突破
[東京 16日 ロイター] 政府の経済財政諮問会議は16日夕の会合で、消費税を含む税制抜本改革を2011年度から実施することなどを盛り込んだ「中期プログラム」原案を全員一致で了承した。
麻生太郎首相は、原案に沿って与党と協議し、来年度予算編成時までに政府として決定したいとの考えを宣言。持続可能な社会保障の構築に向けた消費税引き上げがより具体的に議論されることになる。
ただ、与党は2009年度税制改正大綱で消費税を含む税制抜本改革の実施時期の明記を断念しており、政府案決定までには紆余曲折が予想される。与謝野馨経済財政担当相は会議終了後の会見で、原案は「与党大綱の趣旨に反するものは何ひとつない」と述べ原案通りの政府案決定に自信を示しているが、選挙を意識して猛反発した公明党の攻勢は必至。政局の火種となりかねない事態に政府があえて踏み込み強行突破した背景には、実施時期をあいまいにしたままでは消費税を含む税制抜本改革がズルズルと先送りされ、社会保障の持続可能性も財政健全化も揺らいでしまうとの危機感だった。
麻生首相は「当面は景気回復を最優先に大胆・迅速に対応する。しかし、責任政党としてカネを使うことばかりやっていてはならない。経済対策の具体化に呼応して、中期の財政責任や社会保障の安心強化の具体化のためより一層踏み込む必要がある」と述べ、12日には断念した税制抜本改革の実施時期を明確にすることに踏み込んだ。
原案では、現行でもほころびがみられる「中福祉」の社会保障制度を再構築するために、「消費税率引き上げは税制抜本改革の一環として実現する」考えを明記。消費税を社会保障目的税化と位置づけたうで、消費税を含む抜本改革について「2011年度(3年後)より実施し、2015年度までに段階的に行って持続可能な財政構造を確立する」道筋を明確にした。さらに、経済好転後の税制抜本改革の速やかな施行に向け、「必要な法制上の措置を2010年にあらかじめ講じておく」とし、税制抜本改革の道筋を立法化し、中期プログラムを確実に実行する。
一方で、「潜在成長率の発揮が見込まれるかなどを判断基準とし、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする」とした経済に対する弾力条項も盛り込んだ。
また原案では、経済状況が好転した以降には「景気の後退により悪化した財政を建て直すべく厳格な財政規律を確保していく」必要性を示し、歳出を社会保障部門と非社会保障部門別に区分し、非社会保障部門では「全体として規模を拡大しないことを基本」とする基準を設けて歳出の一定の歯止めを狙う。
世界的な金融危機を契機に、政府は累次の財政出動を余儀なくされ、財政健全化路線は一時棚上げの状態となっている。これに対して原案は税制抜本改革の道筋を明確にし包括プログラム法のような形で実効性を担保することで、バラマキ批判を回避する狙いもあったもよう。ただ、明日以降始まる与党との協議では、実施時期の明文化をめぐって激しい論戦が予想される。
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子記者 伊藤 純夫記者)
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