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2008年12月16日

◎北陸短観 「夜明け前が一番暗い」のか

 「夜明け前が一番暗い」と言う。日銀金沢支店が発表した十二月の北陸短観を見て、そ んな言葉を思い出した。北陸の全産業の業況判断指数(DI)はマイナス三三とITバブル崩壊後の二〇〇二年九月以来の低水準で、先行きの見通しは実にマイナス四八にまで落ち込んだ。日銀短観の大企業製造業の指数は過去二番目の下落率である。

 製造業を中心とした雇用調整は北陸にも波及しており、まだまだ傷口が広がる可能性は ある。経営者心理はまさに「どん底」と言って良いのかもしれないが、こうも景気の悪い話ばかりが続くと、消費者が財布のひもをさらに引き締め、個人消費の一段の悪化が避けられなくなる。

 景気が悪いからといって、嘆いてばかりはいられない。円高や原油安の恩恵を受ける企 業もある。電力やガス、石油製品などは、円高と原油安のダブルメリットを享受する業種の代表例だろう。北陸の場合、昨年までは輸出関連の製造業が景気をけん引してきたのだから、これからは主役交代で、内需関連企業が元気を出して景気を支えていくしかない。

 内需主導型は、実感の伴わない景気回復になりがちな輸出主導型と違って、「実感の伴 う」景気回復につながる。そんな共通認識が浸透したとき、一筋の光が見えてくるのではないか。

 業況判断指数は、景気が「良い」と答えた企業の比率から、「悪い」と答えた企業の比 率を引いた割合で表す。北陸短観の全産業を100とした指数で、十二月の数値を見ると、「良い」が6に対し、「悪い」が39、「さほど良くない」は55である。先行きの調査では、「良い」が4、「悪い」が52で、「さほど良くない」は44である。

 先行きのマイナス四八は異常な数値だ。指数の長期グラフでマイナス五〇前後にまで低 迷したのは、第一次オイルショックの一九七五年、旧長銀の破たんなどの経済危機が表面化した九八年、ITバブル崩壊後の二〇〇二年ぐらいしかない。冷静に考えれば、景気の底が見えてきたともいえる。過度の楽観は危険だが、過度の悲観もまた弊害が多い。

◎温暖化防止COP14 景気悪化で熱気を欠いた

 ポーランドのポズナニでの気候変動枠組み条約第十四回締約国会議(COP14)は、 京都議定書に定めのない二〇一三年以降の国際的な地球温暖化対策の枠組みを討議したが、一年後のCOP15での合意に向けて加速をつけるという狙いが空振りに終わった。

 COP13(昨年末、インドネシアのバリ島)では、ポスト京都議定書の枠組みづくり について来年末のCOP15(デンマークのコペンハーゲン)で合意すると決めた。それに向かって弾みをつける予定だったのがポズナニでの会議だったのだが、前からの各国の思惑違いに、世界的な金融危機による景気悪化が加わり、盛り上がらなかったのである。

 ポスト京都議定書の削減が始まる一三年が近づくに連れて先進国、新興国(中国、イン ド、ロシアなど)、途上国の取り組みについての考えの相違が鮮明になったのが、会議を通して浮き彫りになったようだ。

 先進国も一つではない。日本と欧州連合(EU)は考えが違う。米国はオバマ次期政権 からいったん離脱した条約に戻るとしているが、取り組みはこれからである。

 何よりも、景気後退が温暖化対策に大きな影を落としているようだ。新興国や途上国は 主要国側の援助資金が目減りしていると指摘したが、主要国側にはそれにこたえる余力が今はないのである。こうしたことから、国際社会は温暖化対策で新たな困難を抱えたということができそうだ。

 究極の温暖化対策は太陽光利用だといわれている。この分野では日本の民間企業が熱心 で、技術的に世界をリードしている。が、EUはアフリカ大陸で太陽光利用の発電施設を建設し、ヨーロッパへ送電する構想を描いている。これに負けられない。

 外交官出身で議長として京都議定書を発足させた元環境庁長官の大木浩氏は日本の中長 期的な「政策不在」を痛感させられたと著作で訴えている。政府は腰を据えて科学技術による発電を進展させることに軸足を転換するときではないか。


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